1章 新しい職場
あなたのお名前は?
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(全く。)
土方は桜を抱き上げたその軽さに驚いた。こんな軽い体で、一体何を抱えて生きてきたのか。
桜の情報は手合いをさせた後に多少読み進めたが、「アザミプロジェクト」という5年前から立ち上がったプロジェクトに入隊する前が、詳細不明なのである。
それに、重要機密書類でさえ名前しか書かれていない事に驚いた。
桜「ん・・・。」
苦痛にゆがむ桜はなんとかその痛みを紛らわそうと、その頭を土方に摺り寄せている。
そこで思考は止まり、心配そうに桜を見下ろせば、口から零れた酒が胸元まで濡らしていて、酒臭い。
今の桜にはより不快で堪らないだろう。
客間に着いた土方はあらかじめ桜が敷いていた布団の傍にそっと膝をつくと片手で抱きかかえ、掛け布団をめくってなるべく揺らさないようにそっと桜を座らせた。
客間に行く前に自室から適当に引っ掴んできた自身の着流しを渡し、ちょっと着てろというと一様ゆっくりと桜は頷いてみせた。
そのまますぐに部屋を出ると、そんなに時間をたたずにして土方は戻ってきた。
入るぞ、と断りを入れれば、はい。とか細い声が聞き取れた為部屋に入る。
んん・・・。と苦しそうな声を出す桜は、とりあえず浴衣を脱ぎ、土方の着流しに手を通し、前を合わせただけだった。横にはならず、布団に腰を下ろし頭が項垂れるように下がっている。
こっちが悩ましい声を上げたくなるわ、等と思いながらも、土方は桜の方へ寄ればある事に気が付いた。
(こいつ、ケガしてたのかよ!?)
包帯が胸から肩に掛けて巻いてあったのだ。
なんで言っといてくれなかったんだ。風呂入らせて、同じ包帯を巻いたのか。土方は自分の監督不行き届きに後悔した。
深手を負いながらあれだけの立ち合いをしていたのには感服するが、言わずにやり過ごしていたのは俺達が入隊に難色を示したからだろうか。
桜の事はもっと気にしてやらなくてはならない。というのが副長の頭のフォロー手帳に書き加えられる。
土「桜、悪ぃな。」
桜「すみません・・・」
土方は桜を自分の膝の上にうつ伏せに乗せ、自分の着流しを脱がせると包帯を解き、容態を見てからホットタオルで身体を拭いて、傷口に塗り薬を塗った。自分で巻いたのだろう。先程よりも綺麗に包帯を巻き直してやれば、痛みも少し緩和されたようで、桜の表情も多少和らいだ。
土「ふー・・・・・」
適当に畳まれた中から浴衣の帯をとり、肌蹴ない様にさらっと腰にとめてやる。
近くにある机に水の入ったコップを置いた。
土「ちゃんと怪我してたんなら報告してくれ。
あとは、総悟が悪い事したな、すまなかった。」
とりあえず寝ろと部屋からでようと膝を立てると
かくんっと体制が崩れる。
桜が土方の裾を持ったのだ。
桜「待って・・・・やだ、行かないで。
こわ、い。」
桜は荒い息で呼吸をしながらこわいと繰り返す。
なんだ?
今までとはまた少し違う桜に少々驚いた。
今日松平と共にみせた桜。総悟に強引に身上を吐露した桜。
それとはまた全く別物だった、彼女は酷く怯えていた。
女性として扱うべき年齢なんだろうが、今の彼女はもっと幼く、子猫のように見えた。
もうこれだけ甲斐甲斐しく世話してしまった為、最早あまり抵抗感がない。昨日の今日で悪いがな。
土方は掴まれている桜の手を取り引き寄せると、そのまま自分の胸にもたれかけさせる。首と肩の間に桜の頭を置き、頭をそっと撫で始めた。
震えていた手はゆっくりとだが落ち着き、暫くすれば頭がカクンと揺れた。眠りに落ちたらしい。
(明日酒が残ってなきゃいいんだが・・・・一升瓶の中身は殆ど入っちゃいなかった。
総悟の顔も赤らんでて、あいつもあれをどれ程飲んでから飲ませやがったわからないが、まああまりいい期待はできねえな)
土方は天井を向いて息を吐く。
俺も総悟もそんなにかわりゃしねえ。と、土方は思うのだった。
こうして世話をしているのも、彼女が抱えて出せない表情を本音をそのまま見たかったというのが土方自身の思いだった。
日頃捻くれた奴の相手をしている性でより閉ざす心をこじ開けたかったのか、はたまた宴前の可愛らしい素振りをまた見たかったからなのか。
総悟が桜に荒い接し方をした分、強行的に彼女の口から今の心境を吐露させたのだが。
受け答えからして、桜は総悟の思惑にそんな考えがあったとは思っちゃいないだろう。
明日の事を考えると、先が思いやられる。
そっと桜を布団に寝かせ、きちんとかけ布団をかけてやったあと、客間から出ていくのだった。
〔垣間見える〕
土方は桜を抱き上げたその軽さに驚いた。こんな軽い体で、一体何を抱えて生きてきたのか。
桜の情報は手合いをさせた後に多少読み進めたが、「アザミプロジェクト」という5年前から立ち上がったプロジェクトに入隊する前が、詳細不明なのである。
それに、重要機密書類でさえ名前しか書かれていない事に驚いた。
桜「ん・・・。」
苦痛にゆがむ桜はなんとかその痛みを紛らわそうと、その頭を土方に摺り寄せている。
そこで思考は止まり、心配そうに桜を見下ろせば、口から零れた酒が胸元まで濡らしていて、酒臭い。
今の桜にはより不快で堪らないだろう。
客間に着いた土方はあらかじめ桜が敷いていた布団の傍にそっと膝をつくと片手で抱きかかえ、掛け布団をめくってなるべく揺らさないようにそっと桜を座らせた。
客間に行く前に自室から適当に引っ掴んできた自身の着流しを渡し、ちょっと着てろというと一様ゆっくりと桜は頷いてみせた。
そのまますぐに部屋を出ると、そんなに時間をたたずにして土方は戻ってきた。
入るぞ、と断りを入れれば、はい。とか細い声が聞き取れた為部屋に入る。
んん・・・。と苦しそうな声を出す桜は、とりあえず浴衣を脱ぎ、土方の着流しに手を通し、前を合わせただけだった。横にはならず、布団に腰を下ろし頭が項垂れるように下がっている。
こっちが悩ましい声を上げたくなるわ、等と思いながらも、土方は桜の方へ寄ればある事に気が付いた。
(こいつ、ケガしてたのかよ!?)
包帯が胸から肩に掛けて巻いてあったのだ。
なんで言っといてくれなかったんだ。風呂入らせて、同じ包帯を巻いたのか。土方は自分の監督不行き届きに後悔した。
深手を負いながらあれだけの立ち合いをしていたのには感服するが、言わずにやり過ごしていたのは俺達が入隊に難色を示したからだろうか。
桜の事はもっと気にしてやらなくてはならない。というのが副長の頭のフォロー手帳に書き加えられる。
土「桜、悪ぃな。」
桜「すみません・・・」
土方は桜を自分の膝の上にうつ伏せに乗せ、自分の着流しを脱がせると包帯を解き、容態を見てからホットタオルで身体を拭いて、傷口に塗り薬を塗った。自分で巻いたのだろう。先程よりも綺麗に包帯を巻き直してやれば、痛みも少し緩和されたようで、桜の表情も多少和らいだ。
土「ふー・・・・・」
適当に畳まれた中から浴衣の帯をとり、肌蹴ない様にさらっと腰にとめてやる。
近くにある机に水の入ったコップを置いた。
土「ちゃんと怪我してたんなら報告してくれ。
あとは、総悟が悪い事したな、すまなかった。」
とりあえず寝ろと部屋からでようと膝を立てると
かくんっと体制が崩れる。
桜が土方の裾を持ったのだ。
桜「待って・・・・やだ、行かないで。
こわ、い。」
桜は荒い息で呼吸をしながらこわいと繰り返す。
なんだ?
今までとはまた少し違う桜に少々驚いた。
今日松平と共にみせた桜。総悟に強引に身上を吐露した桜。
それとはまた全く別物だった、彼女は酷く怯えていた。
女性として扱うべき年齢なんだろうが、今の彼女はもっと幼く、子猫のように見えた。
もうこれだけ甲斐甲斐しく世話してしまった為、最早あまり抵抗感がない。昨日の今日で悪いがな。
土方は掴まれている桜の手を取り引き寄せると、そのまま自分の胸にもたれかけさせる。首と肩の間に桜の頭を置き、頭をそっと撫で始めた。
震えていた手はゆっくりとだが落ち着き、暫くすれば頭がカクンと揺れた。眠りに落ちたらしい。
(明日酒が残ってなきゃいいんだが・・・・一升瓶の中身は殆ど入っちゃいなかった。
総悟の顔も赤らんでて、あいつもあれをどれ程飲んでから飲ませやがったわからないが、まああまりいい期待はできねえな)
土方は天井を向いて息を吐く。
俺も総悟もそんなにかわりゃしねえ。と、土方は思うのだった。
こうして世話をしているのも、彼女が抱えて出せない表情を本音をそのまま見たかったというのが土方自身の思いだった。
日頃捻くれた奴の相手をしている性でより閉ざす心をこじ開けたかったのか、はたまた宴前の可愛らしい素振りをまた見たかったからなのか。
総悟が桜に荒い接し方をした分、強行的に彼女の口から今の心境を吐露させたのだが。
受け答えからして、桜は総悟の思惑にそんな考えがあったとは思っちゃいないだろう。
明日の事を考えると、先が思いやられる。
そっと桜を布団に寝かせ、きちんとかけ布団をかけてやったあと、客間から出ていくのだった。
〔垣間見える〕