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~第1幕 嫉妬される多弁症~

小生は夏が大嫌いです。
七夕の願いは叶う事は無いですし、流れ星だって見られない。
それに…怪談話の幽霊だなんて都合のいいモノ、この世に存在しないモノ。
小生には、もしも生きていたのなら、心から会いたかった女性が居ました。

その女性は小生の生き別れの姉で、歳がとても離れていました。
家族と仲の悪かったと聞く姉は、小生が幼い頃に家を出て行ってしまったのです。
それから暫くして、小生は姉と言う人間の事が気になり、仕事の合間に姉を探すようになりました。
しかし、両親に尋ねてみても、顔をしかめるばかり。
「彼女は自分勝手でロクな人間ではない。会うのには賛成出来ない。」
遂に、そう言い切られてしまいました。
「もう諦めてしまおう。」
小生は、姉の事は心にしまっておこうと決心しました。

ある夏の日、とあるメールが目に付きました。
姉を知っている人間だと名乗るその人物は、小生が立てた掲示板を見てメールを寄越したのだと言います。
「まさかこんなに近くに姉の存在が…」
小生の胸は感動と緊張で混濁していました。
した筈の決心は揺らぎ、瞬く間に消えて無くなってしまいました。

10年間探し求めていた彼女に会えるのだと思うと、既に報われた気持ちに陥る程でした。
感極まってしまい涙が零れ落ちそうになり、それでもなんとか車を走らせ、田舎の診療所まで足を運びました。
訪ねてみると、この診療所の医者であり、メッセージを寄越した人物だという男性が、奥の居住スペースへと通してくれました。
ギラギラと身体に突き刺さるような、容赦のない日差しが窓ガラスを光らせていて、酷く眩しかった事を覚えています。
冷えた麦茶を注いでくれる男性は、日差しに気が付くとすぐにカーテンを閉め、人懐こい笑顔で世間話を披露してくれます。。
「ここは太陽の光が当たりやすいんだ。」
暫くして、小生がどの話にも興味を示さない事を理解した彼は、少し口をつぐみ、目を閉じて息を吸った後、小生の姉の死について話してくれました。

両親と姉は、どうやらとうの昔に縁を切っていたようで、死の連絡も寄越さないでほしいと姉本人が望んでいたようです。
姉は去年の夏に、結婚を約束していた男に大金を騙し取られ、心の拠り所を無くし、気を病んでしまった。
この男性と姉の出会いはそんな頃だったそうです。
男性が買い物へ行こうと車を走らせていた時、1人の女性が突然車道へフラフラと出てきたのだと言います。
その事故で運良く軽傷で済んだ姉に話を聞き、男性は笑って言ったそうです。
「行く場所も無いのなら共に過ごそう。」

――しかしほんの数日で姉は首を吊って自殺をしてしまった。

その事実を打ち明ける男性は眉尻を下げ、泣きそうな笑顔で零します。
そしてその男性は、思い出したかのように1つのボロボロの猫のキーホルダーを出してきました。
どうやらそれは、幼い頃の小生の誕生日プレゼントに、と買ってくれていたものらしいです。
ただ、自分のような真っ当でない人間の残り香を、まだ幼く無垢な小生につけたくなかったからだろうと、男性は目を伏せます。
小生は無言でソレを受け取りました。

その時、小生は考え事をしていました。
「ああ、自分がもう少し早く見つけていれば、あるいは…」
それから小生は、自分を責め、毎晩祈るようにそのキーホルダーに話しかけるようなりました。
幽霊が本当に存在すればいいのに。

まあ、全て作り話なのですが。
小生の歳は24です。
10年間探し続けていたら…
小生は14歳から探している事になりますからね?
きちんとツッコミを覚えてください。
遮ってくださらないと本当に長くなりますから。
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