始まりの瞬間
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ここはアンドロメダ島。白銀聖闘士ケフェウス座のアルビオレの指導の下、聖闘士に成るべく修行に励む若者たち。そしてその中にひと際目立った風貌の少年がいる。彼の名は、瞬―…あどけない少女のような顔をした線の細い少年。
『瞬!今日こそ本気で戦ってね』
「……Kizuna…」
ライバルとの模擬線を前に、聖闘士見習いたちの世話をしている少女・Kizunaは瞬に声をかけた。
「分かってる…努力するよ…」
少し悲しげな目をして、精一杯の言葉で答えた。防具を身につけた瞬の背をKizunaは心配そうに見送った。
美しい名前を持つこの島は時折、その名にそぐわない過酷な気候が訪れる。この日も荒れた土地に乾いた風が吹き、日中の気温が40度を超えていた。
「では瞬、そしてレダ。これより模擬戦を行う!二人とも、前へ!」
師アルビオレの声が響き渡る。
「「はいっ!」」
名を呼ばれた二人の若者がアルビオレの前に互いに向き合って構えた。
「瞬!今日も手早くお前を片付けてやるからな!」
「……」
レダの挑発に瞬は無言で答えた。ここのところ、瞬はレダに一戦も勝てなかった。否、レダにだけではない。スピカにも、女であるジュネにすら負けっぱなしだった。
「始めっ!」
アルビオレが戦闘を開始させる声を上げると、レダは待ってましたとばかりに瞬に襲い掛かった。
レダの激しい攻撃が一方的に瞬を攻め立てる。瞬はただそれを必死で防いでいた。
「うっ!」「くぅっ!!」
レダの拳が瞬の体に当たるごとに苦しげな瞬の呻き声が発せられる。
「ほらほらほら!!もうギブアップかぁ!?」
レダの執拗な攻撃と罵りにも瞬はひたすら己を守り続けた。
「何をしているんだい、瞬!反撃に出るんだよ!」
「レダ、一気に決めちまえっ!」
二人の模擬戦を見守っていたジュネやスピカら外野の者たちは、それぞれに声を掛ける。そしてKizunaもまた、じっと二人の戦いを見つめていた。
(『瞬…本気で戦って…!』)
しかしKizunaの祈りにも似た想いが実ることはなく、ついにこの模擬戦はレダの勝利で幕を閉じたのである。結局、瞬は一発もレダに反撃しなかった。
「この根性なしが!さっさと日本に帰りなっ」
戦いに敗れ地面に突っ伏したままの瞬に、レダは吐き捨てるように言い放つと、仲間たちとともに宿舎のほうへと去って行った。
残ったのはジュネとKizuna。ジュネは瞬を抱き上げ、優しく声を掛けた。
「瞬…どうして攻撃しないんだ…?」
「…ジュネさん…ごめん…」
『瞬は本気で戦おうとしないのね』
「Kizuna…」
切れた唇から紅い血が滲む。Kizunaはジュネの隣にしゃがみ込み、その血をハンカチで拭ってやった。Kizunaの目にうっすらと涙が滲むのを瞬は辛そうに見つめ続けた。そしてもうひとり、それを見守るジュネ。仮面の下には複雑な面持ちを宿していた。
その夜…
夕食も終わり、台所で皿を洗っているKizunaにジュネは声を掛けた。
「ちょっといいかい、Kizuna?」
『うん、別にいいよ』
「アンタに言っておきたいことがあるんだ」
『…?』
いつもと少し違うジュネの様子に、Kizunaは手を止めた。
「Kizuna、あたしは世話をしてくれているアンタには感謝しているよ。ただ…」
『ただ?』
Kizunaはジュネのほうを向いて優しく聞き返す。そんなKizunaにたじろぎながらもジュネは一気に言い放った。
「これ以上、瞬に構わないでくれ」
『え…』
予想もしていなかった台詞に、一瞬Kizunaは耳を疑う。ジュネは続けた。
「アンタは聖闘士じゃない。あたし達とは違うんだ。だから…瞬に本気で戦っていないなんて言わないでくれ」
『…ジュネ…』
「瞬だって分かっているはずだから…部外者のアンタが余計なことを言わないで欲しいんだ…」
己の言葉がどれほどKizunaを傷つけているのかは良く分かっている。それでも愛する男のためにジュネは心が張り裂けそうになりながら精一杯強がった。
『………』
「…話はそれだけだ。おやすみ、Kizuna」
気まずい空気を残したまま、ジュネは静かに扉を閉めた。残されたKizunaは、その場に立ち竦んでいた。
『部外者…か』
自分をこの世界から切り離す残酷な単語をKizunaはそっと繰り返した。けれど悲しい気持ち以上に、ジュネの苦しさが心に刺さっていた。
次の朝からKizunaは意識的に瞬を避けるようになっていった。代わりにジュネが瞬の傍を離れなかった。瞬はすぐにKizunaとジュネのいつもと違う様子に気がつき、やがて修行にも集中力を欠き始めた。
「何をやっているんだ、瞬!同じ間違いを何度犯せば気が済む!!」
いつも以上に戦闘意識の薄れた瞬の様子にアルビオレの罵声が飛ぶ。
「すみません、先生!もう一度!!」
いつもならこうして修行をしている間もKizunaは近くで見守っていたくれていたのに、今日は一向に現れない。心ここにあらず、とは今の瞬のことを言うのだろう。そんな瞬の様子についにアルビオレも業を煮やした。
「瞬、今すぐこの場から立ち去れ!ここは己を鍛える場だ。今のお前がいる場所ではない!」
「…アルビオレ先生…」
「お前は聖闘士に成るべき人材ではないようだな」
「待ってください!僕には聖闘士になって日本に帰るんです!そう兄さんと約束したんだ!先生、もう一度―」
「今のお前では無理だ。去れ!」
アルビオレの厳しい言葉にうな垂れるようにして瞬はその場を立ち去った。放心状態の瞬にはあざ笑う声も、唯一ジュネの心配そうな声も届かなかった。
聖闘士になれない自分の弱さ、守れない兄との約束…しかしそれ以上に瞬を苦しめていたのはKizunaの態度だった。自分が今一番したいことは―Kizunaに会うこと。そして自分を避ける理由を聞き出すことだと、瞬は本能的に感じていた。
屋外のうだる様な暑さとは逆に、聖闘士見習いたちの宿舎小屋はひんやりと涼しい。全員が出払っているため、どこか虚ろな空間を創り出していた。ぼんやりした空気の中を瞬はひたすらKizunaを探し求めて歩いた。
宿舎の奥は裏庭で、そこへ通じる扉が薄く開かれていた。勢いよく扉を開くと、薄暗い空気が溶け出して光と石鹸の匂いが入り込んだ。瞬はそこで探していた人物を見つけた。
「Kizuna!」
『…瞬!?』
洗濯物を干していたKizunaは思いもよらない訪問者に目を丸くする。朝から意識して会話を避けていたせいか、瞬がここに来た理由も全く想像がつかない。しかしすぐに昨夜のジュネの言葉を思い出し、Kizunaは目を伏せた。
「Kizuna?…今日はどうかしたの?」
『……』
「僕が何かしたのかな…」
『違うっ――…』
自分に向けられた悲しげな眼差に耐え切れず、Kizunaは瞬に顔を向けた。少し瞬の顔に安堵の表情が宿った。
「それなら良かった。」
『…修行は?』
今度はKizunaが瞬に問いかけた。
「先生に怒られたよ…修行に身が入ってない、って…」
困惑した表情のKizunaを真っ直ぐに見つめて、瞬は続ける。
「…Kizunaが傍に居ないから」
時間が止まったかのように二人はそのまま見つめ合った。やがてKizunaの頬に薄っすらと紅がさす。
瞬はそっと近づいてKizunaを抱きしめようとしたが、一瞬Kizunaは身を引いた。
「ジュネさんが何か言ったのかもしれないけど、彼女は関係ないよ。彼女は僕を心配してくれているだけなんだ。」
『…私は瞬の傍に居たい///部外者なんかじゃイヤなの…』
「大歓迎だよ。部外者だなんて、そんなことあるはず無いじゃないか。Kizuna…僕はね、キミのことが好きなんだ」
『!!///私も大好きよ、瞬//!』
二人は白いシーツが翻る隙間で強く抱き合った。
『瞬…修行に戻って』
「うん!Kizunaも一緒に来て欲しい。」
『ふふっ。お供するわ』
「ありがとう」
チュッ、と瞬はKizunaのおでこにキスを落とした。
練習場に到着すると、これから模擬戦が行われようとしていた。
「瞬!!…Kizuna…」
瞬の存在にいち早く気がついたジュネだったが、すぐにその後ろに居たKizunaの姿を見て落胆を隠せなかった。
「アルビオレ先生!もう一度、僕に修行をさせて下さい。僕は必ず聖闘士に成ります!」
「瞬…その言葉、信じるに値するのか試させてもらおう。」
厳しい表情のままアルビオレはすでに模擬戦の準備をしていた見習いたちを下がらせると、瞬に位置につくように促した。瞬はアルビオレに向き合う形でその位置に立つ。
「これからこの私と模擬戦を行う。私に一発でも拳を当てられたら、修行を再開することを許す。」
アルビオレの提案に一同はどよめく。それほどまでに一度修行を放棄した人間が許されるのは難しいことなのだ。
しかし、瞬は晴れやかに答える。
「はい!よろしくお願いします、先生っ」
瞬の表情に何かを感じ取ったアルビオレもまた、少し晴れやかな気持ちだった。そしてそんな二人を見守るKizunaにも心境の変化が起こっていた。
(『今の瞬ならきっと大丈夫!』)
気がつくとKizunaの隣にジュネが立っていた。
『ジュネ…』
昨夜の件もあり、戸惑いがちにKizunaは声を掛けた。ジュネは視線を瞬とアルビオレに向けたまま答えた。
「アンタには負けたよ…あたしには瞬をあんな風に変える力はないよ」
『私は瞬を愛しているの…』
「分かってるよ。だからあたしはアンタを瞬から離そうとしたんだ。結局逆効果だったみたいだけどね。」
『い、いつから知ってたの!?』
「ず~っと前からさ。アンタ、バレバレだよっ」
『~~~///』
ジュネは真っ赤な顔をしたKizunaの背中をポンッと叩いて笑った。仮面を付けてはいたが、笑い声には親しみが込められていた。
その瞬間、ワッと大きな歓声が上がる。
そこには瞬の一撃で地面に膝をつくアルビオレの姿。
「よくやった、瞬!見事だ」
「先生!…お怪我は…」
アルビオレは差し伸べられた瞬の手を払いながら苦笑する。
「大したことは無い。さ、修行に戻れ」
その言葉にみるみる笑顔になる瞬。その背を見つめながら、アルビオレはそっと呟いた。
「その優しさを忘れるな…そして強くなれ!」
今日もアンドロメダ島は灼熱の日差しが降り注ぐ。
瞬は以前より少しだけ逞しくなった。その視線の先にはいつもKizunaが瞬を見守っていた。
~FIN~ →アトガキ
『瞬!今日こそ本気で戦ってね』
「……Kizuna…」
ライバルとの模擬線を前に、聖闘士見習いたちの世話をしている少女・Kizunaは瞬に声をかけた。
「分かってる…努力するよ…」
少し悲しげな目をして、精一杯の言葉で答えた。防具を身につけた瞬の背をKizunaは心配そうに見送った。
美しい名前を持つこの島は時折、その名にそぐわない過酷な気候が訪れる。この日も荒れた土地に乾いた風が吹き、日中の気温が40度を超えていた。
「では瞬、そしてレダ。これより模擬戦を行う!二人とも、前へ!」
師アルビオレの声が響き渡る。
「「はいっ!」」
名を呼ばれた二人の若者がアルビオレの前に互いに向き合って構えた。
「瞬!今日も手早くお前を片付けてやるからな!」
「……」
レダの挑発に瞬は無言で答えた。ここのところ、瞬はレダに一戦も勝てなかった。否、レダにだけではない。スピカにも、女であるジュネにすら負けっぱなしだった。
「始めっ!」
アルビオレが戦闘を開始させる声を上げると、レダは待ってましたとばかりに瞬に襲い掛かった。
レダの激しい攻撃が一方的に瞬を攻め立てる。瞬はただそれを必死で防いでいた。
「うっ!」「くぅっ!!」
レダの拳が瞬の体に当たるごとに苦しげな瞬の呻き声が発せられる。
「ほらほらほら!!もうギブアップかぁ!?」
レダの執拗な攻撃と罵りにも瞬はひたすら己を守り続けた。
「何をしているんだい、瞬!反撃に出るんだよ!」
「レダ、一気に決めちまえっ!」
二人の模擬戦を見守っていたジュネやスピカら外野の者たちは、それぞれに声を掛ける。そしてKizunaもまた、じっと二人の戦いを見つめていた。
(『瞬…本気で戦って…!』)
しかしKizunaの祈りにも似た想いが実ることはなく、ついにこの模擬戦はレダの勝利で幕を閉じたのである。結局、瞬は一発もレダに反撃しなかった。
「この根性なしが!さっさと日本に帰りなっ」
戦いに敗れ地面に突っ伏したままの瞬に、レダは吐き捨てるように言い放つと、仲間たちとともに宿舎のほうへと去って行った。
残ったのはジュネとKizuna。ジュネは瞬を抱き上げ、優しく声を掛けた。
「瞬…どうして攻撃しないんだ…?」
「…ジュネさん…ごめん…」
『瞬は本気で戦おうとしないのね』
「Kizuna…」
切れた唇から紅い血が滲む。Kizunaはジュネの隣にしゃがみ込み、その血をハンカチで拭ってやった。Kizunaの目にうっすらと涙が滲むのを瞬は辛そうに見つめ続けた。そしてもうひとり、それを見守るジュネ。仮面の下には複雑な面持ちを宿していた。
その夜…
夕食も終わり、台所で皿を洗っているKizunaにジュネは声を掛けた。
「ちょっといいかい、Kizuna?」
『うん、別にいいよ』
「アンタに言っておきたいことがあるんだ」
『…?』
いつもと少し違うジュネの様子に、Kizunaは手を止めた。
「Kizuna、あたしは世話をしてくれているアンタには感謝しているよ。ただ…」
『ただ?』
Kizunaはジュネのほうを向いて優しく聞き返す。そんなKizunaにたじろぎながらもジュネは一気に言い放った。
「これ以上、瞬に構わないでくれ」
『え…』
予想もしていなかった台詞に、一瞬Kizunaは耳を疑う。ジュネは続けた。
「アンタは聖闘士じゃない。あたし達とは違うんだ。だから…瞬に本気で戦っていないなんて言わないでくれ」
『…ジュネ…』
「瞬だって分かっているはずだから…部外者のアンタが余計なことを言わないで欲しいんだ…」
己の言葉がどれほどKizunaを傷つけているのかは良く分かっている。それでも愛する男のためにジュネは心が張り裂けそうになりながら精一杯強がった。
『………』
「…話はそれだけだ。おやすみ、Kizuna」
気まずい空気を残したまま、ジュネは静かに扉を閉めた。残されたKizunaは、その場に立ち竦んでいた。
『部外者…か』
自分をこの世界から切り離す残酷な単語をKizunaはそっと繰り返した。けれど悲しい気持ち以上に、ジュネの苦しさが心に刺さっていた。
次の朝からKizunaは意識的に瞬を避けるようになっていった。代わりにジュネが瞬の傍を離れなかった。瞬はすぐにKizunaとジュネのいつもと違う様子に気がつき、やがて修行にも集中力を欠き始めた。
「何をやっているんだ、瞬!同じ間違いを何度犯せば気が済む!!」
いつも以上に戦闘意識の薄れた瞬の様子にアルビオレの罵声が飛ぶ。
「すみません、先生!もう一度!!」
いつもならこうして修行をしている間もKizunaは近くで見守っていたくれていたのに、今日は一向に現れない。心ここにあらず、とは今の瞬のことを言うのだろう。そんな瞬の様子についにアルビオレも業を煮やした。
「瞬、今すぐこの場から立ち去れ!ここは己を鍛える場だ。今のお前がいる場所ではない!」
「…アルビオレ先生…」
「お前は聖闘士に成るべき人材ではないようだな」
「待ってください!僕には聖闘士になって日本に帰るんです!そう兄さんと約束したんだ!先生、もう一度―」
「今のお前では無理だ。去れ!」
アルビオレの厳しい言葉にうな垂れるようにして瞬はその場を立ち去った。放心状態の瞬にはあざ笑う声も、唯一ジュネの心配そうな声も届かなかった。
聖闘士になれない自分の弱さ、守れない兄との約束…しかしそれ以上に瞬を苦しめていたのはKizunaの態度だった。自分が今一番したいことは―Kizunaに会うこと。そして自分を避ける理由を聞き出すことだと、瞬は本能的に感じていた。
屋外のうだる様な暑さとは逆に、聖闘士見習いたちの宿舎小屋はひんやりと涼しい。全員が出払っているため、どこか虚ろな空間を創り出していた。ぼんやりした空気の中を瞬はひたすらKizunaを探し求めて歩いた。
宿舎の奥は裏庭で、そこへ通じる扉が薄く開かれていた。勢いよく扉を開くと、薄暗い空気が溶け出して光と石鹸の匂いが入り込んだ。瞬はそこで探していた人物を見つけた。
「Kizuna!」
『…瞬!?』
洗濯物を干していたKizunaは思いもよらない訪問者に目を丸くする。朝から意識して会話を避けていたせいか、瞬がここに来た理由も全く想像がつかない。しかしすぐに昨夜のジュネの言葉を思い出し、Kizunaは目を伏せた。
「Kizuna?…今日はどうかしたの?」
『……』
「僕が何かしたのかな…」
『違うっ――…』
自分に向けられた悲しげな眼差に耐え切れず、Kizunaは瞬に顔を向けた。少し瞬の顔に安堵の表情が宿った。
「それなら良かった。」
『…修行は?』
今度はKizunaが瞬に問いかけた。
「先生に怒られたよ…修行に身が入ってない、って…」
困惑した表情のKizunaを真っ直ぐに見つめて、瞬は続ける。
「…Kizunaが傍に居ないから」
時間が止まったかのように二人はそのまま見つめ合った。やがてKizunaの頬に薄っすらと紅がさす。
瞬はそっと近づいてKizunaを抱きしめようとしたが、一瞬Kizunaは身を引いた。
「ジュネさんが何か言ったのかもしれないけど、彼女は関係ないよ。彼女は僕を心配してくれているだけなんだ。」
『…私は瞬の傍に居たい///部外者なんかじゃイヤなの…』
「大歓迎だよ。部外者だなんて、そんなことあるはず無いじゃないか。Kizuna…僕はね、キミのことが好きなんだ」
『!!///私も大好きよ、瞬//!』
二人は白いシーツが翻る隙間で強く抱き合った。
『瞬…修行に戻って』
「うん!Kizunaも一緒に来て欲しい。」
『ふふっ。お供するわ』
「ありがとう」
チュッ、と瞬はKizunaのおでこにキスを落とした。
練習場に到着すると、これから模擬戦が行われようとしていた。
「瞬!!…Kizuna…」
瞬の存在にいち早く気がついたジュネだったが、すぐにその後ろに居たKizunaの姿を見て落胆を隠せなかった。
「アルビオレ先生!もう一度、僕に修行をさせて下さい。僕は必ず聖闘士に成ります!」
「瞬…その言葉、信じるに値するのか試させてもらおう。」
厳しい表情のままアルビオレはすでに模擬戦の準備をしていた見習いたちを下がらせると、瞬に位置につくように促した。瞬はアルビオレに向き合う形でその位置に立つ。
「これからこの私と模擬戦を行う。私に一発でも拳を当てられたら、修行を再開することを許す。」
アルビオレの提案に一同はどよめく。それほどまでに一度修行を放棄した人間が許されるのは難しいことなのだ。
しかし、瞬は晴れやかに答える。
「はい!よろしくお願いします、先生っ」
瞬の表情に何かを感じ取ったアルビオレもまた、少し晴れやかな気持ちだった。そしてそんな二人を見守るKizunaにも心境の変化が起こっていた。
(『今の瞬ならきっと大丈夫!』)
気がつくとKizunaの隣にジュネが立っていた。
『ジュネ…』
昨夜の件もあり、戸惑いがちにKizunaは声を掛けた。ジュネは視線を瞬とアルビオレに向けたまま答えた。
「アンタには負けたよ…あたしには瞬をあんな風に変える力はないよ」
『私は瞬を愛しているの…』
「分かってるよ。だからあたしはアンタを瞬から離そうとしたんだ。結局逆効果だったみたいだけどね。」
『い、いつから知ってたの!?』
「ず~っと前からさ。アンタ、バレバレだよっ」
『~~~///』
ジュネは真っ赤な顔をしたKizunaの背中をポンッと叩いて笑った。仮面を付けてはいたが、笑い声には親しみが込められていた。
その瞬間、ワッと大きな歓声が上がる。
そこには瞬の一撃で地面に膝をつくアルビオレの姿。
「よくやった、瞬!見事だ」
「先生!…お怪我は…」
アルビオレは差し伸べられた瞬の手を払いながら苦笑する。
「大したことは無い。さ、修行に戻れ」
その言葉にみるみる笑顔になる瞬。その背を見つめながら、アルビオレはそっと呟いた。
「その優しさを忘れるな…そして強くなれ!」
今日もアンドロメダ島は灼熱の日差しが降り注ぐ。
瞬は以前より少しだけ逞しくなった。その視線の先にはいつもKizunaが瞬を見守っていた。
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