儚夢27
時間は無限にあっても
巻き戻しはできない
だって、
時間はずっと流れていくから
静かな夜の夢の中を彷徨う煌めく世界
誰もが酔いしれる欲望に満ちた世界
ふと、壊れた。
音もなく
一瞬で崩れ去る
現実世界は脆くて儚い。
だから、一生懸命生きてみる事にした
「愛佳さん」
「あー、由依、お疲れ。ねる呼んでくれない?もう直ぐ友香さん来るのにあいつまだ来てないんだよ」
「あ…私ねるさんの連絡先とか知りません」
「はぁーー。そんなの知らねぇよ。早くここに連れてこい」
緊張と苛立ちからくる感情をそのまま目の前の机にぶつける愛佳さんを、ただ見つめる事しか出来ない。
「……くそッ、何してんだよあいつは。理佐に連絡取った方が早いな」
ねるさん。
何で次から次へと問題を起こすのか……。
〜〜♬
私の持っていた理佐の携帯が着信を知らせる。
「あ、」 「え」
「何で由依が理佐の携帯持ってんの?」
しまった…
更に厄介な事になった。なんかねるさんを探してる時よりも遥かに怖い血相でこっち見てるんだけど、愛佳さん
「あっ、理佐が私の家に携帯忘れていっちゃって」
「は?何言ってんの?……ってあぁ、だから昨日ねるからの連絡に気づいてなかったのか。……で、なに?理佐とそーゆー関係なの?」
一歩ずつゆっくり私との距離を詰める。
なんでそんなに焦ってるの?
なんでそんなに必死なの?
あぁ…愛佳さんって理佐の事好きなんだ。
そんなに怖い顔しないでよ
めちゃくちゃにしたくなるじゃん。
理佐って本当に罪な人間。
関わる人全員を好きにさせちゃうって、本当は魔女とかなんじゃない?知らんけど
「そーゆー関係がよく分からないですけど、多分イイ関係?だと思います。ふふっ。じゃ、ねるさん探しにいきます」
何やら後ろで騒がしい愛佳さんを残し、そのまま帰路につく。
ねるさん探しなんて馬鹿馬鹿しい
どうせ理佐の家にでもいるんでしょ。
今日はひかるとの大事な約束がある。
何が何でも早く退勤したい。
あぁ、私も理佐に会いたいな
あの優しい眼差しで私だけを見ていてほしい
この世界で私だけを照らし続けてほしい。
はぁ…
恋なんて本当に、
性に合わない
それなのに理佐への想いは止まってくれないし
「由依?」
「ぁ、友香さん」
「由依〜今日もとっても綺麗ね。ねぇまたねるが来ないんだけど、悲しいわ」
「あー、今ねるさん探してるところなんですけど、中々見つからなくて、」
「まぁ、そんな振り回してくれるねるの事が好きなんだけどね。じゃあ今日は由依にしようかな」
「えっ、私…ですか?」
「だめ?」
結局、こーなると思った。
あぁ、理佐も
理佐もこんな風に私を求めてくれたらな
なーんて、そこら辺の女子みたいに変な妄想もしちゃうし
はぁ……本当にどうすればいいの?これ
「ダメなわけないじゃん…おいで」
今日はひかるとポケモンの対戦する日だったのに。
今日中に帰れそうにない……な
友香さんの部屋に着き早々にベッドに押し倒される
シチュエーションも何も無い、ただ友香さんの愛が押し付けられるだけの行為
「由依」
「友香さん……っんん」
唇に吸い付き舌を絡め取られる。
触れた唇から熱すぎる熱が伝わり、身体が溶けそうになる
友香さんの体温を感じている間に服の隙間から友香さんの手が入り込み、焦らすように身体を撫でられる
「っん友香って呼んで…」
「ゆう…かっ、」
「ふふっ。かわいい。久々の由依に私も興奮してきちゃった」
「……っ、ん、んん、はやく、、ちょう、だいっ」
「由依、ゆっくり、ゆっくり二人の時間を楽しみましょうね?ふふっ」
沢山愛し合った後のこのゆったりとした時間が好き。
全てがわたし達の為にあるんじゃないかって思えるほど、特別で、幸せな気持ちでいっぱいになる。
「理佐」
『なぁに、ねる』
ねるに名前を呼ばれるだけで、こんなにも胸がときめいて、弾んで、さっきまで感じてた体温を求めて隣のねるを優しく抱きしめる。あぁ、わたしだけのねる。
「ねる、儚夢辞めようと思う。いや、辞めるばい。これで本当に理佐だけのねるでいられるとね」
『ねる…、ねるぅ、』
ねる、
今までずっと願っていた事を今ねるの口から聞けるなんて、
あぁ、こんなに幸せでいいのかな。
こんなにも満たされて、幸せで、本当にいいのかな。
ねるがわたしと一緒にいる決断をしてくれた事が、その事実が、覚悟が、あまりにも幸せで、苦しいほど幸せで、止めどない想いが涙となり身体の外側に溢れ出した。
ねるにとって大きな、とっても大きな決断をしてくれた。
ねるが紡いでくれた気持ちを、想いを、覚悟をしっかりと受け止めて抱きしめる
「ねるは理佐の笑顔をずっと見ていたか。ほら、笑うて?」
『うん、、でもね、ねる。嬉しくて、』
わたしの表情を見てふにゃっと優しく微笑んだねるが触れるだけのキスをくれた。
触れただけなのに、愛を誓うように、強く、けれども蕩けるような優しいキスだった。
「明日愛佳さんにちゃんと言いにいくけん」
『無理しないでね、ねる。愛佳に何かされたらすぐわたしに連絡してね。どこにだってすぐ助けに行くから』
「理佐は本当に頼もしいけんね。ふふっ。好きだよ、理佐。大好きだよ」
『ねる、愛してる』
ねる、愛してるよ
世界でいちばん。
ねるだけを心から愛してるよ。
この言葉に嘘も偽りもない
これでずっと幸せでいられる。
そう思ってたんだ。
そう信じてたんだ、
この時までは
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