儚夜10


 









「っは、ぁ、はぁ、」









荒い息遣い、動きに合わせて軋むベッド、
汗ばんだ身体、熱を帯びた目、
揺れる身体、漏れる自分の声









全てに気持ち悪さをを覚えた。







相手の動きに合わせて揺れる自分の身体からは何も感じとれず、ただ、生理的に声が漏れる








儚夜に入る時に捨ててしまったはずの心が痛い、苦しい。








心をなくした方が楽に生きられた。
楽しい事も嬉しい事も、辛い事も苦しい事も何も感じないほうが無駄な感情を使わずに済む







ただ平凡と流れる月日を惜しむ事なく、このまま死んでしまいたいと思った事なんて幾度もある









でも、そんな時に出会ったのが






理佐だったんだ。




 





一目惚れなんて全く縁のない話だと思っていたのに理佐を見かけたあの日から芽生えた感情に毎日毎日悩んで苦しくて、どれも初めての感情に混乱したっけな、










貴方はまだこのホテルにいるのかな、?





会いたい





今すぐ抱きしめてほしい、抱きしめたい








あの強い眼差しで私を求める貴方を自分の中に閉じ込めてしまいたい。誰にも触れられないように、奪われないように





理佐で身も心もいっぱいになるくらい、理佐で埋め尽くしてほしい








あぁ、今すぐ会いたい______________










「ねぇ、 」










届いた声は大好きな人の声ではなかった







「…ちょっと!ねる?」




「え?」



「シてる最中にぼーっとするってなに?今日どうしたの?遅れてくるしせっかく会えてるのに心ここに在らずだし、ねぇ」

 


「ごめん…今日はここまでで、ロングはまた今度でいい?ちょっと体調良くなくて、」






「ふ〜ん、体調良くないんだ?じゃあさ、もっと気持ち良くしてあげるよ」







そう言い残してベッドから降り自分の鞄の中からドリンク剤のような物を手に取りそれを口に含み何をするかと思っていたら再び押し倒されそのまま口移しで得体の知れない液体を飲み込んでしまった





「んっ、はぁ、……ちょっとなに飲ませたの?!」

  



「媚薬だよ?そんなに眉間に皺寄せたら可愛い顔が台無しだよ」











やばい、
 

身体中が熱くなり溶けてしまうんじゃないかってほど熱が篭り、嫌でも身体の中心が疼いてるのがわかる

相手に対する苛立ち、怒りも久々に沸いた感情のうちの一つなのは間違いなかった







「っ、はぁ、はぁ、っ」



「イヤラしい顔、まだ何もしてないのにね?」



「、やめてっ、」






"続きしよっか_________"


















「んあ、っん、、はぁ、」





言葉にならない自分の声が響く部屋






「っ、、はぁ、、ねる、」




自分を求める相手の声





身体を離そうとするもうまく力が入らず、
されるがままの行為に自然と溢れる声と涙

 



理性ともう一つ、何かが崩れていくのが分かる






そんな時




快楽に飲まれ意識を手放す寸前頭をよぎったのは、
紛れもない彼女だった






私が何かアプローチをすればすぐに頬を紅く染める
無垢で純粋な愛おしい彼女






こんなにも汚い私が愛していいのだろうか、






変わりたい






今からでも間に合うだろうか、?











「っはぁ、ぁあ、!、、り、りさっぁ、!!」





愛おしいその名を呼ばずにはいられなかった。














『っねる、!?、!』






私の声と共に勢いよく開けられた扉




大好きな声、大好きな眼差し






あまりの出来事に思考が止まる





会いたくて仕方なかった彼女がすぐそこにいるのに彼女以外と身体を交わらせてる姿を見られた事実に血の気が引き、口から言葉が出ない。





そんな私の思考を無視して私に覆い被さっていた相手は理佐の方へズンズン歩いていき取っ組み合いが始まるんじゃないかって程問い詰めている







「だれあんた、?今お楽しみの最中なんだけど」



『、ねるが私のこと呼んだので来ました』



「はぁ、?ちょっとねる、この子なに」




「っえっと、、」



『恋人です』



「ぶっ、アハハ、!!本気、?いるんだよね、よく客でねるの対応の良さに恋人だと錯覚しちゃう人。あーーー笑える。変な邪魔が入っちゃたから今日はもう帰るわ次はちゃんとロングで相手してよ?」





太客は乱暴に部屋の扉を閉めコツコツとヒール音を響かせながら立ち去っていった








先ほどとは打って変わって物音一つない静寂な世界に理佐と二人きり





待ちに待ったひと時なのに二人の間には気まずい時間がただ流れる



何となく、側にいる理佐の腕を取り横に座らせるとお互いの体温、心臓の鼓動が充分に感じられるほど互いを包み込んだ





暫くして理佐が先に言葉を紡いだ




『あれから愛佳と話し終わって、たまたま通り掛かったら、その、、ねるの声が聞こえて、それで、盗み聞きするつもりはなかったんだけどねるがわたしの事呼んだから…』





「理佐、」



『ごめんね、勝手に部屋に入っちゃって…仕事の邪魔しちゃったよね』




「そがん事どうでもよかばい、理佐は嫌やなかと?ねる、理佐の事大好きだけど、それなのに色んな人とヤってるたい、」




『嫌、凄く嫌だ。でも、しょうがないじゃん、それがお仕事なんでしょ、?否定なんてしたくない』




理佐はどこまでも優しいから、私は不安なんだよ?
理佐が我慢する必要なんてどこにもないんだ


理佐の事誰よりも幸せにしたいのに、なんで、
なんで私はいつも真逆の事しかできないんだろう





「ねる、これからも理佐の事いっぱい傷つけるかもしれん、それに、!んっんんっ、はぁ、、いきなり何すると、!」



『そんな話聞きたくないし、まだその話するならずっと今みたいにキスするからね?……じゃあ、わたしもそろそろ帰るね』










一瞬の寂しそうな表情を私は見逃さなかった




この時やっと自分の中で覚悟を持てた





好きな人と生きていく覚悟を













「理佐、わたしん家こん?」
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