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プロローグ

初めて目を覚めました時、その場にある静かなその空間と何処と無く冬のような透き通った空気を何故か懐かしいと感じた。
簡易ベッドから身体を起こし辺りを見回してみて、自分が横たわっているような簡易ベッドが整然と並べられた臨時病院のような異様な空間の中央に1人の女がベッドの上に座っているのが視界の端を掠め、自分はそこで視線を固定する。
白い無地のくびれもないストンとしたワンピースを着た彼女は櫛を通した事もなさそうな程に乱れたままの黒い長髪の間からこちらを見つめて自分を憎んでいるのではないかと思うほど冷たい口調で、それと同時に待ち焦がれていた恋人を見るような愛おしげな微笑みを向けてきた。
「おはよう、ずっと待っていたの。貴方の事を。」

あの日のことは今も忘れない。
彼女は、あの頃の自分の世界の全てになる存在だったのだから。

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