1章 新しい職場
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桜「ぐううう、」
桜は左肩の痛みで目を覚ました。傷口を抉られたのだ。正座させられ、目を凝らすと自分の他にも尋問されている同僚が何人かいた。焼けたような臭いと、鉄の臭いがし眉間に皺がよる。傷口に痛みを堪えつつ、頭を回転させる。
桜は死んだと思っていた。それがまだ生きている。尋問されているという事は、まだ何か必要な情報が手に入っていないのだろう。ここはもう車内ではなかった。ここは何度も足を運んだ幕府の庭である。
ーそれから数時間が経った。
定「まだ割らんか!」
スパン!と切れのいい音を上げしびれを切らした定定公が入ってくる。
尋問官と尋問されている連中も頭を下げる。そう、私達は今の今まで幕府に服従しているのだから、なんなのだ。真実を何度言っても聞く耳を持たない。何故反逆者呼ばわりさせられているのだ。
定「・・・・もういい、やれ。全員反逆罪で死刑を言い渡す。定定自らな。」
と言い終わるや否や、定定の左側の障子戸から人が入ってきた。
徳川茂茂、現将軍である。
後ろには煙草をふかせた松平片栗虎と、物凄い勢いで携帯に何か打ち込んでいる佐々木異三郎が傍らにいた。
茂「叔父上、尋問はもう結構です。その者達は本当に幕府の為動いていただけです。」
定「なにィ?これは先日の幕府の上客の1件は、もう裏がとれているのだぞ!」
佐々木異三郎が口を開いた。
佐「その裏とこの裏。エリートが調べさせていただきました。ええ、エリートですから。先週の事件、こんなに早く証人を出すのは幕府が動いても本来であればいささか難しい。
ましてやアザミプロジェクトで動いてもらっている彼らが動く事は、跡が残らないようにする事が本職の様なもの。
アザミは足がつかめない。定定殿も阿部殿もそこを利用されたのではないでしょうか。」
定「佐々木、・・・何がいいたい。」
そもそも、一ツ橋の犬がなぜ茂茂に加担するのだ。
佐「うちの副官は有能でしてね。前職の経験からあるコネがあったようで、調べたんですよ。落ちた一隻の艦隊の血痕から、天照院奈落に所属する血液反応。そして先週の艦隊襲撃事件の翌日から、2名そちらで欠員がでているではありませんか。」
佐々木は携帯に『今だお。』と隣の部屋で控えていた見廻り組の隊士が現れ佐々木の話していた血液反応と奈落一派が欠員してる証拠を持ってくる。
定「!、・・・こんなもの、でっちあげにすぎん。儂が押さえたものも事実に変わりはないからな、こやつらに制裁を与えるのは変わらん。」
定定の顔が怒りで赤く染まる。強行的に今すぐにでもアザミを一掃する様な言い振りだ。もう1つ口を開けようとした後ろに、御徒士組の恰好にでかい数珠をつけた男が音も無く現れた。そう、彼こそが佐々木の話していた要になる天照院奈落の首領、朧である。
朧「殿。」
そう言うと、片腕に持っていたものをごろんと投げた。人、と認識した時点で桜は思わず叫んでしまった。
桜「阿部様! あ゛ぁッ!!」
桜は問答無用で頭を地面に押さえつけられた。痛みで身動きが取れないが、阿部正正で間違いなかった。朧は桜をちら、と横目で見やったあと定定に視線を寄越す。
朧「アザミという組織、身元までもが足がつかない様になっております。」
定「そうであれば、消してしまっても丁度よかろう。」
朧「いえ、アザミプロジェクトで構成された用人達、天導衆とコンタクトのあった天人から譲られた、所謂献上品。」
定「!何・・・もしやあの件の輩達だと申すのか。」
茂「叔父上、今回の件、私達で話合いましょう。いささか不明な点が多すぎましょう。国の為に動いてくれている者達を証拠不十分のまま処断するのは、私も納得がいかぬというもの。」
定「・・・・・ああ、追って沙汰を下そう。但し、今まで通りに出来ると思うなよ。」
朧を従えて定定は部屋をでていった。
茂茂は尋問官達を止め、縄を解く様に命じた。
茂「皆、よく耐えてくれた。これ以上、その命みだりに散らす事は余が許さん。沙汰が下るまで、一滴も血を流すな。そして阿部殿、よく持ってくれた。」
ボロボロになっている阿部に茂茂は座り語りかける。
佐々木は自分の隊士に指示を打ち、阿部を救護室へ送る段取りをする。
阿「茂茂様。民を守るのが私達の仕事ですからねえ、アザミの部隊は全員定定様が天導衆から譲り受けた足のつかない民さ。胡麻擦ってんだから、あっちからの手だしはされにくいと踏んでたんでね。まあこの後はどうなるかはわかりゃしませんが・・・。」
佐「さすが阿部殿。見聞の広い貴方だからこそ、被害を最小限に出来たのでしょう。早速お近づきのしるしにメル友になりましょう。」
と言われながら、阿部は佐々木もろとも見廻り組の隊士に救護室へと運ばれていくのだった。
定定は5年前。イメージアップを図り、春雨艦隊から拉致された日本人を奪還した事を大きく謳っている。表向きは日本の民としては大健闘であるが、実際は天導衆からの贈り物として献上された民だった。幕府の上層部は周知の事実であるが、それを良いように定定が政治の道具として使ったのだ。
癒着がすぎる彼からすると、アザミプロジェクトの要員を一掃させるのはよもや具合が悪いだろう。阿部はそこまで見越して今回国家諜報員という位置につけたのだ。
〔奇劇〕
桜は左肩の痛みで目を覚ました。傷口を抉られたのだ。正座させられ、目を凝らすと自分の他にも尋問されている同僚が何人かいた。焼けたような臭いと、鉄の臭いがし眉間に皺がよる。傷口に痛みを堪えつつ、頭を回転させる。
桜は死んだと思っていた。それがまだ生きている。尋問されているという事は、まだ何か必要な情報が手に入っていないのだろう。ここはもう車内ではなかった。ここは何度も足を運んだ幕府の庭である。
ーそれから数時間が経った。
定「まだ割らんか!」
スパン!と切れのいい音を上げしびれを切らした定定公が入ってくる。
尋問官と尋問されている連中も頭を下げる。そう、私達は今の今まで幕府に服従しているのだから、なんなのだ。真実を何度言っても聞く耳を持たない。何故反逆者呼ばわりさせられているのだ。
定「・・・・もういい、やれ。全員反逆罪で死刑を言い渡す。定定自らな。」
と言い終わるや否や、定定の左側の障子戸から人が入ってきた。
徳川茂茂、現将軍である。
後ろには煙草をふかせた松平片栗虎と、物凄い勢いで携帯に何か打ち込んでいる佐々木異三郎が傍らにいた。
茂「叔父上、尋問はもう結構です。その者達は本当に幕府の為動いていただけです。」
定「なにィ?これは先日の幕府の上客の1件は、もう裏がとれているのだぞ!」
佐々木異三郎が口を開いた。
佐「その裏とこの裏。エリートが調べさせていただきました。ええ、エリートですから。先週の事件、こんなに早く証人を出すのは幕府が動いても本来であればいささか難しい。
ましてやアザミプロジェクトで動いてもらっている彼らが動く事は、跡が残らないようにする事が本職の様なもの。
アザミは足がつかめない。定定殿も阿部殿もそこを利用されたのではないでしょうか。」
定「佐々木、・・・何がいいたい。」
そもそも、一ツ橋の犬がなぜ茂茂に加担するのだ。
佐「うちの副官は有能でしてね。前職の経験からあるコネがあったようで、調べたんですよ。落ちた一隻の艦隊の血痕から、天照院奈落に所属する血液反応。そして先週の艦隊襲撃事件の翌日から、2名そちらで欠員がでているではありませんか。」
佐々木は携帯に『今だお。』と隣の部屋で控えていた見廻り組の隊士が現れ佐々木の話していた血液反応と奈落一派が欠員してる証拠を持ってくる。
定「!、・・・こんなもの、でっちあげにすぎん。儂が押さえたものも事実に変わりはないからな、こやつらに制裁を与えるのは変わらん。」
定定の顔が怒りで赤く染まる。強行的に今すぐにでもアザミを一掃する様な言い振りだ。もう1つ口を開けようとした後ろに、御徒士組の恰好にでかい数珠をつけた男が音も無く現れた。そう、彼こそが佐々木の話していた要になる天照院奈落の首領、朧である。
朧「殿。」
そう言うと、片腕に持っていたものをごろんと投げた。人、と認識した時点で桜は思わず叫んでしまった。
桜「阿部様! あ゛ぁッ!!」
桜は問答無用で頭を地面に押さえつけられた。痛みで身動きが取れないが、阿部正正で間違いなかった。朧は桜をちら、と横目で見やったあと定定に視線を寄越す。
朧「アザミという組織、身元までもが足がつかない様になっております。」
定「そうであれば、消してしまっても丁度よかろう。」
朧「いえ、アザミプロジェクトで構成された用人達、天導衆とコンタクトのあった天人から譲られた、所謂献上品。」
定「!何・・・もしやあの件の輩達だと申すのか。」
茂「叔父上、今回の件、私達で話合いましょう。いささか不明な点が多すぎましょう。国の為に動いてくれている者達を証拠不十分のまま処断するのは、私も納得がいかぬというもの。」
定「・・・・・ああ、追って沙汰を下そう。但し、今まで通りに出来ると思うなよ。」
朧を従えて定定は部屋をでていった。
茂茂は尋問官達を止め、縄を解く様に命じた。
茂「皆、よく耐えてくれた。これ以上、その命みだりに散らす事は余が許さん。沙汰が下るまで、一滴も血を流すな。そして阿部殿、よく持ってくれた。」
ボロボロになっている阿部に茂茂は座り語りかける。
佐々木は自分の隊士に指示を打ち、阿部を救護室へ送る段取りをする。
阿「茂茂様。民を守るのが私達の仕事ですからねえ、アザミの部隊は全員定定様が天導衆から譲り受けた足のつかない民さ。胡麻擦ってんだから、あっちからの手だしはされにくいと踏んでたんでね。まあこの後はどうなるかはわかりゃしませんが・・・。」
佐「さすが阿部殿。見聞の広い貴方だからこそ、被害を最小限に出来たのでしょう。早速お近づきのしるしにメル友になりましょう。」
と言われながら、阿部は佐々木もろとも見廻り組の隊士に救護室へと運ばれていくのだった。
定定は5年前。イメージアップを図り、春雨艦隊から拉致された日本人を奪還した事を大きく謳っている。表向きは日本の民としては大健闘であるが、実際は天導衆からの贈り物として献上された民だった。幕府の上層部は周知の事実であるが、それを良いように定定が政治の道具として使ったのだ。
癒着がすぎる彼からすると、アザミプロジェクトの要員を一掃させるのはよもや具合が悪いだろう。阿部はそこまで見越して今回国家諜報員という位置につけたのだ。
〔奇劇〕