儚夜4










人肌を感じる。















温かく包み込んで何もかも忘れさせてくれる。







ずっと、このままで、










少しでも長く、このままで。




















重たい目蓋を開けるとすぐ隣に可愛い寝息をたてて眠っている彼女の姿があった。








昨夜のことを思い出し顔が熱くなるのが自分でも分かる。ねるに触れられる度に身体全身が性感帯になっていた。









綺麗でさらさらな黒髪。
色白で透き通るような肌。
程よいピンク色の形の良い唇。








『ねる、』







彼女の頭を撫でながら無意識に愛おしいその名を呼んでいた。







「…ん、……?」








眠いたいであろう目を懸命に擦りこちらにピントを合わせようとしてる子供みたいな仕草をする彼女。昨日の彼女とは全くの別人で新しい彼女の一面に思わず頬が緩んでしまう。









「…理佐起きてたと、?」





  



???
少し違和感のある話方に疑問を抱いた。











「?…りさ、?どがんしたと?」





『え、、?なまってる、?、』




「あ〜、ねる長崎出身なんばい!仕事中は標準語で話しとー、ん?!理佐?」








彼女が話し終わる前に身体が勝手に動いて、
気付いたら彼女を抱きしめていた。

 










長崎弁で話す彼女が愛おしくてたまらない。
少しでも自分は許された人間なのかもしれないと勘違いしてしまう。
たった一夜の関係なんかじゃ終わらせたくない。










「ふふ、理佐可愛か、」









彼女の手がわたしの優しく頬に触れ、顔がゆっくり近づいてきた。それに答えるように目を閉じれば、彼女は優しく唇を包むように重ねてくれる。ゆっくり時間をかけて触れ合う唇の感触、形を味わい何度も角度を変えて求めるような口づけをすればねるの舌が唇を割って侵入してくる。少しでも深く、長く、繋がれるように交わり合う。粘着質な水音が響く部屋。













ピピピピピピピピピピピ 











『んっ、、あ、』










突如鳴り響くアラーム音。
離れていってしまう彼女の唇に寂しさを感じた。







「もう時間や、行かんば。」









彼女の言葉を聞いて現実に引き戻された。
何を勘違いしていたんだろうか。
わたしは彼女との時間をお金で買ったにすぎない。




それだけの事。


 


その事実がわたしを苦しませる
















『ねる、』
















"行かないで"













その一言が言えない。
喉に引っかかって言葉が声にならない。










『あの、』











「理佐、ありがとう。またね」














わたしの言葉を遮り彼女はここに来た時と同じ服を着て、わたしが用意をした白封筒を手に取り微笑みながら部屋を後にした。


















『…行かないで、』













やっと言葉にできた時にはもう君はいなかった。





今のわたしにあるのは怠い身体と腰の痛み





 

そして
 




君からもらった幸せ。









苦しみ。


















ホテルを出て駅に向かって歩いてると身に覚えのあるシルエットが視界に入った。








『…愛佳?』




「朝帰りー?ほどほどにね」


 

『うっさい』






咄嗟に首元を自分の手で隠した。
ニヤニヤしながらこちらを楽しそうに見てくる。









愛佳の話は全く頭に入ってこなかった。



 





どうしたらまた君に会えるのか、


 





どうしたらまた君の笑顔が見れるのか、













『決めた』










ねるに会える可能性があるなんて、






一つしかない







 




儚夜










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