2章
あなたのお名前は?
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回収班を撤退させ、土方は会場の端にいた。
ロビーで煙草を吹かしていたが、そうすると桜が男にすぐ捕まってしまうのだ。
全く恐ろしい女である。桜は気にも留めていない様だがいかんせん自分が気に入らないのだ。
そうしてまた桜の隣にいた男は、土方ビームを喰らい、「じゃあまた、」とまた1人遠ざかって行く。
かと言ってもう資産家の馬鹿げた自慢話も聞き飽きた。それに女も女で言い寄ってくる。勘弁してくれ。こんなしかめっ面の、何が女心をくすぐるのか分からねえ。基本声を掛けられても黙ったまま過ごしていたが、それでも喋ってくる女にはハッキリと告げていた。
女「ねえ、退屈なら抜け出しましょうよ。スイートをとってあるの。」
土「悪いな。俺には脇目も振れねえ位夢中になっちまった女で頭がいっぱいなんでね。」
といって顎で桜をさせば、桜の美貌にすごすごとうらめしそうに返っていく。
結論土方は仕方なく会場に入り端の方で佇み、たまにこちらに様子を見にくるボーイの山崎にまだ終わらねえのかとイライラをぶつけ、桜に絡んでいる男がいたら瞳孔を開いてやっつける。女が来ても口でボロクソにしてしまう。彼は全方位にトゲのある、海に住むウニのようになっていた。
(土方さん外出たいんだろうなあ・・
皆話しかけてくれるけど、そんなに深くならずに離れてっちゃうのよね。私よくマシューと話せたな。仕事としては、都合が良いけれど・・・。)
お分かりの通り、桜は自分の魅力に気付いていないし土方の妨害も気付いていない。自分に関する事はとんと無頓着なのである。
土方を少し見やればハッキリとイライラしているのがよくわかった。先程煙草へと促したのだが早々に帰ってきたのだ。どうしよ、と考えあぐねようとすればお客様、と背後で呼ばれ振り返る。
桜「・・・あら。」
山「お客様お連れ様が・・・不機嫌なんで、まじでご機嫌とれない?」
なにかと思ったらボーイに扮した退だった。これ以上あの人ここにいたら俺が殺される、と怯えている。苦笑し、私もどうしようかと思っていたの。というと土方の元へと歩いて行った。
桜「トシ」
ふんわりとほほ笑むと、土方の眉間の皺はいささか緩む。ただノープランの桜。この後の事を全く考えずに彼の元へ来てしまった。
土「・・・?どうした、董。」
逆に心配される始末。桜の頬へと手を触れる彼に、そうか。と思い桜は両手で土方の頬を包み込んだ。土方の手は桜の顔から離れ、なんだ?とまた眉間に皺が寄る。
桜「うーん。」
桜は困った顔をし、土方の頬をむにむにと触る。
土「おい、そろそろ叱るぞ。さく」
”Ladies and Gentlemen!!”
突如スピーカーから流れる声に皆が耳を傾ける。会場にいる者はよく知っているようで、ざわめき立つ。
”お待ちかねのShow Timeが始まりましたっ。さあ皆さん左手をご覧ください!”
とマイクを持った司会者が左手を指せば、マシューを引き寄せる際に先程ロックの掛かっていた側面のドアが全て開放され、ボーイ達が全てのドアを開ける。
先にはベランダから庭園へと繋がっており、会場内が少しほの暗くなればベランダから庭園の外灯が一斉につく。噴水が吹き出し、ブルーに光り輝いた。
わああ。と感嘆の声がそこかしこで聞こえ出す。
”では、皆さん、全ての扉にウエイターが控えております。お好きなカクテルをどうぞ、お申し付けください。”
土「董。・・お手を、」
桜「はい。」
手を繋いで外へと歩いていく。
ウエイター「何に、なさいますか?」
と聞かれると、土方は桜に振り返り、(手頃な、度数の低い奴選べるか?)と言われたので桜が答える。
桜「んん、そうね。オーガスタセブンとベリーニを頂けるかしら。」
ウエイター「かしこまりました。」
グラスを持ったボーイがこちらへ。と言われた場所は小さいテーブルに2人掛けの、背もたれの高いソファが用意され、皆ソファの向きが一か所の方向を向いている。
2人座ると外部への視界は遮られ、噴水とその先へ広がる庭園と夜空が広がっている。
ちら、と土方を見れば土方の表情も穏やかで、ほっとした桜はベリーニに口付けた。
土「なあ、なんでさっきあんな事しやがったんだ。」
土方は他の客から見えにくい事を確認し、いつもの口調で喋り出す。オーガスタセブンに口付け、飲みやすいな。ともう1口。
桜「あんな事っていうのは?」
土「こういう事。」
と言われ、先程桜が両頬を持ったように桜の両頬を手で挟む。ああ、と言い桜は苦笑しながら告げる。
桜「さっき、”どうした”って、言って下さったじゃないですか。」
土「あ?ああ。」
桜の意図はまだわからない。
桜「どうしたって心配してくれた時に、土方さん頬を触ってくれたから。土方さんも頬を触ったら、嫌な気持ちがおさまると、思って・・・ひじかたさん?」
土「うるさい。」
そうしてクッとオーガスタセブンを飲み干すと、ボーイを呼び、桜に似たようなのがいい。と言えば桜はボーイに告げる。飲みやすそうなのは・・・、
桜「じゃあ、アプリコットクーラー・・・?」
ボーイがそれを持ってくれば、土方はグッとオレンジ色の液体を喉に入れていく。炭酸の喉ごしもまた進みやすい。
桜のマシューを引き付ける手管だとかは、教えられたものを自分のものにしてしまうから、出来てしまう技なのだろう。
それとまた桜が自然と見せる表情は別物で。
桜が新選組に来てから、色んな表情が増えていくその様は、感情を覚え増やしていく事と変わらないものなのだろう。素直なその可愛い発想に、直球で受け取るには色んな大人を相手にしてきた捻くれたバラガキには面喰ってしまう。自分でもわかる、顔が熱い。グッとまた甘酸っぱいそのカクテルを飲み欲し、桜の方を向く。
土「あー、お前ほんと可愛いよ。」
桜「え、」
ベリーニを飲み欲し、泡を上唇につけた桜が土方の方を向いた。
2人掛けのソファはそんなに広くない。なんせこれだけの席を設けるのだ。そこまで広いものは用意しないだろう。
土方は桜のソファに置いた手に手を合わせ、桜が持ったグラスを桜に視線を合わせたままテーブルに置き、その手に指を絡ませる。すると上唇についた泡を舐めとった。舌で味わえば、
土「甘え。」
桜「!?ひじかたしゃ・・・んうっ」
驚いた桜は土方の名を呼ぶが、逆に口を開けてしまった事で熱い舌が差し入れられる。歯列をなぞられ、舌を絡めとられる。いつの間にか絡み合わせた手はそのままに、もう片方の手は後頭部を抑えて逃げられない。(それに、土方さんのキス。気持ちいい・・・・)
一瞬離れ、また深くなる口付けに、桜はされるがままになっていた。
暫くしてゆっくりと土方の体が離れる際に、2人の間につーと糸が引きプツと切れれば、桜は惚けた顔で顔を赤らめる。
桜「・・・・ど、どうなさったんですか・・・土方さん」
彼からの返事は返ってこない。心臓が忙しなく音を立てて煩い。彼の顔を見ようとすると、その瞬間ドーン!と大きな音がして、庭園の先を見れば大きな花火が上がった。何発も連続して上げられる様は噴水の水がソファに反射する。
桜「わあ・・・・」
まだ頬の赤い桜は照れながら、今度こそ彼の顔を見れば桜の目ははたと止まった。
桜「ひ、土方さん・・・・?」
土方は赤い顔をしてすやすやと眠っていた。
(ええええっ)
軽くパニックである。そうか、仮にも任務中である彼が、こんな事をするはずがないのだ。それに彼の体温がやけに熱かったのはお酒の性。お酒だって度数の低いものを選んだつもりであったが、一気に入れすぎたんだろうか。それにしても、
(・・寝顔。か、かわいい。)
・・・じゃなくて、キスを気持ちいとか、抵抗出来なかった自分のこの変なむずがゆい気持ちは、なんなのだ。
山「あ、いた。」
桜「さっ!・・・退か。」
山「何その顔。まあいいけど・・・って副長寝ちゃったの?ああ3徹に酒弱い癖に腹に入れるから・・・ちょっと、副長。」
と言って、軽く揺する。急に出て来た山崎に物凄く驚いたが来てくれて助かった。桜はほっとしているのと同時に土方のマシュー回収後にあんだけ苛立っていたのも、度数低めのカクテルにすぐ酔って寝てしまったのにも頷けた。
山崎が揺すった事により、身体が大きく傾いてしまった土方につられて桜も一緒の方向に傾いた。
山桜「「??」」
困惑すると先程キスされた時に絡ませた手がまだずっと繋がれたままだったのである。
かああと顔を赤くする桜に、山崎はふうと溜息を吐き告げる。
山「桜、あと10分弱でこの花火終わったらこれでパーティーも終わるからさ、桜が副長起こしてあげてよ。俺、ボーイじゃなくて、今度は違う恰好で車乗りつけて2人を迎えに行くからさ、」
桜「う、うん。」
じゃ、頼むね。と言い残し山崎は去ろうとする。はっと気づいた桜が山崎に告げた。
桜「待って退。」
山「ん?」
桜「あの、不可抗力でこうなっちゃったんだけど、後で言わないであげて。副長、任務中にこんななっちゃったの、絶対嫌がるはずだから。」
山「副長が羨ましいよ。・・了解。」
と言って戻って行く。桜はしばらくこのまま、温かい気持ちを胸に手をつなぎ花火を見ていた。一層盛大な花火に差し掛かってくると土方がくあっとあくびをした。
桜「土方さん?」
土「んあ?・・・寝ちまってた、みてえだ。!、・・・悪い。」
と言って桜は繋がれた手をそっと離す。
桜「いえ、大丈夫です。」
ドオン!
桜は一際大きな花火を見上げた。
ドオン!・・ドオン!
そんな桜を見ていると花火に照らされた顔は絵画の様だ。彼女はぽつりともらす。
桜「綺麗ですね。」
土「ああ。」
2人の時間は穏やかに流れていく。
***
土方は桜をエスコートしながら車に乗せると、自身も座り扉を閉めた。
運転手は勿論、スーツを着た山崎である。
ホテルを出て少し走ると緊張も解れた様で、ネクタイを緩めた。
土「あー疲れた!」
桜「あははは、確かに最後まで潜入してるのは結構堪えますね。」
山「俺はいっつもやってんですけどね!」
土「いいじゃねえか地味なんだから。俺らをみただろ。周りの連中がとっかえひっかえ来やがる。煩いったらありゃしねえ。」
桜「確かに土方さんの周りには沢山御仁がいらっしゃってましたね。」
土山「「ばーか、お前もだよ。」」
桜「・・・・?」
黒いラグジュアリーカーは、夜の道を颯爽と走っていった。
〔エンンジェルズ・キッス〕ーあなたに見惚れて
ロビーで煙草を吹かしていたが、そうすると桜が男にすぐ捕まってしまうのだ。
全く恐ろしい女である。桜は気にも留めていない様だがいかんせん自分が気に入らないのだ。
そうしてまた桜の隣にいた男は、土方ビームを喰らい、「じゃあまた、」とまた1人遠ざかって行く。
かと言ってもう資産家の馬鹿げた自慢話も聞き飽きた。それに女も女で言い寄ってくる。勘弁してくれ。こんなしかめっ面の、何が女心をくすぐるのか分からねえ。基本声を掛けられても黙ったまま過ごしていたが、それでも喋ってくる女にはハッキリと告げていた。
女「ねえ、退屈なら抜け出しましょうよ。スイートをとってあるの。」
土「悪いな。俺には脇目も振れねえ位夢中になっちまった女で頭がいっぱいなんでね。」
といって顎で桜をさせば、桜の美貌にすごすごとうらめしそうに返っていく。
結論土方は仕方なく会場に入り端の方で佇み、たまにこちらに様子を見にくるボーイの山崎にまだ終わらねえのかとイライラをぶつけ、桜に絡んでいる男がいたら瞳孔を開いてやっつける。女が来ても口でボロクソにしてしまう。彼は全方位にトゲのある、海に住むウニのようになっていた。
(土方さん外出たいんだろうなあ・・
皆話しかけてくれるけど、そんなに深くならずに離れてっちゃうのよね。私よくマシューと話せたな。仕事としては、都合が良いけれど・・・。)
お分かりの通り、桜は自分の魅力に気付いていないし土方の妨害も気付いていない。自分に関する事はとんと無頓着なのである。
土方を少し見やればハッキリとイライラしているのがよくわかった。先程煙草へと促したのだが早々に帰ってきたのだ。どうしよ、と考えあぐねようとすればお客様、と背後で呼ばれ振り返る。
桜「・・・あら。」
山「お客様お連れ様が・・・不機嫌なんで、まじでご機嫌とれない?」
なにかと思ったらボーイに扮した退だった。これ以上あの人ここにいたら俺が殺される、と怯えている。苦笑し、私もどうしようかと思っていたの。というと土方の元へと歩いて行った。
桜「トシ」
ふんわりとほほ笑むと、土方の眉間の皺はいささか緩む。ただノープランの桜。この後の事を全く考えずに彼の元へ来てしまった。
土「・・・?どうした、董。」
逆に心配される始末。桜の頬へと手を触れる彼に、そうか。と思い桜は両手で土方の頬を包み込んだ。土方の手は桜の顔から離れ、なんだ?とまた眉間に皺が寄る。
桜「うーん。」
桜は困った顔をし、土方の頬をむにむにと触る。
土「おい、そろそろ叱るぞ。さく」
”Ladies and Gentlemen!!”
突如スピーカーから流れる声に皆が耳を傾ける。会場にいる者はよく知っているようで、ざわめき立つ。
”お待ちかねのShow Timeが始まりましたっ。さあ皆さん左手をご覧ください!”
とマイクを持った司会者が左手を指せば、マシューを引き寄せる際に先程ロックの掛かっていた側面のドアが全て開放され、ボーイ達が全てのドアを開ける。
先にはベランダから庭園へと繋がっており、会場内が少しほの暗くなればベランダから庭園の外灯が一斉につく。噴水が吹き出し、ブルーに光り輝いた。
わああ。と感嘆の声がそこかしこで聞こえ出す。
”では、皆さん、全ての扉にウエイターが控えております。お好きなカクテルをどうぞ、お申し付けください。”
土「董。・・お手を、」
桜「はい。」
手を繋いで外へと歩いていく。
ウエイター「何に、なさいますか?」
と聞かれると、土方は桜に振り返り、(手頃な、度数の低い奴選べるか?)と言われたので桜が答える。
桜「んん、そうね。オーガスタセブンとベリーニを頂けるかしら。」
ウエイター「かしこまりました。」
グラスを持ったボーイがこちらへ。と言われた場所は小さいテーブルに2人掛けの、背もたれの高いソファが用意され、皆ソファの向きが一か所の方向を向いている。
2人座ると外部への視界は遮られ、噴水とその先へ広がる庭園と夜空が広がっている。
ちら、と土方を見れば土方の表情も穏やかで、ほっとした桜はベリーニに口付けた。
土「なあ、なんでさっきあんな事しやがったんだ。」
土方は他の客から見えにくい事を確認し、いつもの口調で喋り出す。オーガスタセブンに口付け、飲みやすいな。ともう1口。
桜「あんな事っていうのは?」
土「こういう事。」
と言われ、先程桜が両頬を持ったように桜の両頬を手で挟む。ああ、と言い桜は苦笑しながら告げる。
桜「さっき、”どうした”って、言って下さったじゃないですか。」
土「あ?ああ。」
桜の意図はまだわからない。
桜「どうしたって心配してくれた時に、土方さん頬を触ってくれたから。土方さんも頬を触ったら、嫌な気持ちがおさまると、思って・・・ひじかたさん?」
土「うるさい。」
そうしてクッとオーガスタセブンを飲み干すと、ボーイを呼び、桜に似たようなのがいい。と言えば桜はボーイに告げる。飲みやすそうなのは・・・、
桜「じゃあ、アプリコットクーラー・・・?」
ボーイがそれを持ってくれば、土方はグッとオレンジ色の液体を喉に入れていく。炭酸の喉ごしもまた進みやすい。
桜のマシューを引き付ける手管だとかは、教えられたものを自分のものにしてしまうから、出来てしまう技なのだろう。
それとまた桜が自然と見せる表情は別物で。
桜が新選組に来てから、色んな表情が増えていくその様は、感情を覚え増やしていく事と変わらないものなのだろう。素直なその可愛い発想に、直球で受け取るには色んな大人を相手にしてきた捻くれたバラガキには面喰ってしまう。自分でもわかる、顔が熱い。グッとまた甘酸っぱいそのカクテルを飲み欲し、桜の方を向く。
土「あー、お前ほんと可愛いよ。」
桜「え、」
ベリーニを飲み欲し、泡を上唇につけた桜が土方の方を向いた。
2人掛けのソファはそんなに広くない。なんせこれだけの席を設けるのだ。そこまで広いものは用意しないだろう。
土方は桜のソファに置いた手に手を合わせ、桜が持ったグラスを桜に視線を合わせたままテーブルに置き、その手に指を絡ませる。すると上唇についた泡を舐めとった。舌で味わえば、
土「甘え。」
桜「!?ひじかたしゃ・・・んうっ」
驚いた桜は土方の名を呼ぶが、逆に口を開けてしまった事で熱い舌が差し入れられる。歯列をなぞられ、舌を絡めとられる。いつの間にか絡み合わせた手はそのままに、もう片方の手は後頭部を抑えて逃げられない。(それに、土方さんのキス。気持ちいい・・・・)
一瞬離れ、また深くなる口付けに、桜はされるがままになっていた。
暫くしてゆっくりと土方の体が離れる際に、2人の間につーと糸が引きプツと切れれば、桜は惚けた顔で顔を赤らめる。
桜「・・・・ど、どうなさったんですか・・・土方さん」
彼からの返事は返ってこない。心臓が忙しなく音を立てて煩い。彼の顔を見ようとすると、その瞬間ドーン!と大きな音がして、庭園の先を見れば大きな花火が上がった。何発も連続して上げられる様は噴水の水がソファに反射する。
桜「わあ・・・・」
まだ頬の赤い桜は照れながら、今度こそ彼の顔を見れば桜の目ははたと止まった。
桜「ひ、土方さん・・・・?」
土方は赤い顔をしてすやすやと眠っていた。
(ええええっ)
軽くパニックである。そうか、仮にも任務中である彼が、こんな事をするはずがないのだ。それに彼の体温がやけに熱かったのはお酒の性。お酒だって度数の低いものを選んだつもりであったが、一気に入れすぎたんだろうか。それにしても、
(・・寝顔。か、かわいい。)
・・・じゃなくて、キスを気持ちいとか、抵抗出来なかった自分のこの変なむずがゆい気持ちは、なんなのだ。
山「あ、いた。」
桜「さっ!・・・退か。」
山「何その顔。まあいいけど・・・って副長寝ちゃったの?ああ3徹に酒弱い癖に腹に入れるから・・・ちょっと、副長。」
と言って、軽く揺する。急に出て来た山崎に物凄く驚いたが来てくれて助かった。桜はほっとしているのと同時に土方のマシュー回収後にあんだけ苛立っていたのも、度数低めのカクテルにすぐ酔って寝てしまったのにも頷けた。
山崎が揺すった事により、身体が大きく傾いてしまった土方につられて桜も一緒の方向に傾いた。
山桜「「??」」
困惑すると先程キスされた時に絡ませた手がまだずっと繋がれたままだったのである。
かああと顔を赤くする桜に、山崎はふうと溜息を吐き告げる。
山「桜、あと10分弱でこの花火終わったらこれでパーティーも終わるからさ、桜が副長起こしてあげてよ。俺、ボーイじゃなくて、今度は違う恰好で車乗りつけて2人を迎えに行くからさ、」
桜「う、うん。」
じゃ、頼むね。と言い残し山崎は去ろうとする。はっと気づいた桜が山崎に告げた。
桜「待って退。」
山「ん?」
桜「あの、不可抗力でこうなっちゃったんだけど、後で言わないであげて。副長、任務中にこんななっちゃったの、絶対嫌がるはずだから。」
山「副長が羨ましいよ。・・了解。」
と言って戻って行く。桜はしばらくこのまま、温かい気持ちを胸に手をつなぎ花火を見ていた。一層盛大な花火に差し掛かってくると土方がくあっとあくびをした。
桜「土方さん?」
土「んあ?・・・寝ちまってた、みてえだ。!、・・・悪い。」
と言って桜は繋がれた手をそっと離す。
桜「いえ、大丈夫です。」
ドオン!
桜は一際大きな花火を見上げた。
ドオン!・・ドオン!
そんな桜を見ていると花火に照らされた顔は絵画の様だ。彼女はぽつりともらす。
桜「綺麗ですね。」
土「ああ。」
2人の時間は穏やかに流れていく。
***
土方は桜をエスコートしながら車に乗せると、自身も座り扉を閉めた。
運転手は勿論、スーツを着た山崎である。
ホテルを出て少し走ると緊張も解れた様で、ネクタイを緩めた。
土「あー疲れた!」
桜「あははは、確かに最後まで潜入してるのは結構堪えますね。」
山「俺はいっつもやってんですけどね!」
土「いいじゃねえか地味なんだから。俺らをみただろ。周りの連中がとっかえひっかえ来やがる。煩いったらありゃしねえ。」
桜「確かに土方さんの周りには沢山御仁がいらっしゃってましたね。」
土山「「ばーか、お前もだよ。」」
桜「・・・・?」
黒いラグジュアリーカーは、夜の道を颯爽と走っていった。
〔エンンジェルズ・キッス〕ーあなたに見惚れて
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