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ある晴れた日、七子 はサイクリングに来ていた。
走っていた道は山道でもなく、森の中でもなかった。ただの市街地。
市街地の中にある公園で休憩をしていた。
「もうちょっと遠くまで行こうかな…」
心地よい風が秋を感じさせる。
まるで、もうひとっ走り行こうよと風が誘っているようだ。
ブランコを降り、そばに置いてある自転車へと向かう。
と、突然の立ち眩みに、思わずしゃがみ頭を抱える。
強烈な頭痛と吐き気に襲われ、目を閉じ歯を食いしばる。
しばらくすると頭痛が和らぎ、何とか立てるくらいまで回復した。
いったい何だったんだろうと顔を上げると、さっきまでいた公園とは違う、鬱蒼をした森の中にいた。
「ここどこ…?」
ぼんやりとつぶやいた声がしんとした森に吸い込まれた。
周りを見渡してもブランコも乗ってきた自転車もない。
ただの森の中にいた。
ガサガサッ
遠くから歩いているような音がした。
ここにい続けてはいけない、と何かが頭に訴えてくるような気がした。
(逃げなきゃ…でもどこに?)
ここがどこかなんてわからないのに、その場から移動するだなんて帰ってこられるのかがわからない。
でもここで立ち止まっているのは危ないと、警告が止まない。
仕方なく物音から離れた方向へと歩くしかなかった。
歩いていると何か走り書きがされている紙を見つけた。
「Slen…man?読めない…。」
なぜか黒く塗りつぶされており、何が書かれているかはわからない。
その代わりなのか、異様に細長いスーツ姿の人のような落書きが描いてあった。
―――気味が悪い
黒く塗りつぶされた文字になんて書いてあったのか。
気にはなるものの、それよりもスーツ姿の人の落書きの方が気になった。
ザザザッ
ノイズのような音が突然頭に響いた。不快な音に眉をしかめ、辺りを見渡す。
誰もいないじゃないかと正面を向いた瞬間、鼻血が垂れてきた。
思わず後ろを向く。
細長いスーツ姿の人型…一瞬だが視認した。
きっとこの紙を書いた人は、これを警告して書いたのだろう。
走ってその場から離れる。あたりが暗くなってきた。ついさっきまで昼だったのに。
血がお気に入りのハンカチについてしまったが仕方ない。今はそんなことを気にしている余裕なんてなかった。
(逃げなきゃ…。でも一体どこへ?)
どこまで逃げ続ければいいのかわからない上、夜の森なんて歩きたくなかった。
手掛かりなんて、さっき拾った紙しかない。
「そういえばこの紙…8分の1って書かれているけれどなんだろう」
不気味な人の落書きの下に、小さく”1/8”と書かれていた。
――同じような紙があと7枚…でも8枚そろえたらどうなるの…?
混乱している頭で必死に考えようにも、解決法なんて浮かばない。
浮かぶのはただの不安だけだった。
首を横に振り、不安をかき消す。
今はただ、この紙を探すことだけに集中しよう。
そう決意をし、歩き始めた。
…
すっかり日は沈み、辺りは真っ暗だった。
不幸中の幸いか、2枚目の紙の下に懐中電灯が落ちていた。誰のかわからないし、使っていいのかわからないけれど、今はそんなことを気にしてられなかった。
懐中電灯が着くことを確認し、残りの紙を探しに歩き回っていた。
「あった。あと1枚…。」
―足はもうくたくたでもうその場にしゃがんでいたい。
――家に帰って、温かいココアを飲みたい…。
あと1枚見つける、不安の中確定的ではない手掛かりを頼りに紙を探していたがもう体も心も限界だった。
顔は涙と鼻血でぐしゃぐしゃだった。
拭うハンカチも湿っている。とても気持ち悪い。
ふらふらとした足取りで、ただひたすら前に進むしかなかった。
「!」
ノイズが走った。何かが、何かがいる。
歯を食いしばり、走るしかなかった。懐中電灯で周囲を照らす余裕なんかなかった。
「ヒッ」
真横に何か黒い腕のようなものが手を伸ばしてきた。無理に避けようとし、転んでしまった。運良く落ち葉の上に転んでしまっただけだったのであまり痛くはない。
そんなことを気にしている余裕はなかった。
起き上がるにも足に力が入らない。腕の方向を見ないように顔を伏せながら、必死に後退りをし、距離をとる。ぐしゃぐしゃの紙を握りしめながら、距離をとるのに夢中になっていた。
ドン、と木にぶつかった。
何かはそこにいないのか、ノイズはしないし鼻血もいつの間にか止まっていた。
背中の痛みに少し涙ぐみながら後ろの木を見上げる。
「あ、あった…」
木に8枚目の紙が貼ってあった。
必死に木にしがみつきながら立ち上がり、8枚目に手を伸ばす。
その瞬間、肩に何かが触れた気がした。人ではないのははっきりとわかる。気にしないように、あと一枚…あと少しで手が届くのに…と必死に見ないようにと涙ぐみながら耐え、手を伸ばそうとすると再びぬちゃっと湿った何かが肩に触れた。
「な、なんでしょうか」
けほけほと、血が混じった咳が出る。
あと少しで届く手も、湿った何かに手もつかまれてしまい、動かせない。
鼻血が口元まで垂れてきたのだろう。口で呼吸をしようとすると鼻血が口に入ってきてとても気持ちが悪い。
『 』
ノイズとは違う、何かが耳元に聞こえた。
何を言っているかはわからない。けれどその何かは、私に8枚目の紙を取らせるつもりはないことは分かった。
細い指のような何かが顔を包み込み、視界を真っ暗へと誘った。
同時にぬめぬめとした何かが、逃げようとする私を温かく、そして優しく包み込んだのだった。
___________
2018.10.02
細長い男のお話。
クリアはできてません。ホラゲできません!
所説では友達が欲しいから追いかけるとかありますが、果たして。
走っていた道は山道でもなく、森の中でもなかった。ただの市街地。
市街地の中にある公園で休憩をしていた。
「もうちょっと遠くまで行こうかな…」
心地よい風が秋を感じさせる。
まるで、もうひとっ走り行こうよと風が誘っているようだ。
ブランコを降り、そばに置いてある自転車へと向かう。
と、突然の立ち眩みに、思わずしゃがみ頭を抱える。
強烈な頭痛と吐き気に襲われ、目を閉じ歯を食いしばる。
しばらくすると頭痛が和らぎ、何とか立てるくらいまで回復した。
いったい何だったんだろうと顔を上げると、さっきまでいた公園とは違う、鬱蒼をした森の中にいた。
「ここどこ…?」
ぼんやりとつぶやいた声がしんとした森に吸い込まれた。
周りを見渡してもブランコも乗ってきた自転車もない。
ただの森の中にいた。
ガサガサッ
遠くから歩いているような音がした。
ここにい続けてはいけない、と何かが頭に訴えてくるような気がした。
(逃げなきゃ…でもどこに?)
ここがどこかなんてわからないのに、その場から移動するだなんて帰ってこられるのかがわからない。
でもここで立ち止まっているのは危ないと、警告が止まない。
仕方なく物音から離れた方向へと歩くしかなかった。
歩いていると何か走り書きがされている紙を見つけた。
「Slen…man?読めない…。」
なぜか黒く塗りつぶされており、何が書かれているかはわからない。
その代わりなのか、異様に細長いスーツ姿の人のような落書きが描いてあった。
―――気味が悪い
黒く塗りつぶされた文字になんて書いてあったのか。
気にはなるものの、それよりもスーツ姿の人の落書きの方が気になった。
ザザザッ
ノイズのような音が突然頭に響いた。不快な音に眉をしかめ、辺りを見渡す。
誰もいないじゃないかと正面を向いた瞬間、鼻血が垂れてきた。
思わず後ろを向く。
細長いスーツ姿の人型…一瞬だが視認した。
きっとこの紙を書いた人は、これを警告して書いたのだろう。
走ってその場から離れる。あたりが暗くなってきた。ついさっきまで昼だったのに。
血がお気に入りのハンカチについてしまったが仕方ない。今はそんなことを気にしている余裕なんてなかった。
(逃げなきゃ…。でも一体どこへ?)
どこまで逃げ続ければいいのかわからない上、夜の森なんて歩きたくなかった。
手掛かりなんて、さっき拾った紙しかない。
「そういえばこの紙…8分の1って書かれているけれどなんだろう」
不気味な人の落書きの下に、小さく”1/8”と書かれていた。
――同じような紙があと7枚…でも8枚そろえたらどうなるの…?
混乱している頭で必死に考えようにも、解決法なんて浮かばない。
浮かぶのはただの不安だけだった。
首を横に振り、不安をかき消す。
今はただ、この紙を探すことだけに集中しよう。
そう決意をし、歩き始めた。
…
すっかり日は沈み、辺りは真っ暗だった。
不幸中の幸いか、2枚目の紙の下に懐中電灯が落ちていた。誰のかわからないし、使っていいのかわからないけれど、今はそんなことを気にしてられなかった。
懐中電灯が着くことを確認し、残りの紙を探しに歩き回っていた。
「あった。あと1枚…。」
―足はもうくたくたでもうその場にしゃがんでいたい。
――家に帰って、温かいココアを飲みたい…。
あと1枚見つける、不安の中確定的ではない手掛かりを頼りに紙を探していたがもう体も心も限界だった。
顔は涙と鼻血でぐしゃぐしゃだった。
拭うハンカチも湿っている。とても気持ち悪い。
ふらふらとした足取りで、ただひたすら前に進むしかなかった。
「!」
ノイズが走った。何かが、何かがいる。
歯を食いしばり、走るしかなかった。懐中電灯で周囲を照らす余裕なんかなかった。
「ヒッ」
真横に何か黒い腕のようなものが手を伸ばしてきた。無理に避けようとし、転んでしまった。運良く落ち葉の上に転んでしまっただけだったのであまり痛くはない。
そんなことを気にしている余裕はなかった。
起き上がるにも足に力が入らない。腕の方向を見ないように顔を伏せながら、必死に後退りをし、距離をとる。ぐしゃぐしゃの紙を握りしめながら、距離をとるのに夢中になっていた。
ドン、と木にぶつかった。
何かはそこにいないのか、ノイズはしないし鼻血もいつの間にか止まっていた。
背中の痛みに少し涙ぐみながら後ろの木を見上げる。
「あ、あった…」
木に8枚目の紙が貼ってあった。
必死に木にしがみつきながら立ち上がり、8枚目に手を伸ばす。
その瞬間、肩に何かが触れた気がした。人ではないのははっきりとわかる。気にしないように、あと一枚…あと少しで手が届くのに…と必死に見ないようにと涙ぐみながら耐え、手を伸ばそうとすると再びぬちゃっと湿った何かが肩に触れた。
「な、なんでしょうか」
けほけほと、血が混じった咳が出る。
あと少しで届く手も、湿った何かに手もつかまれてしまい、動かせない。
鼻血が口元まで垂れてきたのだろう。口で呼吸をしようとすると鼻血が口に入ってきてとても気持ちが悪い。
『 』
ノイズとは違う、何かが耳元に聞こえた。
何を言っているかはわからない。けれどその何かは、私に8枚目の紙を取らせるつもりはないことは分かった。
細い指のような何かが顔を包み込み、視界を真っ暗へと誘った。
同時にぬめぬめとした何かが、逃げようとする私を温かく、そして優しく包み込んだのだった。
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2018.10.02
細長い男のお話。
クリアはできてません。ホラゲできません!
所説では友達が欲しいから追いかけるとかありますが、果たして。
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