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~第2幕 秘密のモテ知識を伝授致します~

零:それで、込み入った依頼というのが気になるな。早くそっちの話をしてくれ。
小日:…わかりました。その話というのが、先程探偵さんが当ててくださった、私の職業に関する事なのです。
桜伽:ほう?本の出版社に関係があると。
小日:ええ、ソレが…簡単に言うと、私の所属している会社に、他社に作家さんのアイデアを売る輩が存在している可能性が非常に高いんですよ。

桜伽:成程、ソレは厄介ですね。言い方的に、確証がある訳では無いようですが。
零:お前も趣味程度だが、一応小説を書いているからな。
小日:そうだったのですか!?流石にそこまでは知りませんでした!
桜伽:個人の楽しみなので、公に出版したりは致しませんよ。勿論、小日さんの会社でもね。
小日:私の食いつきが良過ぎましたか…け、けれど!お気持ちが変わったら我が社に!

零は咳払いをする。
零:とりあえず、そのアイデアの盗難についてだが、根拠は勿論あるんだろうな?聞かせろ。
小日:は、はい。実は、私の身近に居らっしゃる作家さん達の担当が、口を揃えて、我が社のライバル社の作品に作家さんの…
零:何だ。
小日:ええ、俗に言うパクり作品が上がっていると言うのです。

桜伽:成程、被害はどれくらいなのですか?
小日:今はまだ小さなアイデアしか盗まれてはいないですが、作家さんへの精神的負担は大きいです…
零:盗作擬きが行われた、具体的な作家の人数はわかるか?
小日:現在、我々が把握している数で良ければ。4人です。

桜伽:かなりやられていますね。捨て置けません。
零:その作家達の共通等はあるか?被っている知り合いだとか。
小日:ううん。そう言われましても…
零:そうだな。わかりやすく言おう。よく飲み会に参加するメンバーは?
小日:…!

桜伽:ほほう、この反応は…零…流石の推理力です。大当たりみたいですよ。
桜伽は零のコートを摘む。
小日:いや…しかし…まさか…
零:動揺しているな。まあ、ソレも仕方が無いだろう。

零:(俺の推理通りなら…)
零:犯人は社内に居る、アンタとも親しいと言える関係性の人間だ。
小日:そ、そんな!まさか大田さんに限って…!
零:今更嘆いても遅いぞ。依頼人。真実を知るのは過酷な事だ。
桜伽:頭の中が優しい嘘に塗れている小日さんには、トドメをさしてあげる必要がありそうですね。
零:ああ。その大田って人間は、盗作擬きをされた4人を飲み会に誘い、酒の席だからとアイデアを吐かせた。
桜伽:大方、そのライバル社にアイデアを売り、買った担当は作家さんにアドバイスと称してアイデアを撒いていた、と。

零:さあ、どうだ。この推理は見当違いか?依頼人。
小日:……
小日は少し考えた後、ゆっくりと頷く。
桜伽:…ふふ。

小日:そこまで聞かせて頂けたら、もう迷いはなくなりました。はい。きっと、大田さんが犯人です。
零:(依頼人は、盗作擬きをされた4人の作家と知り合いと言っていたからな、当然その4人とよく飲みに行く人物とも親しかった訳だ。)
小日は、懐からもう1枚、封筒を零に渡してくる。
小日:こちら、依頼料となります。本当にありがとうございました…!
桜伽:その分、口止め料も込みですかね?越後探偵事務所は口が固いのですが?
小日:いえいえ、一度、太っ腹な依頼人をやってみたかったモノですから。

零:(貰えるなら何でもいいが。)
小日:それに、試すような真似をしたお詫びです。
桜伽:誠意のある男性はモテますよ♡
小日:はは、恐縮です。

桜伽:それで、スパイが理論上、可能だと発覚した大田さんとやらは、どうされるのです?
小日:特に罰は与えたりは致しませんよ。ただ、作家さんに注意を呼びかけるだけです。
桜伽:それでも、まだ続いたら…?
小日:そうですね。間違って、罪も無い人間を犯人呼ばわりしたという事になりますから…

桜伽:おっと、我々は重罪ですねぇ。
小日:またここで依頼させて頂きますよ。今度は依頼料は払わなくていいですよね?
零:ああ、外れたらその分は無しでいい。
桜伽:とても自信があるのですねぇ。零。
零:いつも言っているだろ。ここはお悩み相談所じゃない。ケジメは付けないとな。

小日:大変頼もしいです。
桜伽:そうでしょう、そうでしょう。
小日はスっと立ち上がり、零と桜伽に頭を下げる。
小日:重ね重ね、本当にありがとうございました。結果は後日ご連絡させて頂きます。

桜伽:そういえば、越後探偵事務所には銀行振り込みもありましたのに。あまり街で大金を持ち歩くと危ないですよ。
小日:ご心配には及びません。こう見えても私のスーツ、細工がされていまして。
零:最初からずっと気になってはいたが、そういった細工だったのか。
桜伽:気になります。見せてみてください♡

小日:だ、駄目です!企業秘密です!美しい顔を向けないでくださいっ!心が揺らぎます!
零:(もう少し押せば吐きそうだな。)
小日は探偵事務所を出る前に、もう一度、一礼し、清々しい笑顔で扉を開けていった。

零:ふう、羽振りがいい依頼人だったな。
桜伽:はい、零。ライター。
零:…ん。
タバコをまた吸い始める零に、隣で本を読み始める桜伽。
ガチャっと突然開く越後探偵事務所の扉に、そちらを向く2人。

小日:や、やっぱり空話さんと1枚写真でも…!
零:駄目だ。帰れ。
桜伽:人気者ですねぇ。小生は。
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