~第1幕 殺気の必要無い羽休めの私生活~
大学の成績が異常なまでに良過ぎて、秋冬の季節は授業に出ても仕方の無い優等生。
ソレが春陽と折葉の2人だった。
高校生の時にも同じような現象になっていたが、その時は欠席を続ける事にデメリットがあったので、登校していた。
現在、彼らは家でゆったりとした時間を過ごしている。
リビングの日当たりはよく、窓から差し込む光は、丁度いい明るさだ。
そんな空間で、ソファで横になっている春陽の足元で、行儀のいい座り方をした折葉が本を読んでいる。
春陽の目元はアイマスクにより、光対策は万全のようだ。快適な眠りを謳歌している。
速読も出来るが、あえてゆっくりと本を読みながら、本を見つめたままの折葉が口を開く。
折葉:そう言えば、高校時代…いや、ボクらの暗黒時代の時に、よく上級生から声をかけられて、2人きりにならないかと誘われていたのだが…
いつも集合場所に行っても誰も居なかったり、人気の無い筈の時間に春陽くんが教室に入ってきていたな。
春陽:騎士は王子を守るのが務めだからな。
折葉:やはり春陽くんの仕業か。
春陽:「仕業」?「お陰」だろ?なあ、生意気な口はどこだ。
折葉:やれやれ。どちらも同じだろう。
…春陽くんは、好きの反対は何だと思う?
春陽:無関心。
折葉:ふむ。では、嫌いの反対は?
春陽:無関心。
折葉:正解だ。個人的には、だが。
春陽くんはボク以外のモノには無関心だが、そういった事には敏感だな。
春陽:折葉に関心があって、ソレ以外を排除しているだけだ。
折葉に好意が剥き出しの人間は…わかるよな。
折葉:まあ、そうだな。嫌いが過ぎるな。
春陽:そう言う折葉も、無慈悲な時がある。そういうところも愛している。
折葉:そうか?…むむ。自覚は無いが、春陽くんが言うのならそうなのだろうな。
冷たい人間だという事なのか?流石にそうではないだろう。
春陽:折葉は世界一優しくて可愛い熾天使だ。
折葉:やれやれ。春陽くんに一般的な感想を期待してはいけないな。
春陽:何を言っている?こんなの普通かつ庶民的で一般的な感想だろ?
折葉:意外に淡白なところがあるとは、自覚があるからな。
そこは他人を安易に傷付けないようにしなければな。
春陽:そういう発言が淡白で最高に可愛いぞ。
折葉:…っ!?そうなのか?わからない…
春陽:バグってきたな。可愛い。よしよし。
折葉:アホ毛で感情のブレがバレてしまう。むむむ…
春陽:折葉にもわからない感情の変化がわかるのは、俺だけだから。安心しろ。
折葉:まあ、そうだな…?
そう言っている折葉のアホ毛は、ふよふよと揺れている。
春陽:可愛い。
折葉:犬や猫の耳や尻尾と同じなんだ。仕方が無いだろう。
春陽:デレたな。折葉。俺に把握されている事がそんなに嬉しいのか。
もっともっと把握しつくしてやるからな。折葉、折葉…
春陽はアイマスクをしたまま起き上がると、後ろから折葉を抱き締める。
折葉:待て待て。今のはスイッチの入るところか?
春陽:俺は折葉が目の前に居るだけでスイッチ全開だ。
折葉:今日はゆっくりしていたいんだ。
春陽:…じゃあ、こうしている。
本から視線を離さない折葉を、優しく包み込む春陽。
春陽の体温が温かく、じんわりと折葉に伝わってくる。
折葉:春陽くんの体温、ボクはとても好きだ。
春陽:前にも言っていたな。安心するか?
折葉:…ああ。
アホ毛がハート型を作った折葉の頭を撫でる春陽。
春陽:よしよし。低体温だからな、折葉は。
どうだ?俺のぬくもりは。極上だろう。
折葉:冬になると、本当に重宝する。
春陽:春陽カイロだ。全身を包む丁度いいサイズだろ。
折葉:カイロが春陽くんで、抱き枕がボクなのか…
春陽:この抱き枕は、手に収まるサイズで丁度いい。
折葉:レビューするな。
春陽:何を言っているんだ。こんな細腕で真っ白な肌をしている美し過ぎる抱き枕が悪いんだろ。
口からどんどん感想が出てきてしまう。折葉が俺に言わせている。
折葉:「何を言っているんだ」はこっちの台詞だな。
春陽はアイマスクを外し、金色の瞳で折葉を見つめる。
春陽:本にそんなに夢中になって、そんなに面白いのか?
折葉:まあ、小説だから好みにはよるが。春陽くんの好みではないな。
春陽:こっち見ろよ、抱き枕くん。
折葉:嫌だ。今いいところなんだ。
春陽:話しかけてきたのはそっちだろ?寂しがり屋だな、折葉は。
折葉:その時はいいところでは無かったんだ。ボクは本を読むのが早いからな。
春陽:屁理屈ばかりだな。力づくになる前に自主的に言う事を聞いたらどうだ?
折葉:…ぐ。はい。
折れて本を閉じ、春陽と見つめ合う折葉。
春陽:よろしい。
折葉の顎を撫でた春陽は、吸い寄せられるように唇にキスした。
雑談をしながら、過ごす自宅での午後。
何でもない、神話的事象に関係の無い1日。
日常という名の休暇期間。
普段は望まない展開に身を置いている彼らは、このボーナスタイムをどう思うのだろうか。
少なくとも、リラックスをしながら、存分に折葉の尻を揉める春陽は幸せそうである。
自分のスケジュール通りに物事が進む折葉は幸せそうである。
こういった時、いつも春陽はスケジュールを合わせてくれる。
「いつも通り」がどんな1日だろうと、ソレはあるべき姿であり、望まれている展開なのだ。
シナリオの外でも、当然の事ながら、彼らは美しく咲いていた。
永遠に散る事の無い花。虹薔薇×青薔薇には、とても鋭い棘がある。
無関心と無慈悲。混ざり合うと、一言で言えば危険だ。
しかし、その危険さが、癖になると言えるだろう。
彼らに人生を狂わされた人間達は数多く居る。
そんな事もつゆ知らず、はたまた知った上で無視しているのか、彼らはつかの間の日常を過ごすのであった。
ソレが春陽と折葉の2人だった。
高校生の時にも同じような現象になっていたが、その時は欠席を続ける事にデメリットがあったので、登校していた。
現在、彼らは家でゆったりとした時間を過ごしている。
リビングの日当たりはよく、窓から差し込む光は、丁度いい明るさだ。
そんな空間で、ソファで横になっている春陽の足元で、行儀のいい座り方をした折葉が本を読んでいる。
春陽の目元はアイマスクにより、光対策は万全のようだ。快適な眠りを謳歌している。
速読も出来るが、あえてゆっくりと本を読みながら、本を見つめたままの折葉が口を開く。
折葉:そう言えば、高校時代…いや、ボクらの暗黒時代の時に、よく上級生から声をかけられて、2人きりにならないかと誘われていたのだが…
いつも集合場所に行っても誰も居なかったり、人気の無い筈の時間に春陽くんが教室に入ってきていたな。
春陽:騎士は王子を守るのが務めだからな。
折葉:やはり春陽くんの仕業か。
春陽:「仕業」?「お陰」だろ?なあ、生意気な口はどこだ。
折葉:やれやれ。どちらも同じだろう。
…春陽くんは、好きの反対は何だと思う?
春陽:無関心。
折葉:ふむ。では、嫌いの反対は?
春陽:無関心。
折葉:正解だ。個人的には、だが。
春陽くんはボク以外のモノには無関心だが、そういった事には敏感だな。
春陽:折葉に関心があって、ソレ以外を排除しているだけだ。
折葉に好意が剥き出しの人間は…わかるよな。
折葉:まあ、そうだな。嫌いが過ぎるな。
春陽:そう言う折葉も、無慈悲な時がある。そういうところも愛している。
折葉:そうか?…むむ。自覚は無いが、春陽くんが言うのならそうなのだろうな。
冷たい人間だという事なのか?流石にそうではないだろう。
春陽:折葉は世界一優しくて可愛い熾天使だ。
折葉:やれやれ。春陽くんに一般的な感想を期待してはいけないな。
春陽:何を言っている?こんなの普通かつ庶民的で一般的な感想だろ?
折葉:意外に淡白なところがあるとは、自覚があるからな。
そこは他人を安易に傷付けないようにしなければな。
春陽:そういう発言が淡白で最高に可愛いぞ。
折葉:…っ!?そうなのか?わからない…
春陽:バグってきたな。可愛い。よしよし。
折葉:アホ毛で感情のブレがバレてしまう。むむむ…
春陽:折葉にもわからない感情の変化がわかるのは、俺だけだから。安心しろ。
折葉:まあ、そうだな…?
そう言っている折葉のアホ毛は、ふよふよと揺れている。
春陽:可愛い。
折葉:犬や猫の耳や尻尾と同じなんだ。仕方が無いだろう。
春陽:デレたな。折葉。俺に把握されている事がそんなに嬉しいのか。
もっともっと把握しつくしてやるからな。折葉、折葉…
春陽はアイマスクをしたまま起き上がると、後ろから折葉を抱き締める。
折葉:待て待て。今のはスイッチの入るところか?
春陽:俺は折葉が目の前に居るだけでスイッチ全開だ。
折葉:今日はゆっくりしていたいんだ。
春陽:…じゃあ、こうしている。
本から視線を離さない折葉を、優しく包み込む春陽。
春陽の体温が温かく、じんわりと折葉に伝わってくる。
折葉:春陽くんの体温、ボクはとても好きだ。
春陽:前にも言っていたな。安心するか?
折葉:…ああ。
アホ毛がハート型を作った折葉の頭を撫でる春陽。
春陽:よしよし。低体温だからな、折葉は。
どうだ?俺のぬくもりは。極上だろう。
折葉:冬になると、本当に重宝する。
春陽:春陽カイロだ。全身を包む丁度いいサイズだろ。
折葉:カイロが春陽くんで、抱き枕がボクなのか…
春陽:この抱き枕は、手に収まるサイズで丁度いい。
折葉:レビューするな。
春陽:何を言っているんだ。こんな細腕で真っ白な肌をしている美し過ぎる抱き枕が悪いんだろ。
口からどんどん感想が出てきてしまう。折葉が俺に言わせている。
折葉:「何を言っているんだ」はこっちの台詞だな。
春陽はアイマスクを外し、金色の瞳で折葉を見つめる。
春陽:本にそんなに夢中になって、そんなに面白いのか?
折葉:まあ、小説だから好みにはよるが。春陽くんの好みではないな。
春陽:こっち見ろよ、抱き枕くん。
折葉:嫌だ。今いいところなんだ。
春陽:話しかけてきたのはそっちだろ?寂しがり屋だな、折葉は。
折葉:その時はいいところでは無かったんだ。ボクは本を読むのが早いからな。
春陽:屁理屈ばかりだな。力づくになる前に自主的に言う事を聞いたらどうだ?
折葉:…ぐ。はい。
折れて本を閉じ、春陽と見つめ合う折葉。
春陽:よろしい。
折葉の顎を撫でた春陽は、吸い寄せられるように唇にキスした。
雑談をしながら、過ごす自宅での午後。
何でもない、神話的事象に関係の無い1日。
日常という名の休暇期間。
普段は望まない展開に身を置いている彼らは、このボーナスタイムをどう思うのだろうか。
少なくとも、リラックスをしながら、存分に折葉の尻を揉める春陽は幸せそうである。
自分のスケジュール通りに物事が進む折葉は幸せそうである。
こういった時、いつも春陽はスケジュールを合わせてくれる。
「いつも通り」がどんな1日だろうと、ソレはあるべき姿であり、望まれている展開なのだ。
シナリオの外でも、当然の事ながら、彼らは美しく咲いていた。
永遠に散る事の無い花。虹薔薇×青薔薇には、とても鋭い棘がある。
無関心と無慈悲。混ざり合うと、一言で言えば危険だ。
しかし、その危険さが、癖になると言えるだろう。
彼らに人生を狂わされた人間達は数多く居る。
そんな事もつゆ知らず、はたまた知った上で無視しているのか、彼らはつかの間の日常を過ごすのであった。