1章 新しい職場
あなたのお名前は?
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順調に桜は仕事を覚えていき、土方の仕事を持つ事が多くなってきた。持つ、と言っても、主に書類なのだが。
今日は桜が新選組に入って、初めての休暇をもらっていた。
桜「休み・・・と言ってもね。」
いつも通りの時間に起きている桜だったが、
アザミにいた頃も別に碌な休みをとった事がない。施設からの外出は仕事以外禁じられていたのだ。
桜は布団に転がりながら、思案する。部屋もやっと客間から予定されていた自室に移動できた。生活必需品こそあるが、特に何もない部屋は殺風景で飾りも何もない。置くつもりもない。
つまり、やらなきゃいけない事が特にないのだ。
沖「出不精。」
桜「・・・総悟。巡回じゃないの?」
沖「桜と一緒だったら出てやっても構わないですぜ。」
桜「またそういう事いう。」
まだ布団に転がりながら答える桜につかつかと歩み寄れば、纏めていないその髪で遊びだす。桜はだんだん沖田が自分に甘えてくるのをわかっていた。されるがままにしていると。
沖「安曇屋」
桜「ん?」
沖「あそこの団子屋が美味しいんでさあ。」
桜「ああ、最近できたっていう?・・・ちゃんと巡回行くなら行こうかな。」
沖「わかってまさぁ。昼辺りそこ寄るから、おめえも来い。来なかったら承知しねえからな。」
桜「ふふふ。わかった。わっ。」
桜の頭をぐしゃぐしゃにして出ていった沖田を横目で見送る。
桜「コーヒー淹れるか。」
と身支度を始めるのだった。
山「あれ、桜今日非番か。」
桜「そう。初めての非番で。お昼にお団子屋さんに行く事になったの。」
食堂は隊士が使用する朝食の時間帯では無い為、2人しかいなかった。潜入空けから帰ってきた様で、山崎の眼の下はがっつり隈が入っている。
桜「なんか、作ろうか。」
山「えっいいの!?」
思いのほか嬉しそうにしてくれたので、じゃあ退はコーヒー淹れて。と添えれば冷蔵庫から適当に取り出す。包丁のトントントントンと規則正しい音を聞いてるうちに山崎は眠くなってくる。(奥さんがいたらこんな感じなんだろうか)
するとあまり時間をかけずに桜は盆を持ってやってきた。
桜「ごめんねっおまたせ!」
と言って、フレンチトーストとサラダとベーコンのマヨネーズ炒め、ヨーグルトにフルーツをトッピングしたものを、綺麗に盛り付けられてある。
山「嬉しい―・・・有難う。」
桜「ごめんね、食堂のいつものご飯の方が沢山おかずあるだろうけどね。」
ぶんぶん横に首を振って、そんな事ないっ美味しいですっと言う。大袈裟である。今にも涙を流しそうな山崎の向かいに座り、笑いながら熱いコーヒーに口付けた。
桜「暇だから、遊ぼうかな。」
部屋に戻った桜は今手元にあるものだけで何かしようと棚を漁った。
先日取りあえず購入した着物の帯は、蝶々結びをしてアレンジする。(髪の毛はいつも一纏めにしているしな・・じゃあ。)と、片側で流す様にし、コテで巻いていく。
ふと時計を見上げれば、11時である。もうそろそろ外に出てもいい頃合いだろう。
小さな鞄を手に持ち、桜は屯所から出かけるのだった。
ここだ・・・安曇屋。最近できた人気店なだけあって、店の前に人だかりが出来ていた。
(すごいな・・・早めについてよかったよ。)並ぶのはあまり気が進まないが、総悟と約束した手前、並ばない訳にもいかない。どうやら中に入って飲食が出来るようで、年齢層も様々である。暫くすると中へ通され、テーブル席へと案内された。
お茶をお持ち致しますね。と言われ、着物にエプロンを着けた店員がはけていく。
『ついちゃったよ。25番席』と沖田に連絡し、メニューを眺めると向かいにドカッと腰を降ろされた。
桜「おそいよ総・・・ご・・・」
全然違う人だった。全然違う人が、勝手に桜のテーブル席に相席しているのだ。
桜「あ、あの・・・」
男「いやね、お姉さん。貴女があまりにも美しくて、僕もやっと並び終えて案内されたんですが、丁度空いてましたんで、相席をと。いや、団子より貴女の方が気になってしまいまして。」
なんとも勝手な男である。私の向かいが空いていたから、案内された席には座らず、勝手に相席を店員に申し付けたという訳だ。
なんて勝手な男なのだ。男は土方さん位の年齢だろうか。黒いしっかりとした生地の上から白い着物を着、片腕だけだしている彼はちらと見ると木刀をさしている。
攘夷浪士・・・には見えないかな。でも。随分怪しい。ふわふわの銀髪に、何よりもやる気の無さそうな目が特徴的で、双眼がこちらを向いている。
(どうしよう、ピン位しか武器になるものはないんだけど。この人からは殺意は感じない。)
ただ木刀を持たれているのは厄介だ。
男「ねえ、名前を聞きたいんだけど。その奥ゆかしい君を名前で呼ばせてくれないかな。」
ああ、ただのナンパかな?桜は警戒するのをやめた。比較的金を持っている者の相手をしてきた性で、こんな強引な相手のされ方は初めてである。
桜の目がふと気が抜けたのを見計らって、胸元から名刺を桜に差し出した。
男「俺、こういうのやってんだ。」
桜「万屋、ぎんちゃん。」
銀「そ。俺がオーナーの、坂田銀時っての。なあんでも承るぜ?可愛い女性なら、特に優遇しますよ。」
桜「へえ。」
銀「手も、綺麗にしてるけど、武具をちったあ使うみてえだな。」
桜「よく、お分かりで。万屋さんは、探偵さんなの?」
銀「いいや?でもよくわかるよ。あんたみたいな可愛い人、ずっと眺めちまうもん。あとっ下の名前で呼んでくれ。皆そう呼んでる。」
桜「ふふふ、強引なひと。銀時さん、ね。」
両手を取られ、自分をよく見せようとしている目の前の彼に可笑しくなってしまう。
少し和やかな空気になっていると、銀時が視界からいなくなった。
沖「オイ桜、この席は俺の席だろうが。なんで万年金欠の旦那に席を渡してんでさぁ。」
沖田である。沖田が銀時の頭を足蹴りしたのだ。
銀「いやあー税金泥棒に命も持ってかれるーっ」
沖「桜ぁ、お前旦那といつ知り合ったんでさぁ。」
桜「い、いや今初めて・・・勝手にその人が座ってきたのよ。」
全力で本当です!勝手に相席をしたのはこのでくのぼうです!という銀時に、沖田はやっと足蹴りを止めると、桜の方に座った。
(こっちに座るんだ・・・。)
不機嫌な総悟をなんとか落ち着かせ、桜はメニューにあったお団子と抹茶セットを素早く頼み、メニューがくるなりすぐ様お団子を沖田の口に突っ込んだ。
あーんと言って口に持っていくと、美味しさで多少は彼の機嫌が直り、2口目を所望してくる沖田にまた団子を持っていく。
銀「で?勤務中に女侍らせるたあいけないねえ総一郎くん。」
沖「総悟でさあ旦那。」
銀「よくこんな血の気の多い連中と、しかも勤務中に会うなんざ、随分と仲がいいじゃない」
桜「それは、」
沖「そりゃそうですぜ旦那。桜はその血の気の多い一隊士。」
銀「え・・・?」
銀時の団子が口から落ちる。汚い。
銀「ええええええ!?」
桜「ちょっと、銀時さん声大きいからっ!」
沖「新選組女隊士、知らねえんですかい?最近話題ですぜ、この女。」
銀「いや・・・TVでみたよ。写真しか載ってなかったけど、いやあ、こんな別嬪さんだとは、思わなかった。」
しげしげと眺められる。あんまりじっくり見られるのは好きじゃない。桜は苦笑を零し沖田の裾を少し摘まんだ。横目で何か感じた沖田は桜の団子を口に持っていく。
沖「桜、お前も食べなせえ。」
桜「むぐっ?・・・わあ。美味しーっ・・」
沖「だろぃ?」
そうして少し煩くなったテーブル席はお団子の美味しさに和やかな空気を取り戻していった。
銀「悪いねえ聡介君。」
沖「総悟でさあ、旦那。あんたはなから払う気なかったでしょう。」
桜「私も、ごめんね総悟」
総悟は団子屋からでると、さっさと支払いを済ませる。
沖「帰り、気いつけて帰りなせえ。」
と残し、彼は大人しく巡回に戻っていった。2人を残して。
銀「なあ、桜。帰るにはまだ時間あるんだろ?」
はい。と答えれば、彼はにんまりと笑う。
向かった先は以前行き損ねた大江戸モールだった。
桜「へえ。以外と安値でも売られているんですね。」
銀「ああ、そうだな。こういう所はあんまり来ねえのか?」
桜「はい。あまり来る機会がなくて、・・・とても新鮮です。」
沢山ショップが入ったそこは色んな人が行き交っていて、靴や帯髪の毛を着飾って、遊んでいるのがわかる。
潜入捜査の時は煌びやかなドレスを見に纏って、それなりに面白くあった。ただなんとなく身を整える物は購入したが、(コテとか、ね。)施設が全焼し、自分の物が無くなる思いをした桜は、あまり物を揃える気にはならなかった。
だからこそ、土方から贈られた浴衣は大事に大事にしているのだが。
銀「なんか品も良さそうだしな。いいトコの出そうだよな。」
桜「ははは、」
その辺は適当に頷いておく。
そして桜はあるものに目が留まった
桜「あ。」
銀「・・・・なんか気になるもんでもあんのかー?」
ふと桜が立ち止まった所は癒し系グッズとうたわれたブースである。
桜は『目元温快アイマスク』を手に取る。
銀「へえ。側近つってたか、疲れちまうよなあお前も。俺も全部やってるからなあ。」
と従業員が2人いて、まじ使えないとぺらぺら愚痴をこぼす。
そんな銀時の話に相槌を打ちつつ、桜はレジに立った。
桜「じゃあ、そんなお疲れの銀時さんにもお裾分けしますね。」
と箱を2つ持って会計を済ます。日もすっかり暮れようとしている。
夕飯は食堂で食べようと思っていた事は予め告げていた為アイマスクを1つ渡し、ではそろそろ、と別れの挨拶を告げる。
桜「本当に有難うございました。」
銀「いや、しかも土産までもらっちまって、送ってかなくて本当にいいのか?」
桜「大丈夫です。それに銀時さんにはくれーぷ、食べさせてもらっちゃったし。」
思い出して2人はくすりと笑う。団子にクレープとは、今日は大分暴飲暴食である。
銀「ああ。次は万屋にこいよ。気いつけて帰れなー」
ほくほくとした気分で帰り道を歩く。
お団子も美味しかったし、隊士でない知り合いも作る事が出来た。明日からの仕事を頑張ろうと思い、桜ももう散ってしまった通りに差し掛かる。
今思えば、あのまま銀時に送ってもらえばよかったのだ。
そして、土産をあの人に渡して、あまりみない笑顔を浮かべてもらって。そしてー
彼女の視界は暗転した。
〔楽しいオフ〕
今日は桜が新選組に入って、初めての休暇をもらっていた。
桜「休み・・・と言ってもね。」
いつも通りの時間に起きている桜だったが、
アザミにいた頃も別に碌な休みをとった事がない。施設からの外出は仕事以外禁じられていたのだ。
桜は布団に転がりながら、思案する。部屋もやっと客間から予定されていた自室に移動できた。生活必需品こそあるが、特に何もない部屋は殺風景で飾りも何もない。置くつもりもない。
つまり、やらなきゃいけない事が特にないのだ。
沖「出不精。」
桜「・・・総悟。巡回じゃないの?」
沖「桜と一緒だったら出てやっても構わないですぜ。」
桜「またそういう事いう。」
まだ布団に転がりながら答える桜につかつかと歩み寄れば、纏めていないその髪で遊びだす。桜はだんだん沖田が自分に甘えてくるのをわかっていた。されるがままにしていると。
沖「安曇屋」
桜「ん?」
沖「あそこの団子屋が美味しいんでさあ。」
桜「ああ、最近できたっていう?・・・ちゃんと巡回行くなら行こうかな。」
沖「わかってまさぁ。昼辺りそこ寄るから、おめえも来い。来なかったら承知しねえからな。」
桜「ふふふ。わかった。わっ。」
桜の頭をぐしゃぐしゃにして出ていった沖田を横目で見送る。
桜「コーヒー淹れるか。」
と身支度を始めるのだった。
山「あれ、桜今日非番か。」
桜「そう。初めての非番で。お昼にお団子屋さんに行く事になったの。」
食堂は隊士が使用する朝食の時間帯では無い為、2人しかいなかった。潜入空けから帰ってきた様で、山崎の眼の下はがっつり隈が入っている。
桜「なんか、作ろうか。」
山「えっいいの!?」
思いのほか嬉しそうにしてくれたので、じゃあ退はコーヒー淹れて。と添えれば冷蔵庫から適当に取り出す。包丁のトントントントンと規則正しい音を聞いてるうちに山崎は眠くなってくる。(奥さんがいたらこんな感じなんだろうか)
するとあまり時間をかけずに桜は盆を持ってやってきた。
桜「ごめんねっおまたせ!」
と言って、フレンチトーストとサラダとベーコンのマヨネーズ炒め、ヨーグルトにフルーツをトッピングしたものを、綺麗に盛り付けられてある。
山「嬉しい―・・・有難う。」
桜「ごめんね、食堂のいつものご飯の方が沢山おかずあるだろうけどね。」
ぶんぶん横に首を振って、そんな事ないっ美味しいですっと言う。大袈裟である。今にも涙を流しそうな山崎の向かいに座り、笑いながら熱いコーヒーに口付けた。
桜「暇だから、遊ぼうかな。」
部屋に戻った桜は今手元にあるものだけで何かしようと棚を漁った。
先日取りあえず購入した着物の帯は、蝶々結びをしてアレンジする。(髪の毛はいつも一纏めにしているしな・・じゃあ。)と、片側で流す様にし、コテで巻いていく。
ふと時計を見上げれば、11時である。もうそろそろ外に出てもいい頃合いだろう。
小さな鞄を手に持ち、桜は屯所から出かけるのだった。
ここだ・・・安曇屋。最近できた人気店なだけあって、店の前に人だかりが出来ていた。
(すごいな・・・早めについてよかったよ。)並ぶのはあまり気が進まないが、総悟と約束した手前、並ばない訳にもいかない。どうやら中に入って飲食が出来るようで、年齢層も様々である。暫くすると中へ通され、テーブル席へと案内された。
お茶をお持ち致しますね。と言われ、着物にエプロンを着けた店員がはけていく。
『ついちゃったよ。25番席』と沖田に連絡し、メニューを眺めると向かいにドカッと腰を降ろされた。
桜「おそいよ総・・・ご・・・」
全然違う人だった。全然違う人が、勝手に桜のテーブル席に相席しているのだ。
桜「あ、あの・・・」
男「いやね、お姉さん。貴女があまりにも美しくて、僕もやっと並び終えて案内されたんですが、丁度空いてましたんで、相席をと。いや、団子より貴女の方が気になってしまいまして。」
なんとも勝手な男である。私の向かいが空いていたから、案内された席には座らず、勝手に相席を店員に申し付けたという訳だ。
なんて勝手な男なのだ。男は土方さん位の年齢だろうか。黒いしっかりとした生地の上から白い着物を着、片腕だけだしている彼はちらと見ると木刀をさしている。
攘夷浪士・・・には見えないかな。でも。随分怪しい。ふわふわの銀髪に、何よりもやる気の無さそうな目が特徴的で、双眼がこちらを向いている。
(どうしよう、ピン位しか武器になるものはないんだけど。この人からは殺意は感じない。)
ただ木刀を持たれているのは厄介だ。
男「ねえ、名前を聞きたいんだけど。その奥ゆかしい君を名前で呼ばせてくれないかな。」
ああ、ただのナンパかな?桜は警戒するのをやめた。比較的金を持っている者の相手をしてきた性で、こんな強引な相手のされ方は初めてである。
桜の目がふと気が抜けたのを見計らって、胸元から名刺を桜に差し出した。
男「俺、こういうのやってんだ。」
桜「万屋、ぎんちゃん。」
銀「そ。俺がオーナーの、坂田銀時っての。なあんでも承るぜ?可愛い女性なら、特に優遇しますよ。」
桜「へえ。」
銀「手も、綺麗にしてるけど、武具をちったあ使うみてえだな。」
桜「よく、お分かりで。万屋さんは、探偵さんなの?」
銀「いいや?でもよくわかるよ。あんたみたいな可愛い人、ずっと眺めちまうもん。あとっ下の名前で呼んでくれ。皆そう呼んでる。」
桜「ふふふ、強引なひと。銀時さん、ね。」
両手を取られ、自分をよく見せようとしている目の前の彼に可笑しくなってしまう。
少し和やかな空気になっていると、銀時が視界からいなくなった。
沖「オイ桜、この席は俺の席だろうが。なんで万年金欠の旦那に席を渡してんでさぁ。」
沖田である。沖田が銀時の頭を足蹴りしたのだ。
銀「いやあー税金泥棒に命も持ってかれるーっ」
沖「桜ぁ、お前旦那といつ知り合ったんでさぁ。」
桜「い、いや今初めて・・・勝手にその人が座ってきたのよ。」
全力で本当です!勝手に相席をしたのはこのでくのぼうです!という銀時に、沖田はやっと足蹴りを止めると、桜の方に座った。
(こっちに座るんだ・・・。)
不機嫌な総悟をなんとか落ち着かせ、桜はメニューにあったお団子と抹茶セットを素早く頼み、メニューがくるなりすぐ様お団子を沖田の口に突っ込んだ。
あーんと言って口に持っていくと、美味しさで多少は彼の機嫌が直り、2口目を所望してくる沖田にまた団子を持っていく。
銀「で?勤務中に女侍らせるたあいけないねえ総一郎くん。」
沖「総悟でさあ旦那。」
銀「よくこんな血の気の多い連中と、しかも勤務中に会うなんざ、随分と仲がいいじゃない」
桜「それは、」
沖「そりゃそうですぜ旦那。桜はその血の気の多い一隊士。」
銀「え・・・?」
銀時の団子が口から落ちる。汚い。
銀「ええええええ!?」
桜「ちょっと、銀時さん声大きいからっ!」
沖「新選組女隊士、知らねえんですかい?最近話題ですぜ、この女。」
銀「いや・・・TVでみたよ。写真しか載ってなかったけど、いやあ、こんな別嬪さんだとは、思わなかった。」
しげしげと眺められる。あんまりじっくり見られるのは好きじゃない。桜は苦笑を零し沖田の裾を少し摘まんだ。横目で何か感じた沖田は桜の団子を口に持っていく。
沖「桜、お前も食べなせえ。」
桜「むぐっ?・・・わあ。美味しーっ・・」
沖「だろぃ?」
そうして少し煩くなったテーブル席はお団子の美味しさに和やかな空気を取り戻していった。
銀「悪いねえ聡介君。」
沖「総悟でさあ、旦那。あんたはなから払う気なかったでしょう。」
桜「私も、ごめんね総悟」
総悟は団子屋からでると、さっさと支払いを済ませる。
沖「帰り、気いつけて帰りなせえ。」
と残し、彼は大人しく巡回に戻っていった。2人を残して。
銀「なあ、桜。帰るにはまだ時間あるんだろ?」
はい。と答えれば、彼はにんまりと笑う。
向かった先は以前行き損ねた大江戸モールだった。
桜「へえ。以外と安値でも売られているんですね。」
銀「ああ、そうだな。こういう所はあんまり来ねえのか?」
桜「はい。あまり来る機会がなくて、・・・とても新鮮です。」
沢山ショップが入ったそこは色んな人が行き交っていて、靴や帯髪の毛を着飾って、遊んでいるのがわかる。
潜入捜査の時は煌びやかなドレスを見に纏って、それなりに面白くあった。ただなんとなく身を整える物は購入したが、(コテとか、ね。)施設が全焼し、自分の物が無くなる思いをした桜は、あまり物を揃える気にはならなかった。
だからこそ、土方から贈られた浴衣は大事に大事にしているのだが。
銀「なんか品も良さそうだしな。いいトコの出そうだよな。」
桜「ははは、」
その辺は適当に頷いておく。
そして桜はあるものに目が留まった
桜「あ。」
銀「・・・・なんか気になるもんでもあんのかー?」
ふと桜が立ち止まった所は癒し系グッズとうたわれたブースである。
桜は『目元温快アイマスク』を手に取る。
銀「へえ。側近つってたか、疲れちまうよなあお前も。俺も全部やってるからなあ。」
と従業員が2人いて、まじ使えないとぺらぺら愚痴をこぼす。
そんな銀時の話に相槌を打ちつつ、桜はレジに立った。
桜「じゃあ、そんなお疲れの銀時さんにもお裾分けしますね。」
と箱を2つ持って会計を済ます。日もすっかり暮れようとしている。
夕飯は食堂で食べようと思っていた事は予め告げていた為アイマスクを1つ渡し、ではそろそろ、と別れの挨拶を告げる。
桜「本当に有難うございました。」
銀「いや、しかも土産までもらっちまって、送ってかなくて本当にいいのか?」
桜「大丈夫です。それに銀時さんにはくれーぷ、食べさせてもらっちゃったし。」
思い出して2人はくすりと笑う。団子にクレープとは、今日は大分暴飲暴食である。
銀「ああ。次は万屋にこいよ。気いつけて帰れなー」
ほくほくとした気分で帰り道を歩く。
お団子も美味しかったし、隊士でない知り合いも作る事が出来た。明日からの仕事を頑張ろうと思い、桜ももう散ってしまった通りに差し掛かる。
今思えば、あのまま銀時に送ってもらえばよかったのだ。
そして、土産をあの人に渡して、あまりみない笑顔を浮かべてもらって。そしてー
彼女の視界は暗転した。
〔楽しいオフ〕