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【花束と薔薇 運命と呼ぶに相応しい出会い 💐×🥀(はるおる)】

顔面偏差値は誰もが息を飲む美形。
成績も優秀。常に学年トップクラス。
人間関係も問題無し。友人はとても多い。
ただひたすらに空っぽな優等生。

無気力な中学時代を過ごした俺は、たまたま入った高校の入学式で…
あの、この世で何よりも美しい光、唯一無二の存在と再会した。
そう、俺はまた、出会ったのだ。熾天使と。

クラスも同じだったので、名前は容易く、人ずてに聞く事が出来た。
その際に、他の人間が彼の名前を口にする事に少なからず苛立ちを覚えたが、彼の魅力は誰もが認めるモノ。仕方の無い事だ。
長く特徴的な髪や、宝石よりも力を持った輝きを放つ瞳が異色で、目立つからこそ、クラスでは結構な人数から騒がれている。
勿論、目立つという点では、この俺も例外ではないが…
そんな事はどうだっていい。

彼岸谷 折葉。とても可愛い名前だ。
彼の全てが俺を刺激してくる。
幼少期での出来事を思い出し、思わず笑みが零れた。
入学式が終わり、誰も居なくなった教室で、彼の名前を小さく声に出してみた。
春陽:…彼岸谷 折葉。

その名前を口ずさむだけで、涙が込み上げてきた事に、素直に驚いた。
自分は感受性が豊かではない方で、無感情に近いという自己解釈があったからだ。
心が満たされていくような高揚感で胸が高鳴り、胸の辺りで拳をぎゅっと握る。

中学校を卒業してから何となく、幼少期に出会った金髪の少年の瞳を思い出して、青色のメッシュを入れた。

そして高校生となり、再会したのだ。
変わらず美しい彼岸谷 折葉。
偶然ではない。必然。
明らかに俺に好機の兆しが向いている。
俺にとって、このメッシュは特別な意味を持つ事となった。

運命としか敬称し難い俺と、彼岸谷 折葉の関係。
俺の左手の小指からは、彼岸谷 折葉の、白く細い左手の小指に向かって、まっすぐに真っ赤な糸が伸びている。
俺にはソレが見える。
俺達以外の誰にも触れる事が出来ない真っ赤な糸が。

――彼岸谷 折葉は俺のモノだ。
赤い糸で絡め取って、全てを占領したい。

しかし、ソレは、適切かつ確実なタイミングで、だ。
それまでは、自由にさせてやりたいというのも本音だが、あえて泳がせて観察してみたいという気持ちもある。
それまでは、彼岸谷 折葉を俺が勝手に想うのも悪くは無いだろう。
意外な一面が見れるかも知れないからな。

月日は流れ、高校生活に慣れてきた頃。
運のいい事に、共に居て楽しいと感じられる友人は少ないが、存在はしていた。
ただ、何事にも本気になれない俺は、適当な理由を付けて中学時代と同じように…
大抵は適当な人間と関わりを持っていた。
しかし、1つだけ大きく違うのは、常に視界の中に、美しい存在を捉えて離さなかったから。

友人達と廊下を歩いていると、前方から1人で彼岸谷 折葉が歩いてきた。
あまり友人が多い方には見えない彼だが、不思議と周りに人間が居ないのは珍しく思えた。
そして、これまで彼を観察した感想なのだが、1人で居る時の彼は、いつもと雰囲気が違った気がする。
1人が好きなのだろうか。

しかし、教室に居る時は、大抵固定の人間が傍に居る。
そんな事をぼんやり考えていたら、友人が、気策に彼に挨拶をした。
俺も友人のついでを装い、挨拶をする。

春陽:おはよう。彼岸谷。

その時、俺と彼岸谷 折葉は、バチリと目が合った。
彼は俺に対して睨み付けるような上目遣いで、ボソリと挨拶を返した。

折葉:おはよう。綾瀬くん。

むき出しの敵対心。
嗜虐心を駆られた俺は、ますます彼を観察したくなった。

恐らく、幼少期の事を覚えていないのだろう。
いいだろう。何度でもわからせてやる。

彼岸谷 折葉。絶対に逃がさない。
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