パラノイア1997 -1話-
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
魔晄炉のある土地は次第に痩せ、ライフストリームを含めた自然界の資源が枯渇していくというが、そういう閉鎖寸前の魔晄炉の周辺地域を巡って「最後の宝物」を探すのが私の仕事だった。
私のような魔晄を投与された人間で拒否反応が出なかった者は、神羅カンパニーが定義するソルジャーの要件を満たす。私はソルジャーの歴史の中では初期になった方で、通常の人間が得られない力の使い方もとうに理解して1stまで昇格し、与えられた個別任務をこなす日々を送っていた。
任務といっても戦闘行為は他の兵員に比べて少ない。直接戦闘向きでないとされた私は後方任務と呼ぶにもおこがましいほどの探索活動を主任務としていた。地方に点在する魔晄炉の周辺にある洞窟で稀に生成している天然マテリアを回収する任務だ。
そんな最中だ。この男に会ったのは。
「なあ、どんな感じだ?」
今現在、私の斜め後ろをついてくるソルジャー・2ndの男。子供のような眼をしている。自己紹介では十七歳だと言っていたし身分証も見せて貰ったが、いまいち納得がいかない。かといって自分の十七歳の頃はというと、自覚していなかっただけでこの男よりも子供だったのかもしれない。
──あの頃の私は全てを兄さんに押し付けていた。
「なあ……ルシェル!」
「え……うわあっ?」
考え事の最中に肩を軽く叩かれ、私は情けない悲鳴を上げた。手にしていたライトを落とさなかったのは不幸中の幸いだ。魔晄エネルギーではなく使用者の魔力で動作するタイプは珍しい。壊れたら私では修理できない。軍の支給品ではなく個人購入したものなのに。
「あ、ゴメン。考え事してた?」
謝罪だが呑気な響きのそれに腹が立つ。先に状況説明済みなので、注意することにする。
「探知に集中していると説明したはずだ! 驚かせるな!」
「ゴメンって。それで、何か見つかった?」
誤解を受けそうだが私が短気なのではない。魔法使いの探知行動中に集中を乱すこの男が悪い。これが戦闘中なら命取りになりかねない愚行だ。
全く反省した素振りを見せない無遠慮さで、私よりも年下、階級も下のはずの男が顔を覗き込んでくる。名前はザックス・フェアという。
なお、遭遇した当初は私の方が年下だと思い込んでいたようなので、直ちに訂正しておいた。魔法使いの肉体の老化速度は魔晄を浴びたソルジャーよりも更に遅いとの説明に納得したようだが、どこまで理解したことか。完全にバカならソルジャーにはなれないが、多少のバカで義務教育を受けていなくても魔晄適性さえあれば……いや、ここで考える事ではないか。
「まだだ。無理についてこなくて良いんだぞ」
私は何度目になるかという忠告をした。これが正規任務の私はともかく、この男は赴任先での休暇中に、たまたま私と出会って同行を申し出た。貴重な休暇を費やすことはないと何度も言ったのだが、結局この男の醸す不思議に和む雰囲気に絆されて許可してしまった。
そういえば、本部にお伺いを立てたところ、いつも冷静なオペレータが「ええ? ザックスさんですかあ?」と妙に裏返った声で応答していた。私の場合は役目が役目なだけにセフィロスやごく一部の軍関係者としか接してこなかったが、有名人なのかもしれない。
「でもあんた、魔法使いなら力仕事は苦手だろ? 女の子だしさ」
「上官に向かって無礼だという思考はないのか……」
あっけらかんと言う男には脱力させられてばかりだ。何が悲しくて二十を過ぎてから、三歳下の男に少女扱いされなければならないのか。この任務が終わって本部に帰還した暁には、所属長にたっぷりと抗議させてもらおう。
「だって、全然そう見えないしさ。一人で行かせるのも危なっかしいし」
それはまあ……軍人らしくない恰好で任務遂行中なのが理由だ。ありていに言えば今の私は観光客と大差ない恰好をしている。神羅カンパニーの関係者なら見分けられる装飾品を身に着けていたので、ザックスに見つかったのだ。
だが普通に考えれば、神羅のロゴマークをべたべたと貼りつけた軍服姿の女ソルジャーが単独行動するより、観光客がハイキングに来た恰好の方が地元住民を驚かせないと理解できるはずだ。実際、どこからどう見ても2ndソルジャーの制服姿のザックスが私に近づくのを見て、やんわりと止めに入ろうとしてくれた者はいた。仕方ないので知人だと誤魔化したが、きっと宿では私が神羅関係者か、近しい者として敬遠する者が出ているだろう。
「正規の任務だと言っているだろう。これに関しては、むしろお前の方がオマケなんだが。ザックス」
「うーん、やっぱ、ちょっと発音違うんだな。ミッドガルから離れて住んでたって言ってたもんな。どこなんだ?」
「黙っていてくれ。気が散る」
事実であれ、迂闊にセフィロスの知り合いだなんて言うんじゃなかった。話が妙に弾んでいたとはいえ、あれは失策だった。その所為でザックスは私にすっかり関心を抱いてしまったらしい。どうもセフィロスの友人らしいが、本当なんだろうか?
これも幸いなことに、本当の関係までは言わなかった。そこは本当に良かった。これで異母妹だなんて知られたら、この任務が終わっても付き纏われそうだ。
この男が悪人とは思わないし、どちらかというと真っ当な感覚を持った純粋な兵士なのだろう。だからこそ、私などには関わらない方が良いのかもしれない。
「邪魔しちゃ悪いか。じゃあ、終わったら話してくれよ?」
「終わったらな」
その時はさっさと本部に連絡してこいつを回収してもらおう。本当にセフィロスの友人だというなら、少しくらい相手をしてやっても良いけれども。
──はあ、兄さん。今頃どうしてるのかな。
内心ため息をつきながら、仄かに魔晄の光が宿る洞窟を歩く。いつの間にか隣に並んできた男の馴れ馴れしさにも少しばかり、慣れた。
私のような魔晄を投与された人間で拒否反応が出なかった者は、神羅カンパニーが定義するソルジャーの要件を満たす。私はソルジャーの歴史の中では初期になった方で、通常の人間が得られない力の使い方もとうに理解して1stまで昇格し、与えられた個別任務をこなす日々を送っていた。
任務といっても戦闘行為は他の兵員に比べて少ない。直接戦闘向きでないとされた私は後方任務と呼ぶにもおこがましいほどの探索活動を主任務としていた。地方に点在する魔晄炉の周辺にある洞窟で稀に生成している天然マテリアを回収する任務だ。
そんな最中だ。この男に会ったのは。
「なあ、どんな感じだ?」
今現在、私の斜め後ろをついてくるソルジャー・2ndの男。子供のような眼をしている。自己紹介では十七歳だと言っていたし身分証も見せて貰ったが、いまいち納得がいかない。かといって自分の十七歳の頃はというと、自覚していなかっただけでこの男よりも子供だったのかもしれない。
──あの頃の私は全てを兄さんに押し付けていた。
「なあ……ルシェル!」
「え……うわあっ?」
考え事の最中に肩を軽く叩かれ、私は情けない悲鳴を上げた。手にしていたライトを落とさなかったのは不幸中の幸いだ。魔晄エネルギーではなく使用者の魔力で動作するタイプは珍しい。壊れたら私では修理できない。軍の支給品ではなく個人購入したものなのに。
「あ、ゴメン。考え事してた?」
謝罪だが呑気な響きのそれに腹が立つ。先に状況説明済みなので、注意することにする。
「探知に集中していると説明したはずだ! 驚かせるな!」
「ゴメンって。それで、何か見つかった?」
誤解を受けそうだが私が短気なのではない。魔法使いの探知行動中に集中を乱すこの男が悪い。これが戦闘中なら命取りになりかねない愚行だ。
全く反省した素振りを見せない無遠慮さで、私よりも年下、階級も下のはずの男が顔を覗き込んでくる。名前はザックス・フェアという。
なお、遭遇した当初は私の方が年下だと思い込んでいたようなので、直ちに訂正しておいた。魔法使いの肉体の老化速度は魔晄を浴びたソルジャーよりも更に遅いとの説明に納得したようだが、どこまで理解したことか。完全にバカならソルジャーにはなれないが、多少のバカで義務教育を受けていなくても魔晄適性さえあれば……いや、ここで考える事ではないか。
「まだだ。無理についてこなくて良いんだぞ」
私は何度目になるかという忠告をした。これが正規任務の私はともかく、この男は赴任先での休暇中に、たまたま私と出会って同行を申し出た。貴重な休暇を費やすことはないと何度も言ったのだが、結局この男の醸す不思議に和む雰囲気に絆されて許可してしまった。
そういえば、本部にお伺いを立てたところ、いつも冷静なオペレータが「ええ? ザックスさんですかあ?」と妙に裏返った声で応答していた。私の場合は役目が役目なだけにセフィロスやごく一部の軍関係者としか接してこなかったが、有名人なのかもしれない。
「でもあんた、魔法使いなら力仕事は苦手だろ? 女の子だしさ」
「上官に向かって無礼だという思考はないのか……」
あっけらかんと言う男には脱力させられてばかりだ。何が悲しくて二十を過ぎてから、三歳下の男に少女扱いされなければならないのか。この任務が終わって本部に帰還した暁には、所属長にたっぷりと抗議させてもらおう。
「だって、全然そう見えないしさ。一人で行かせるのも危なっかしいし」
それはまあ……軍人らしくない恰好で任務遂行中なのが理由だ。ありていに言えば今の私は観光客と大差ない恰好をしている。神羅カンパニーの関係者なら見分けられる装飾品を身に着けていたので、ザックスに見つかったのだ。
だが普通に考えれば、神羅のロゴマークをべたべたと貼りつけた軍服姿の女ソルジャーが単独行動するより、観光客がハイキングに来た恰好の方が地元住民を驚かせないと理解できるはずだ。実際、どこからどう見ても2ndソルジャーの制服姿のザックスが私に近づくのを見て、やんわりと止めに入ろうとしてくれた者はいた。仕方ないので知人だと誤魔化したが、きっと宿では私が神羅関係者か、近しい者として敬遠する者が出ているだろう。
「正規の任務だと言っているだろう。これに関しては、むしろお前の方がオマケなんだが。ザックス」
「うーん、やっぱ、ちょっと発音違うんだな。ミッドガルから離れて住んでたって言ってたもんな。どこなんだ?」
「黙っていてくれ。気が散る」
事実であれ、迂闊にセフィロスの知り合いだなんて言うんじゃなかった。話が妙に弾んでいたとはいえ、あれは失策だった。その所為でザックスは私にすっかり関心を抱いてしまったらしい。どうもセフィロスの友人らしいが、本当なんだろうか?
これも幸いなことに、本当の関係までは言わなかった。そこは本当に良かった。これで異母妹だなんて知られたら、この任務が終わっても付き纏われそうだ。
この男が悪人とは思わないし、どちらかというと真っ当な感覚を持った純粋な兵士なのだろう。だからこそ、私などには関わらない方が良いのかもしれない。
「邪魔しちゃ悪いか。じゃあ、終わったら話してくれよ?」
「終わったらな」
その時はさっさと本部に連絡してこいつを回収してもらおう。本当にセフィロスの友人だというなら、少しくらい相手をしてやっても良いけれども。
──はあ、兄さん。今頃どうしてるのかな。
内心ため息をつきながら、仄かに魔晄の光が宿る洞窟を歩く。いつの間にか隣に並んできた男の馴れ馴れしさにも少しばかり、慣れた。
1/3ページ
