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~第2幕 怪盗ライアーに憧れた愚かな少年~

次の週の日曜日。とある入り組んだ路地裏に、少年は居た。
少年A:ここを曲がった先、だよな…?
???:こんにちは。少年。
少年A:だ、誰だ…!?
少年は大きく口を開け、虚勢から来る大声を出す。
???:あれあれ。勇敢だね。だけど残念。膝が笑っているようじゃ…話にならないね。
少年A:(じゃ、じゃあ不合格って事か…?)
???:でもいいよ、おまけでギリギリ合格。
少年A:え?でも話にならないんじゃ…
???:話にならないからこそ、合格なんだ。おめでとう!

少年A:や、やった~!じゃあ、貴方が怪盗ライアーの言っている使者ですか!
使者:そうだよ。ボク如きは、彼にとって使者程度の存在なのさ。
少年A:な、泣かないでよ使者さん…!ほら、ハンカチ!
使者:優しいね。君は。それに、招待状の内容をきちんと守っていた。
少年A:え、えへへ。

使者:この場所で誰かに出会ったとしても、合格通知が届くまで、怪盗ライアーの名前を出さない事。
少年A:そんなところまで、ちゃんと観察されていただなんて思っていなかったよ!使者さんも凄いな…
使者:まあ、怪盗の使者だからね。何といっても。
少年A:本当、凄いや!
使者:(怪盗の使者って、ボク如きの足りない頭じゃ意味のわからない単語だけど、この少年に伝わるならいいや。)
少年A:学生なのに、怪盗の使者ってところが最高にかっけ~!

使者は、パーマがかった黒髪に、桃色の瞳をした、学ラン姿に目立つ時計を付けた青年だ。
正体は勿論、変装をした輪廻である。
輪廻:(ウィッグに、いつものカラーコンタクト。存在しない学ランに、無駄に目立つ安物の腕時計。捜査攪乱は完璧だね。)
少年A:使者って知らなかったら、爽やかな好青年って感じ!いいな~!
輪廻:(無能な警察は、そもそも子供の話を聞かないけれど、この少年から得られる情報は、この時点で信憑性を失っている。徹底的だね。)

少年A:その校章も!見た事ない学校だけど、ここの近くですか?
輪廻:ああ、少し先にある丘の近くだよ。
少年A:へ、へえ~!じゃあ~、あの辺かな?
輪廻:(無理に話を合わせなくてもいいんだよ。だって、この校章は、実在するいくつかの学校の校章の特徴を合わせたハイブリッドなんだから。)

輪廻:そうだ、きちんとご両親には「友達と図書館に行ってくる。」と言って出掛けてきたのかな?
少年A:ああ、うん!勿論だよ!俺、よく図書館に行くから、母ちゃんすんなり信じちゃったよ!
輪廻:そっか。実は少し心配だったんだ。
少年A:え!?何で?
輪廻:今時、小学生が図書館に行く事は珍しいから、怪しまれるんじゃないかってさ。
少年A:あ〜、確かに。よく考えてみれば、友達に図書館行ってるヤツとか居ないかも!
輪廻:(少年が図書館によく行く事は、この前の会話の時からわかっていたけど。)

少年A:そう思うと、俺って皆から頭良さげに見えてる?うわ〜!モテるかも!
輪廻:(無料で過去の新聞記事が見られる手頃な場所だからね。スクラップブックを作るのには役に立つでしょ。)
少年A:あ、俺が図書館に行く理由は、も、勿論勉強なんですけど!
輪廻:(過去の記事全体に先に目を通しておくと、次にどの記事を集めて、スクラップブックに貼ればいいのかわかるから、だろうね。)
輪廻:そうだね。確かに頭が良さそうだ。
少年A:憧れに近い人に言われると照れます…
輪廻:あはは!そうかい。でもお世辞なんかじゃないから、素直に受け取ってよ!
少年A:はい…!感激です…!
輪廻:(……)

輪廻:それで、君は怪盗ライアーに憧れているらしいね。
少年A:は、はいっ!
輪廻:その憧れはどれくらいのモノなのかな。試させてよ。
少年A:え、えっと…
輪廻:将来の夢は?会社員?
少年A:……
輪廻:(…少年が次に何を言うのか、手に取るようにわかる。)
一瞬、輪廻の表情から笑顔が消える。
少年A:お、俺…怪盗ライアーのようなかっけ〜怪盗になりたいですっ!
輪廻:……
少年A:え、どうしたんですか?

輪廻:…そっか。そう言われた時の為に、怪盗ライアーから伝言を授かってきているよ。
少年A:本当ですか!
輪廻:そうだよ。ボク如きが嘘を吐いても、君にはすぐにわかるだろう?
輪廻は、少年に気付かれない程度に悪い笑みを見せる。
少年A:気になります!教えてください!
輪廻:勿論。君に伝える為の伝言だからね。怪盗ライアーはこう言っていたよ。
少年は輪廻を見上げ、真剣な眼差しを向けている。

輪廻:少年、犬を飼っているね。その飼い犬を殺してきたら、この事について考えよう。
輪廻は少年にリアクションをする間を与えずに詰め寄る。
輪廻:もし、出来なかったら、ボク如きと会った事は忘れるんだ。いいね?君はこれまで通り綺麗な凡庸で居られる。
少年の冷や汗が滴り落ちる。輪廻が何を言っているのか、理解出来ていない様子だ。
いや、少年の脳が理解する事を拒んでいるのかも知れない。
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