儚夜16











見ず知らずの人からの視線が苦手。



その視線に込められている思いも、熱も、
どれもが気持ち悪さを覚える



今日も幾つもの視線が棘のようにわたしの身体に刺さり息苦しい







あの女子達は気づかれていないとでも思っているのだろうか?



ストーカーのように着いて回る彼女達の方へ視線を送ると逆効果だったようで更に熱い視線を向けられる。




自分一人が我慢する事はできる。むしろ得意。
でも、ねるとの時間を邪魔されるのだけは許せない




ねるは気づいているかな?
そう思ったと同時に「ねぇ、理佐、」と不安げな顔のねるで視界がいっぱいになった







真っ直ぐにわたしだけを捉えて離さないその目が好き。
ずっとわたしだけをその瞳に映し出してほしい



こんな時にでも好きが募って今すぐ抱きしめてキスをして、その先も…って考えてしまう自分の頭に嫌気が差しながらも真っ直ぐなねるの姿が可愛くて愛おしくて、なんだがほっとして。
笑みこぼしながら、ねるの手を取り無我夢中で走った

















『ねるが行きたい店ってどこ?』


「そこ」


『え、、』


開いた口が塞がらないとはまさにこの事だ。
ショーウインドウから少し見える店内はまさにセレブ御用達のソレ
その場を動けないわたしを他所になんの躊躇いもなく扉を開けるねる




「りーさ、何してると?入らんの?」


『あ、、ちょっと!待ってよ!』


慌てて扉が閉まる前に身体を入れ店内に足を恐る恐る踏み入れる




"いらっしゃいませ。…あぁ、ねる様いつもお世話になっております。今日は何をお探しでいらっしゃいますか"





「こんにちは〜今日は彼女に似合うネックレスが欲しくて」




"左様でございましたか!彼女様も大変お綺麗ですね。それではこちらにご案内致します"




『あ、いや、綺麗じゃないです、全然、』


「ふふっ、理佐にどれが似合うかな」


『ちょっと…ねる…』


「なんでそんな小声?理佐?」


『わたしがここの店で買える物なんてないよ…』




いくら社会人といえどこんなご立派なお店でネックレスを買えるほどの生活はしてない。
でも、それでも、どこか興奮してる自分は確かにここに……いる。



うわー、これとか凄く綺麗…
金額は…いち、じゅう、ひゃく、……見なかった事にしよう。うん。そうしよう。




「すみません。あのネックレス見せてもらっていいですか?」


"かしこまりました。さすがねる様。お目が高いですね。こちらのネックレスは一番人気で仕入れをしてはすぐ売り切れとなってしまう当店イチオシとなっておりまして…"




ねるは店員さんとともに奥の方へ移動してしまった。どこ行ったんだろ……この店の中を一人で歩くのも緊張するというのに。



どのケースを見てもキラキラが凄い。
輝き方がわたしの知ってるネックレスとは断然に違う事は一目瞭然。






「___さ、理佐」



『え?』


「こっちおいで」


『う、うん…』


「ネックレス付けるからじっとしてて」


『うん、』



ねるの手が後ろに回りふわっと香るねるの匂いに身体に緊張が走る。



「ふふっ」





そのままねるの顔がゆっくりと近づいてきて反射的に目を瞑ると耳元に微かに口を寄せて耳にキスをし少しのリップを立てながら離れていった




『っん、ちょっと、!』



「アハっ、理佐が可愛くてついね?うん、ネックレスやっぱり似合ってる。ねるの目に狂いはない」



『……すごい、綺麗……』





鏡に映った自分はどこかの映画に出てきそうなほど、キラキラしてて自分でも思わずうっとりしてしまうほど。



店内だからか標準語で話すねるは雰囲気も大人っぽくてさっきから自分心臓が煩い。
緊張からか喉が渇く。



「じゃあ、出よっか」


『え、?ちょっと、!』



ねるの手がしっかりわたしの腕を掴み店の外へと足を進める。



"ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております"



後ろから聞こえる店員さんの声。



『ちょっと、ねる!ネックレス付けたままだから、返さなきゃ、!』


「アハハっ、ハハッ」


『え、?ねる?』


「大丈夫。ちゃんとお金払うきたばい。理佐が一人でショーケース見よー時に』


『え…!、そうなの、?でもなんで…こんな…』


「プレゼントするのに理由が必要?」


『いや…でも、』


「それに理佐に変な虫がついとったら嫌やけん。理佐はねるだけんもん」



『大丈夫だよ。わたしはねるだけのものだし…ネックレス、ありがとう』



「理佐にはそんな気がなくても周りがね、」




ねるが腕を伸ばしわたしをそっと引き寄せる
そのまま流れるように背中に手を回し包み込むように抱きしめて胸いっぱいにねるの匂い体内に取り入れる。




ねるの匂いが一番安心する。
少しでもこうしていたくて自然と手に力が入る



「ふふっ、理佐は犬みたいやね。すぐ匂いクンクンするし、今は尻尾ばぶんぶん振っとー。可愛か」



『ねる、好き』


「ふふ、ねるも。理佐が好き」





ここが街中な事も忘れてねるの唇に自分の唇を重ねる。その大胆な行為にねるの口が緩む
微かに開いたねるの唇に自分の舌を少し強引に入れ込みぬるっとするねるの舌を捕まえれば耳にダイレクトに届く水音と漏れる息遣い。

 



キスをしながらねるがわたしのネックレスを優しい手つきで撫でる。
 









"ねるだけのわたし"

光り輝くわたしの首輪


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