1章 新しい職場
あなたのお名前は?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
山「ふくちょおーーっ」
土「あ゛ぁ?」
桜「?」
みっともない声で出て来た彼を土方は威嚇して窘める。(ううう、)と尻込みしながら山崎は桜の前で二言三言会話をする。
そして桜の前で話していた彼は会話を切って、土方の横からひょこっと顔をだした。
山「桜ちゃん、だよね。新選組監察方の山崎退です。宜しくね。
桜「はい、宜しくお願い致します。」
土「・・・・桜、悪ぃな。お前の部屋用意出来なかったらしい。暫く来客なんかがくるまでは寝るのは客間でいいか?
荷は申し訳ねえが、俺の部屋に入れる。」
桜「は、はい。構いません。前の部署のものは無いですし、必需品程度ですから。」
そして3人は土方の部屋の前に立ち、土方だけが部屋へ入っていくと、バスタオルと桜が持ってきた風呂敷を持って現れた。
土「ほい。客間はさっきお前がとっつぁんと最初に入った場所だ。
俺の部屋はここ。お前はとりあえず風呂入って来い。
終わったら客間にいろ。宴が始まる時に迎えに行く。」
桜は目を大きくさせた
桜「土方さん、でも仕事は、」
土「あぁ?まだ仕事してえのか。」
山崎は乾いた笑い声を出し、桜の背を押して風呂場へと足を運ばせた。
桜「あの、山崎さん。」
山「ん?」
桜「宜しかったんでしょうか、その。」
仕事をすると思っていたのだ。土方の今の話であれば、宴が始まるまで客間にいろという事だ。
山崎あはは、と苦笑しながらしゃべりだす。
山「副長はそんなに怖い人じゃないですよ。
今日突然ここに就かれた貴女をあれでも出来る限りもてなしてるんです。
これ、風呂あがったら使って下さい。」
そうして手に渡されたものは浴衣だった。
紺色に白の撫子が描かれていて、鶯色の帯のコントラストが綺麗に映える。
綺麗な浴衣に桜は思わず惚けてしまう。
桜「あ、ありがとう、ございます。」
嬉しそうに笑顔を山崎に向ける桜に山崎は照れながら
山「ははは。嬉しいけど副長に言ってあげたら喜ぶと思うよ。これは副長の手配だから、俺は言われた場所に行って受け取りに行っただけだからね。
さあここだよ、行っておいで。」
そういって風呂場の前まで山崎は案内した後、ひらひら手を振って走って行った。
桜「・・・・・」
お風呂から上がり客間に入ると、布団が一式用意されていた。
至れり尽くせりとはこの事である。
大方土方さんか山崎さん辺りが手配してくれたのだろう。
客間なだけあり、掛軸や池花が飾られているのが今頃気付くのは、自分で気づいていない所で緊張していたのだろう。
布団を広げ寝転がってみると、ふんわりと柔軟剤のいい香りがする。
(それに、まだ左肩の傷口が痛む。)
3日前に出来た切り傷はまだ癒えていなかった。それもそうだ、尋問時の拷問だ。痛がれば痛がる分だけ尋問官には好都合である。
新選組幹部にも、上手い事ばれていなかったし、手合わせも後手に回る事でそこまで負担はなかった。
痛む肩を紛らわせる為、桜はおもむろに庭に下りる事にした。客間の前の庭はやはり眺めがよく、一本の桜の木が、風に揺れている。
桜の木の枝は手の届く所まで降りており、思わず花びらに触れる。
(これは・・・)
桜「御車返し。(みぐるまがえし)」
土「おう。よく知ってんじゃねえか。」
急に言葉を掛けられ肩を揺らして振り返る。
土「ん?脅かしちまったか?。」
と片眉を上げて言いながら、彼は縁側を歩いてくる。
紫煙をくゆらせ隊服とは変わり、着流しを着た土方も風呂をすませたのだろうか。
着流しは黒よりの着物に掛襟だけ白に近いグレーのものを着用し深緑色の羽織を肩にかけていた。地味な色合いではあるが整った顔の彼にはとても似合っている。
(ああ成る程、だから彼が。)
浴衣の手配をしてくれたと言っていたが、配色等も彼が選んでくれたのだろう。
桜「有難うございます。浴衣。他にも沢山、動いてくださっているのでしょう?。」
土方に見せる様にたもとを持ち腕を少し広げた。
土方はそんな桜の可愛らしい様子に驚き少しだけ目を大きくさせる。
ここに来てからというものの、桜は殆ど最低限の事しかしゃべっていない。話した事といや、とっつぁんへ迷惑を掛けまいとして多少熱が入ったくれえだ。
無骨な奴かと思いきや、存外、こいつは年相応の女なのかもしれねえ。
桜が何も返してこない土方の方を向けば、ぶっきらぼうにさあなと答えた。
土「お前は、今日はただ祝われてろ。
明日からは、忙しくなるだろうしな。」
と言い、春の夜風に揺れる御車返しを見やる。
桜「御車返し。園芸品種の一種ですね。古来より名桜と謳われたこの桜は、一樹に八重と一重の花を持つ。
平安時代初め嵯峨天皇はあまりの美しさに2度3度と車を引き返しては見事に咲く花を眺めたという逸話から名付けられたものだとか。」
土「・・・ああ。京都の神社ではその嵯峨天皇の田村麻呂との縁を授けてくれたように、ご縁が多くおとずれるようにとしたとか、な。
その話をしたら近藤さんがここを客間にしたんだよ。会う人々に良縁をってな。
まあ今日みたいな破天荒な御仁ばかり来るんだが。」
と言って松平の事を思い出したのだろう、こめかみに手をあてて溜息を零す。
駄々漏れる疲弊具合に桜は苦笑をこぼすが、近藤の話をした時の嬉しそうな土方を見て、本当に新選組のトップの近藤をを心から敬愛しているのだなと感じとれた。だがきっとそんな事を口にしてはこの御仁は照れ隠しで閉口してしまう気がして。
桜はにこりとほほえんで縁側に腰かけた。
土「・・・っていうか話し込んじまったな。
冷えねえのか?」
と言われれば、確かに少し冷えてしまったようで。
土方は桜を小突くと肩にかけていた羽織を桜にかける。
土「少々大きいだろうが、我慢しろ。」
桜「すみません、有難うございます。」
土「構わねえ。そろそろ行くぞ。」
それは、春の夜風が花びらを連れて来て。
貴方に御縁をくれたのです。
〔御車返し〕
土「あ゛ぁ?」
桜「?」
みっともない声で出て来た彼を土方は威嚇して窘める。(ううう、)と尻込みしながら山崎は桜の前で二言三言会話をする。
そして桜の前で話していた彼は会話を切って、土方の横からひょこっと顔をだした。
山「桜ちゃん、だよね。新選組監察方の山崎退です。宜しくね。
桜「はい、宜しくお願い致します。」
土「・・・・桜、悪ぃな。お前の部屋用意出来なかったらしい。暫く来客なんかがくるまでは寝るのは客間でいいか?
荷は申し訳ねえが、俺の部屋に入れる。」
桜「は、はい。構いません。前の部署のものは無いですし、必需品程度ですから。」
そして3人は土方の部屋の前に立ち、土方だけが部屋へ入っていくと、バスタオルと桜が持ってきた風呂敷を持って現れた。
土「ほい。客間はさっきお前がとっつぁんと最初に入った場所だ。
俺の部屋はここ。お前はとりあえず風呂入って来い。
終わったら客間にいろ。宴が始まる時に迎えに行く。」
桜は目を大きくさせた
桜「土方さん、でも仕事は、」
土「あぁ?まだ仕事してえのか。」
山崎は乾いた笑い声を出し、桜の背を押して風呂場へと足を運ばせた。
桜「あの、山崎さん。」
山「ん?」
桜「宜しかったんでしょうか、その。」
仕事をすると思っていたのだ。土方の今の話であれば、宴が始まるまで客間にいろという事だ。
山崎あはは、と苦笑しながらしゃべりだす。
山「副長はそんなに怖い人じゃないですよ。
今日突然ここに就かれた貴女をあれでも出来る限りもてなしてるんです。
これ、風呂あがったら使って下さい。」
そうして手に渡されたものは浴衣だった。
紺色に白の撫子が描かれていて、鶯色の帯のコントラストが綺麗に映える。
綺麗な浴衣に桜は思わず惚けてしまう。
桜「あ、ありがとう、ございます。」
嬉しそうに笑顔を山崎に向ける桜に山崎は照れながら
山「ははは。嬉しいけど副長に言ってあげたら喜ぶと思うよ。これは副長の手配だから、俺は言われた場所に行って受け取りに行っただけだからね。
さあここだよ、行っておいで。」
そういって風呂場の前まで山崎は案内した後、ひらひら手を振って走って行った。
桜「・・・・・」
お風呂から上がり客間に入ると、布団が一式用意されていた。
至れり尽くせりとはこの事である。
大方土方さんか山崎さん辺りが手配してくれたのだろう。
客間なだけあり、掛軸や池花が飾られているのが今頃気付くのは、自分で気づいていない所で緊張していたのだろう。
布団を広げ寝転がってみると、ふんわりと柔軟剤のいい香りがする。
(それに、まだ左肩の傷口が痛む。)
3日前に出来た切り傷はまだ癒えていなかった。それもそうだ、尋問時の拷問だ。痛がれば痛がる分だけ尋問官には好都合である。
新選組幹部にも、上手い事ばれていなかったし、手合わせも後手に回る事でそこまで負担はなかった。
痛む肩を紛らわせる為、桜はおもむろに庭に下りる事にした。客間の前の庭はやはり眺めがよく、一本の桜の木が、風に揺れている。
桜の木の枝は手の届く所まで降りており、思わず花びらに触れる。
(これは・・・)
桜「御車返し。(みぐるまがえし)」
土「おう。よく知ってんじゃねえか。」
急に言葉を掛けられ肩を揺らして振り返る。
土「ん?脅かしちまったか?。」
と片眉を上げて言いながら、彼は縁側を歩いてくる。
紫煙をくゆらせ隊服とは変わり、着流しを着た土方も風呂をすませたのだろうか。
着流しは黒よりの着物に掛襟だけ白に近いグレーのものを着用し深緑色の羽織を肩にかけていた。地味な色合いではあるが整った顔の彼にはとても似合っている。
(ああ成る程、だから彼が。)
浴衣の手配をしてくれたと言っていたが、配色等も彼が選んでくれたのだろう。
桜「有難うございます。浴衣。他にも沢山、動いてくださっているのでしょう?。」
土方に見せる様にたもとを持ち腕を少し広げた。
土方はそんな桜の可愛らしい様子に驚き少しだけ目を大きくさせる。
ここに来てからというものの、桜は殆ど最低限の事しかしゃべっていない。話した事といや、とっつぁんへ迷惑を掛けまいとして多少熱が入ったくれえだ。
無骨な奴かと思いきや、存外、こいつは年相応の女なのかもしれねえ。
桜が何も返してこない土方の方を向けば、ぶっきらぼうにさあなと答えた。
土「お前は、今日はただ祝われてろ。
明日からは、忙しくなるだろうしな。」
と言い、春の夜風に揺れる御車返しを見やる。
桜「御車返し。園芸品種の一種ですね。古来より名桜と謳われたこの桜は、一樹に八重と一重の花を持つ。
平安時代初め嵯峨天皇はあまりの美しさに2度3度と車を引き返しては見事に咲く花を眺めたという逸話から名付けられたものだとか。」
土「・・・ああ。京都の神社ではその嵯峨天皇の田村麻呂との縁を授けてくれたように、ご縁が多くおとずれるようにとしたとか、な。
その話をしたら近藤さんがここを客間にしたんだよ。会う人々に良縁をってな。
まあ今日みたいな破天荒な御仁ばかり来るんだが。」
と言って松平の事を思い出したのだろう、こめかみに手をあてて溜息を零す。
駄々漏れる疲弊具合に桜は苦笑をこぼすが、近藤の話をした時の嬉しそうな土方を見て、本当に新選組のトップの近藤をを心から敬愛しているのだなと感じとれた。だがきっとそんな事を口にしてはこの御仁は照れ隠しで閉口してしまう気がして。
桜はにこりとほほえんで縁側に腰かけた。
土「・・・っていうか話し込んじまったな。
冷えねえのか?」
と言われれば、確かに少し冷えてしまったようで。
土方は桜を小突くと肩にかけていた羽織を桜にかける。
土「少々大きいだろうが、我慢しろ。」
桜「すみません、有難うございます。」
土「構わねえ。そろそろ行くぞ。」
それは、春の夜風が花びらを連れて来て。
貴方に御縁をくれたのです。
〔御車返し〕