一目惚れのお相手は
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私には恋ができない。
ずっとそうだと思ってた。
・ ・ ・
「美味しい~~!」
私は女友達と一緒に、新しくできたお寿司屋さんへ来ていた。
「やっぱお寿司最高~!」
お寿司といえば、海老、蟹!
あぁ、久しぶりにお寿司が食べられて幸せ…。
毎日のように食べられたらいいのになぁ…
そうしたら毎日ブログにアップして、自慢するんだけど…。
「ところで○○、彼氏できた?」
「ゴホッゴホッ!」
友人のいきなりの言葉に、私は一気に現実へ引き戻された。
「…なんでそんなこと聞くの?」
「前からあの人といい感じだったから、付き合ってるのかな~って」
「そんなわけないじゃん!全然タイプじゃないし…」
友人の言うその人は、細くて白い、中性的な雰囲気の人だった。
どうも私はそういう人にピンとこない。
もっとこう、なんていうか、そうじゃなくて……
「ならどういう人がタイプなの?」
「う~ん、自分でもよく分かんない…」
「だったら、あの中だと誰が好み?」
友人の視線の先をたどると、
そこには男子大学生と思われるグループがテーブル席に座っていた。
「……あれって学生だよね?」
「多分ね」
「年下はちょっと…」
「でも結構かっこよくない?」
確かにかっこいいし、爽やかだし、モテそう。
「でもなんか違うんだよね~…」
「あれでもダメなの?それって理想高過ぎない?」
うっ……。
言われた通り、理想が高い自覚はある。
整った容姿の彼らにすら何も感じないなんて、
私はどれだけのイケメンでなければ心が動かないのか…。
学生と思しき彼らから目を逸らすと、
その手前のテーブル席に座っている集団が目に入った。
その集団は、普通の人よりも明らかに体の大きい男性ばかりだった。
(……どういう集まり?)
気になってこっそりとその集団を見ていると
私はそこに座っている一人の男性に目を奪われた。
「……」
「…○○?どこ見てるの?」
「かっこいい……」
「え!?どの人!?」
「あの手前のテーブルの、奥に座ってる黒い服の人」
「……え?あのオジサン?」
「全然おじさんじゃないよ!人はあってるけど」
体が大きくて、強そうで、ちょっと怖そうな…
まるで幾多の戦場を潜り抜けてきた歴戦の戦士のような…
「でもハゲてるよ?」
「坊主でしょ!いいじゃない、似合ってるし、かっこいいし…」
「かっこいい…?強そうだとは思うけど…」
「指輪も付けてないみたい」
「え、結婚しててもおかしくない年齢に見えるけど……って、え?何言ってるの?」
あのおじさん…もとい、黒い服の逞しい男性は、
今まで見たどの人よりも魅力的で。
恋なんてできないと思っていた私だけど…
今、人生で一番胸がときめいている。
「私、LINEやってるか聞いてこようかな…」
「いや、やめなよ!やってないからオジサンは!」
「わかんないじゃん!もしかしたらスマホを使いこなして頻繁にブログを更新するオジサンかもしれないじゃん!」
「あのオジサンはそんなことしないから!見ればわかるから!」
あのテーブルにいきなり私が乗り込めば
変な女だと思われるに違いない。
だけど、どうしても、今私はあの人に声を掛けたい。
今声を掛けないと、あんなにも魅力的な人にはもう出会えないかもしれない。
誰かが言ってた。やらない後悔より、やって後悔……!
「ちょっと、○○!」
私は席を立ち、スマートフォンを握りしめ
彼のいるテーブルに向かった。