~第2幕 魔界と天界よりも人間界で~
薄いパステルカラーの金色の空に、愛らしい白い兎や妖精が飛び交う、ここは天界。
上級天使達を集めた緊迫した集会にて、両肩に純白のカラスが止まっている神が口を開く。
神:こんなにも早く集まってくれたか。天使達は真面目で助かるな。
数多くの天使達の中でも、翼が一回りも二回りも大きく、神々しい天使が、ふわりと神の前に出る。
彼は、輝く翼を広げた、水色の混じった腰まである長い金髪を揺らし、桃色がかった不思議な碧眼で神を見る。
そう、折葉である。
折葉:何のご用でしょう。
折葉の周りには、女性の天使達が付いて回る。
天使A:久しぶりにこうやって出会えたというのに、見向きもせずに神様の方に行ってしまうのね。罪な熾天使様。
折葉:やれやれ。ボクが時間間隔に疎い事は知っているだろう。
天使B:私にも構って欲しいものだわ。前に手作りのデザートを差し上げた時のデザートよりも甘い言葉を、また聞かせてくれませんの?意地悪な熾天使様。
折葉:ああ、確かにアレはおいしかった。
天使B:わたくしの事を見て、「もっと」と言ってくれたではありませんか。
折葉:…?
天使A:貴女、私を差し置いて勝手に熾天使様と、そのような…!
神:まあまあ、喧嘩をしないでおくれ。彼は私の最愛の天使なのだから。ね?
そうやっていると、私か、春陽という角悪魔に殺されてしまうよ。
天使達:(神が角悪魔にライバル心を燃やしておられる…!)
折葉:そう言えば、よく見つけましたね。人間界に居たボクを。
神:ん~?神は何でも出来るんだよ。つまり、ストーカーもね♡
折葉:そうですか。
天使達:(誇れる事じゃない!)
神:話が逸れたね。あまりに折葉が可愛いから。あまりに。
折葉:「あまりに」が多いですね。
神:とある遺跡を魔界と合同で守護する事になった。魔界から1人、天界から1人出す事になっていてね。行きたい者は名乗りを上げてくれ。
折葉:はい。
神:という方式は個人的に古いと思っていてね。くじにしようと思っているんだ。
折葉:…成程。つまり、神はボクに行って欲しくないのですね。
神:何を言っているのかな?公平だよ?
折葉:まあ、いいでしょう。
天使A:どうしましょう。行きたくないわ。メリットが無いですし…
天使B:わたくし達が行っても悪魔にいいようにされるだけですし…
もし、例の角悪魔だった場合、熾天使様が助けに来るまで殺され続けてしまいますわ。
天使A:どうしましょう。熾天使様が神々しく助けに来ていらしてくださる、そのシチュエーションいいかも知れません。
天使B:言っていて思ってしまいましたわ。わたくし達意外と話が合いますわね。
でも、運と言えば…熾天使様の運のステータスは確か…
神は、魔法により光り輝く巨大な壺のようなモノを浮遊させる。
神:さあ!引いてくれ、折葉。
折葉:では、遠慮なく。
折葉が迷いなく引いたのは、金色の天使の輪の印の付いた白い紙だった。
折葉:当たりですね。
神:…流石、君の運のステータスはおかしいね。規格外だ。
この中にある紙の数は、千を超えるのに。
誰も当たりを引けずに最後の天使が行く、そういう神の予知夢も見ていたのに。
折葉:やれやれ。ボクを侮るからですよ。
神:では、遺跡まで案内させよう。
折葉:いいえ、遺跡は自分で探すので結構です。というか、きっとボクが人間界に降りれば、そこが「たまたま」遺跡だと思いますし。
神:…ソレは確かにそうかも知れないね。くれぐれも、気を付けて。
折葉:神にはいつも気を付けています。
神:ふ、そうかい。
ふわりと長い髪を揺らめかせ、出口の扉の方を見た折葉は、ばさりと音を立てて大きな翼を広げる。
足に少し力を込めると、目にも止まらぬ速さで電光石火の如く、その場から居なくなっていた。
神:またフラれてしまったよ。つれないね~。
天使A:しかし、遺跡に送ってしまってよろしかったでしょうか…?
その地位だと、今よりももっと人間界に干渉が可能となりますが。
神:別に構わないさ。折葉は優秀だから、そんな彼が与える効果なんて、いいモノになると決まっているからね。
邪悪な表情で折葉の残した羽根を拾う男性天使。
とぼけた様子の女性天使が、声をかける。
天使B:どうしましたの?新入りさん。悪魔のような顔をしていましてよ。
天使C:…別に。悪魔に魅入られた者を熾天使として崇めているという事が気に食わないだけさ。
天使B:ああ、知らないのね。そう勘違いする人間は多いのよ。
でも、貴方は天使。新入りでも助言解説無しにわかって欲しいわ。
天使C:ん…?どういう事なんだい。
天使B:悪魔や周りに彼が魅入られているんじゃない、皆が彼に魅入られているのよ。
熾天使の名の由来でもあるんじゃないかしら。心をくすぐられる感覚を貴方は悪意だと勘違いした。
天使C:…っ!?
天使B:つまり、今、現在進行形で影響されているのは貴方よ。新入りさん。
その感情は悪意でも嫉妬でもない。好意なんだから。好意を寄せられるのよね、彼。
天使C:そんな…!
天使B:ところで、貴方の手に持つその羽根は誰のかしら?
指をさされて、はっと手の上の柔らかい羽根を見た天使Cは、笑う。
天使C:確かに、そう言われてみればそうかも知れないね。完敗だよ。
そんな天使Cに、天使Bは囁く。
天使B:そんな新入りさんには、特別に例の角悪魔と熾天使様のイメージカクテルをプレゼントして差し上げましょうかしら。
天使C:…ご馳走して貰おうかな。
上級天使達を集めた緊迫した集会にて、両肩に純白のカラスが止まっている神が口を開く。
神:こんなにも早く集まってくれたか。天使達は真面目で助かるな。
数多くの天使達の中でも、翼が一回りも二回りも大きく、神々しい天使が、ふわりと神の前に出る。
彼は、輝く翼を広げた、水色の混じった腰まである長い金髪を揺らし、桃色がかった不思議な碧眼で神を見る。
そう、折葉である。
折葉:何のご用でしょう。
折葉の周りには、女性の天使達が付いて回る。
天使A:久しぶりにこうやって出会えたというのに、見向きもせずに神様の方に行ってしまうのね。罪な熾天使様。
折葉:やれやれ。ボクが時間間隔に疎い事は知っているだろう。
天使B:私にも構って欲しいものだわ。前に手作りのデザートを差し上げた時のデザートよりも甘い言葉を、また聞かせてくれませんの?意地悪な熾天使様。
折葉:ああ、確かにアレはおいしかった。
天使B:わたくしの事を見て、「もっと」と言ってくれたではありませんか。
折葉:…?
天使A:貴女、私を差し置いて勝手に熾天使様と、そのような…!
神:まあまあ、喧嘩をしないでおくれ。彼は私の最愛の天使なのだから。ね?
そうやっていると、私か、春陽という角悪魔に殺されてしまうよ。
天使達:(神が角悪魔にライバル心を燃やしておられる…!)
折葉:そう言えば、よく見つけましたね。人間界に居たボクを。
神:ん~?神は何でも出来るんだよ。つまり、ストーカーもね♡
折葉:そうですか。
天使達:(誇れる事じゃない!)
神:話が逸れたね。あまりに折葉が可愛いから。あまりに。
折葉:「あまりに」が多いですね。
神:とある遺跡を魔界と合同で守護する事になった。魔界から1人、天界から1人出す事になっていてね。行きたい者は名乗りを上げてくれ。
折葉:はい。
神:という方式は個人的に古いと思っていてね。くじにしようと思っているんだ。
折葉:…成程。つまり、神はボクに行って欲しくないのですね。
神:何を言っているのかな?公平だよ?
折葉:まあ、いいでしょう。
天使A:どうしましょう。行きたくないわ。メリットが無いですし…
天使B:わたくし達が行っても悪魔にいいようにされるだけですし…
もし、例の角悪魔だった場合、熾天使様が助けに来るまで殺され続けてしまいますわ。
天使A:どうしましょう。熾天使様が神々しく助けに来ていらしてくださる、そのシチュエーションいいかも知れません。
天使B:言っていて思ってしまいましたわ。わたくし達意外と話が合いますわね。
でも、運と言えば…熾天使様の運のステータスは確か…
神は、魔法により光り輝く巨大な壺のようなモノを浮遊させる。
神:さあ!引いてくれ、折葉。
折葉:では、遠慮なく。
折葉が迷いなく引いたのは、金色の天使の輪の印の付いた白い紙だった。
折葉:当たりですね。
神:…流石、君の運のステータスはおかしいね。規格外だ。
この中にある紙の数は、千を超えるのに。
誰も当たりを引けずに最後の天使が行く、そういう神の予知夢も見ていたのに。
折葉:やれやれ。ボクを侮るからですよ。
神:では、遺跡まで案内させよう。
折葉:いいえ、遺跡は自分で探すので結構です。というか、きっとボクが人間界に降りれば、そこが「たまたま」遺跡だと思いますし。
神:…ソレは確かにそうかも知れないね。くれぐれも、気を付けて。
折葉:神にはいつも気を付けています。
神:ふ、そうかい。
ふわりと長い髪を揺らめかせ、出口の扉の方を見た折葉は、ばさりと音を立てて大きな翼を広げる。
足に少し力を込めると、目にも止まらぬ速さで電光石火の如く、その場から居なくなっていた。
神:またフラれてしまったよ。つれないね~。
天使A:しかし、遺跡に送ってしまってよろしかったでしょうか…?
その地位だと、今よりももっと人間界に干渉が可能となりますが。
神:別に構わないさ。折葉は優秀だから、そんな彼が与える効果なんて、いいモノになると決まっているからね。
邪悪な表情で折葉の残した羽根を拾う男性天使。
とぼけた様子の女性天使が、声をかける。
天使B:どうしましたの?新入りさん。悪魔のような顔をしていましてよ。
天使C:…別に。悪魔に魅入られた者を熾天使として崇めているという事が気に食わないだけさ。
天使B:ああ、知らないのね。そう勘違いする人間は多いのよ。
でも、貴方は天使。新入りでも助言解説無しにわかって欲しいわ。
天使C:ん…?どういう事なんだい。
天使B:悪魔や周りに彼が魅入られているんじゃない、皆が彼に魅入られているのよ。
熾天使の名の由来でもあるんじゃないかしら。心をくすぐられる感覚を貴方は悪意だと勘違いした。
天使C:…っ!?
天使B:つまり、今、現在進行形で影響されているのは貴方よ。新入りさん。
その感情は悪意でも嫉妬でもない。好意なんだから。好意を寄せられるのよね、彼。
天使C:そんな…!
天使B:ところで、貴方の手に持つその羽根は誰のかしら?
指をさされて、はっと手の上の柔らかい羽根を見た天使Cは、笑う。
天使C:確かに、そう言われてみればそうかも知れないね。完敗だよ。
そんな天使Cに、天使Bは囁く。
天使B:そんな新入りさんには、特別に例の角悪魔と熾天使様のイメージカクテルをプレゼントして差し上げましょうかしら。
天使C:…ご馳走して貰おうかな。