~第1幕 ハート型の確信犯~
高校のバレンタインは、とても騒がしい。
昼休みのチャイムが鳴ったと同時に、女子生徒達の目が爛々と輝く。
連動するように男子生徒達は固唾を飲み、自身の出番が来る事を信じて祈る。しかし、くれぐれも悟られぬよう。
そう、恋のチョコレートを巡る競争が始まったのだ。
女性教師は若い者達の熱に負けて、ため息をついた後、早々に教室の外に出る。
女性教師:自由にやってなさい。今が楽しい時期なんだから。
男子生徒A:ワーッ!おおらかな先生愛してるぜ~!
ヒューヒューと男子生徒達から口笛が上がる。
そんな中、女子生徒達が集まって、叶詩の机の周りにやってくる。
叶詩:…ん~?どうしたの?
女子生徒A:叶詩くんにはいつもお世話になってるから、友チョコ!
私達で1つずつ細かいの用意してたんだ。ほら、あんまり食べると身体に良くないしね…
叶詩:開けてもいい?わあ、クオリティ高いね!素敵だよ。ありがとう!
全員、ホワイトデーにお返しさせてね?
同時刻、女子生徒達が憂晃の机の周りにバラバラにやってくる。
女子生徒B:憂晃くん…!このチョコ。本命だから。その、受け取ってくれるかな。良ければ。
憂晃:……
女子生徒B:う、憂晃くん…?
憂晃:本命チョコだと言われてしまうと、受け取る事は出来ないかな、ごめんね。
ボクには叶詩くんが居るの、知ってるでしょう?
女子生徒B:うん。だけど…
憂晃:駄目だよ。偽った気持ちで君と接するのはボクが嫌だ。
だから、その大切な気持ちの籠ったチョコは、自分で食べて欲しいな。
誰にも渡さないで、嘘を吐かないで、それらは毒になるから。
女子生徒B:憂晃くん…!
憂晃:ボクはバレンタインにチョコは受け取れないけれど、それでもいいなら、友達として接してもいい?
女子生徒B:(何でこんなに残酷で優しいの…情緒が崩れちゃう…!)
女子生徒B:わかったわ。こんなところ、叶詩くんに見られたら怒られちゃうしね。
憂晃:…そうだね。
憂晃は、叶詩の机の方を見て、やんわりと微笑む。
女子生徒B:(叶詩くんの名前が出た時のこの表情…敵わないや…)
そして、列になっていた女子生徒達を的確に適切に捌いた憂晃は、疲れたのか机に突っ伏している。
そこへ、叶詩がやってくる。そして、憂晃の金の髪を指で触る。
叶詩:もう、憂晃くんは断り方が優し過ぎ!もっと厳しくてもいいのに。
僕達の事を知ってて本命アピールは抜け駆けなんだから、ビシっとしてくれてもいいんだよ?
憂晃:だって、他人を傷付けるのは向いていないから、ごめんね。
叶詩:(思い切り「他人」って言っちゃってるけど…)
憂晃:もう昼休みが終わってしまうね。例の作戦は放課後になりそうかな。ごめん…
叶詩:昼休みが潰れるの、憂晃くんの人気から見て明白でしょ?毎年なんだから慣れてるよ!
憂晃:そうかな…
叶詩:本当に無自覚なんだね~。ま、いいけど!じゃあ放課後ね?
今はいいけど、授業始まったら寝ちゃ駄目だよ。
憂晃:うん…眠くて…
叶詩:可愛いけど、そんな無防備な姿、他のヤツには見せたくないな。
憂晃:結構、いつも無防備だと思うけれど…
叶詩:僕が傍に居ればいいの!
叶詩:(憂晃くんのガチ恋は、男共にも居るからね。)
叶詩は、こちらを見ている男子生徒達の方をちらりと見返す。
憂晃:ほら、そろそろ昼休みが終わるよ。
叶詩:わかってるよ。よしよし。
ぐったりした憂晃の頭を撫でた叶詩は、自分の席に戻る。
授業が始まっても、チラチラと男女の視線が交差する。
科目別に来るどの教師も、居心地が悪そうだ。
誰もが願う放課後のチャイムが鳴ると、男子生徒達の一部はわざと咳払いしたりしている。
女子生徒達は、顔を赤らめてそわそわと周りを気にしている様子だ。
叶詩:あ~あ。甘ったるいや。
鞄を両手であざとく持った叶詩が、憂晃の机の近くにやって来る。
憂晃:確かに。雰囲気が、いつもと違うよね。
叶詩:さてさて、僕達のやるべき事をする時だよ。憂晃くん。
憂晃:そうだね。それで、誰なのかな。差出人を好きなクラスメイトって…
叶詩:本当に憂晃くんって、僕以外に無関心だよね~。
まあ、僕もそうだけど。人間関係を円滑にする為には多少の立ち回りも必要だよ?
憂晃は、少し嬉しそうに笑い、叶詩の耳元で囁く。
憂晃:だって、叶詩くんが居るから。
すっと離れた憂晃は、少しびっくりした表情をした叶詩を見て、ニコニコしている。
叶詩:ズル…いよ。そんな事実をさ、こんな風に言うだなんて。キスしたくなっちゃった。
憂晃くんは僕が居ないと駄目だもんね?
憂晃:だって、甘い雰囲気の中で冷めていると、人間関係を円滑に進められないのでしょう?
叶詩:今すぐめちゃくちゃにしたくなる気持ちを抑えている僕の気持ちも、少しは考えた方がいいよ。憂晃くん。
憂晃:さあ、作戦開始だよ。
昼休みのチャイムが鳴ったと同時に、女子生徒達の目が爛々と輝く。
連動するように男子生徒達は固唾を飲み、自身の出番が来る事を信じて祈る。しかし、くれぐれも悟られぬよう。
そう、恋のチョコレートを巡る競争が始まったのだ。
女性教師は若い者達の熱に負けて、ため息をついた後、早々に教室の外に出る。
女性教師:自由にやってなさい。今が楽しい時期なんだから。
男子生徒A:ワーッ!おおらかな先生愛してるぜ~!
ヒューヒューと男子生徒達から口笛が上がる。
そんな中、女子生徒達が集まって、叶詩の机の周りにやってくる。
叶詩:…ん~?どうしたの?
女子生徒A:叶詩くんにはいつもお世話になってるから、友チョコ!
私達で1つずつ細かいの用意してたんだ。ほら、あんまり食べると身体に良くないしね…
叶詩:開けてもいい?わあ、クオリティ高いね!素敵だよ。ありがとう!
全員、ホワイトデーにお返しさせてね?
同時刻、女子生徒達が憂晃の机の周りにバラバラにやってくる。
女子生徒B:憂晃くん…!このチョコ。本命だから。その、受け取ってくれるかな。良ければ。
憂晃:……
女子生徒B:う、憂晃くん…?
憂晃:本命チョコだと言われてしまうと、受け取る事は出来ないかな、ごめんね。
ボクには叶詩くんが居るの、知ってるでしょう?
女子生徒B:うん。だけど…
憂晃:駄目だよ。偽った気持ちで君と接するのはボクが嫌だ。
だから、その大切な気持ちの籠ったチョコは、自分で食べて欲しいな。
誰にも渡さないで、嘘を吐かないで、それらは毒になるから。
女子生徒B:憂晃くん…!
憂晃:ボクはバレンタインにチョコは受け取れないけれど、それでもいいなら、友達として接してもいい?
女子生徒B:(何でこんなに残酷で優しいの…情緒が崩れちゃう…!)
女子生徒B:わかったわ。こんなところ、叶詩くんに見られたら怒られちゃうしね。
憂晃:…そうだね。
憂晃は、叶詩の机の方を見て、やんわりと微笑む。
女子生徒B:(叶詩くんの名前が出た時のこの表情…敵わないや…)
そして、列になっていた女子生徒達を的確に適切に捌いた憂晃は、疲れたのか机に突っ伏している。
そこへ、叶詩がやってくる。そして、憂晃の金の髪を指で触る。
叶詩:もう、憂晃くんは断り方が優し過ぎ!もっと厳しくてもいいのに。
僕達の事を知ってて本命アピールは抜け駆けなんだから、ビシっとしてくれてもいいんだよ?
憂晃:だって、他人を傷付けるのは向いていないから、ごめんね。
叶詩:(思い切り「他人」って言っちゃってるけど…)
憂晃:もう昼休みが終わってしまうね。例の作戦は放課後になりそうかな。ごめん…
叶詩:昼休みが潰れるの、憂晃くんの人気から見て明白でしょ?毎年なんだから慣れてるよ!
憂晃:そうかな…
叶詩:本当に無自覚なんだね~。ま、いいけど!じゃあ放課後ね?
今はいいけど、授業始まったら寝ちゃ駄目だよ。
憂晃:うん…眠くて…
叶詩:可愛いけど、そんな無防備な姿、他のヤツには見せたくないな。
憂晃:結構、いつも無防備だと思うけれど…
叶詩:僕が傍に居ればいいの!
叶詩:(憂晃くんのガチ恋は、男共にも居るからね。)
叶詩は、こちらを見ている男子生徒達の方をちらりと見返す。
憂晃:ほら、そろそろ昼休みが終わるよ。
叶詩:わかってるよ。よしよし。
ぐったりした憂晃の頭を撫でた叶詩は、自分の席に戻る。
授業が始まっても、チラチラと男女の視線が交差する。
科目別に来るどの教師も、居心地が悪そうだ。
誰もが願う放課後のチャイムが鳴ると、男子生徒達の一部はわざと咳払いしたりしている。
女子生徒達は、顔を赤らめてそわそわと周りを気にしている様子だ。
叶詩:あ~あ。甘ったるいや。
鞄を両手であざとく持った叶詩が、憂晃の机の近くにやって来る。
憂晃:確かに。雰囲気が、いつもと違うよね。
叶詩:さてさて、僕達のやるべき事をする時だよ。憂晃くん。
憂晃:そうだね。それで、誰なのかな。差出人を好きなクラスメイトって…
叶詩:本当に憂晃くんって、僕以外に無関心だよね~。
まあ、僕もそうだけど。人間関係を円滑にする為には多少の立ち回りも必要だよ?
憂晃は、少し嬉しそうに笑い、叶詩の耳元で囁く。
憂晃:だって、叶詩くんが居るから。
すっと離れた憂晃は、少しびっくりした表情をした叶詩を見て、ニコニコしている。
叶詩:ズル…いよ。そんな事実をさ、こんな風に言うだなんて。キスしたくなっちゃった。
憂晃くんは僕が居ないと駄目だもんね?
憂晃:だって、甘い雰囲気の中で冷めていると、人間関係を円滑に進められないのでしょう?
叶詩:今すぐめちゃくちゃにしたくなる気持ちを抑えている僕の気持ちも、少しは考えた方がいいよ。憂晃くん。
憂晃:さあ、作戦開始だよ。