~第1幕 カルティック・ショットガン~
初めての射撃訓練の日。
教団では子供が10歳の誕生日を迎えると共にこの訓練が始まる。
奴隷と言われ、教えられ続けたソレを前に、僕はたじろいだ。
今思えば、あの時の僕は狂っていた。
いや、あの時に正気になったのかも知れない。
他の訓練で痛め付けたり、傷付けたりするのは平気だったというのに、一発に命がかかっていると思うと、急に怖くなる。
何にせよ、自我が目覚め、初めて命令に背きたくなったんだ。
思考を巡らせていると、僕の母親が…
自身の腰にあった拳銃を抜いた。
ああ、自分はやらなくていい。別に僕がやらなくても、母親がやってくれるのだ。
そう安堵するもつかの間、母親は僕のこめかみに拳銃を突き付けた。
母親:出来るわよね?これくらい。
母親の瞳にうつった僕は、あの奴隷の姿をしていた。
押し当てられた拳銃の先から、殺意が…
脳に直接流れ込んでくるようで、頭が割れてしまいそうだ。
奴隷を撃たなければ、殺さなければ…
僕は…確実に…
そうパニックになりそうになった時、僕の手は「生」に正直に引き金を引いたのだ。
まっすぐ奴隷へ向けて。
――撃ててしまった。
先程まで躊躇していたのが嘘のようだ。
その日はとても褒められた。
僕は奴隷を生贄にして生きている。
そう実感し、吐き気を催した。
その日、僕は行動に出た。
罰を覚悟で資料室へ忍び込み、資料を読んでみたのだ。
教団の古い文献によると、どうやら僕が撃ち殺した生き物は、チョー・チョー人という名前らしい。
幼少期は何かと世話をしてくれていた。
当たり前に居る存在。
使用人のようで、言語は通じないがコミュニュケーションはとっていた。
それなのに、結局自分の命が惜しくなってしまったんだ。
翌日、僕は母親が他の教団員と話しているところに遭遇し、聞き耳を立てた。
僕の母親は、あの場面での話を自慢げにしていて、「子供を撃つ気は全くなかったわ」と笑っていた。
それが本当なのかはわからない。
弾を抜いていてくれた訳でもないのだから。
――弾を抜く動作がなかった。
つまり、あの拳銃には、弾は入っていた。
同時に、衝撃的な事実も知ってしまった。
どうやら、10歳の誕生日にチョー・チョー人を撃ち殺す事が出来たのは、教団設立以来、ほんの数えるくらいだと。
母親:きちんと撃てたあの子は、間違いなくこの仕事に向いているわ。
母親は僕の事が誇らしく思っていたようだ。
何も嬉しくなんてなかった。
こんな非人道的な職業はあっていいものではない。
僕は自分と教団に言い知れぬ嫌悪感を抱いた。
自我が目覚めるまでの僕は、自分の家庭環境が普通だと思っていた。
兄弟が多いだけの、平凡な家庭。
少し変わった、身の回りの世話をしてくれる生き物が居るだけ。
――秘密が多いだけ。
無知は罪であると理解した。
僕の10歳の誕生日。
あの日から、僕の運命の歯車は狂い始めた。
教団では子供が10歳の誕生日を迎えると共にこの訓練が始まる。
奴隷と言われ、教えられ続けたソレを前に、僕はたじろいだ。
今思えば、あの時の僕は狂っていた。
いや、あの時に正気になったのかも知れない。
他の訓練で痛め付けたり、傷付けたりするのは平気だったというのに、一発に命がかかっていると思うと、急に怖くなる。
何にせよ、自我が目覚め、初めて命令に背きたくなったんだ。
思考を巡らせていると、僕の母親が…
自身の腰にあった拳銃を抜いた。
ああ、自分はやらなくていい。別に僕がやらなくても、母親がやってくれるのだ。
そう安堵するもつかの間、母親は僕のこめかみに拳銃を突き付けた。
母親:出来るわよね?これくらい。
母親の瞳にうつった僕は、あの奴隷の姿をしていた。
押し当てられた拳銃の先から、殺意が…
脳に直接流れ込んでくるようで、頭が割れてしまいそうだ。
奴隷を撃たなければ、殺さなければ…
僕は…確実に…
そうパニックになりそうになった時、僕の手は「生」に正直に引き金を引いたのだ。
まっすぐ奴隷へ向けて。
――撃ててしまった。
先程まで躊躇していたのが嘘のようだ。
その日はとても褒められた。
僕は奴隷を生贄にして生きている。
そう実感し、吐き気を催した。
その日、僕は行動に出た。
罰を覚悟で資料室へ忍び込み、資料を読んでみたのだ。
教団の古い文献によると、どうやら僕が撃ち殺した生き物は、チョー・チョー人という名前らしい。
幼少期は何かと世話をしてくれていた。
当たり前に居る存在。
使用人のようで、言語は通じないがコミュニュケーションはとっていた。
それなのに、結局自分の命が惜しくなってしまったんだ。
翌日、僕は母親が他の教団員と話しているところに遭遇し、聞き耳を立てた。
僕の母親は、あの場面での話を自慢げにしていて、「子供を撃つ気は全くなかったわ」と笑っていた。
それが本当なのかはわからない。
弾を抜いていてくれた訳でもないのだから。
――弾を抜く動作がなかった。
つまり、あの拳銃には、弾は入っていた。
同時に、衝撃的な事実も知ってしまった。
どうやら、10歳の誕生日にチョー・チョー人を撃ち殺す事が出来たのは、教団設立以来、ほんの数えるくらいだと。
母親:きちんと撃てたあの子は、間違いなくこの仕事に向いているわ。
母親は僕の事が誇らしく思っていたようだ。
何も嬉しくなんてなかった。
こんな非人道的な職業はあっていいものではない。
僕は自分と教団に言い知れぬ嫌悪感を抱いた。
自我が目覚めるまでの僕は、自分の家庭環境が普通だと思っていた。
兄弟が多いだけの、平凡な家庭。
少し変わった、身の回りの世話をしてくれる生き物が居るだけ。
――秘密が多いだけ。
無知は罪であると理解した。
僕の10歳の誕生日。
あの日から、僕の運命の歯車は狂い始めた。