🚨 - 復讐 -
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《登場人物》
半藤 司(岩本照)
:警視庁捜査一課 刑事、信頼と実績の男
熊井 佑介(渡辺翔太)
:警視庁捜査一課 刑事、半藤の同期であり相棒
九十九 唯(佐久間大介)
:警視庁捜査一課 刑事、二課から一課へ異動となり半藤の班に配属される
九条 総(深澤辰哉)
:警視庁刑事部長、鋭い観察力を持つ、九十九を不安視している
鮫島 浩大(宮舘涼太)
:警視庁捜査一課 刑事、半藤が多大なる信頼を寄せる上司
葛城 凌(向井康二)
:警視庁鑑識課 鑑識、腕だけはある関西出身の鑑識、熊井にウザがられている
シューヤ(ラウール):謎の男
トオル(目黒蓮):シューヤの仲間
榎本 孝(阿部亮平):殺人事件の被害者の親族
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どれくらいの時間が経っただろうか
熊井「司ちゃん、また俺らの悪い癖出てるよ」
ホワイトボードの前で腕を組み、眉間に皺を寄せる俺に向けて熊井は言った
こいつは俺にとって不都合な事があると、俺の事を司ちゃん、とちょっと遠慮して呼ぶ
もちろん不都合な事は、好きじゃない
まあ、都合のいい事だらけじゃつまらないが
俺は熊井の方を見向きもせず、資料と睨めっこを続けた
半藤「あ?」
熊井「いや、時計見ろって」
熊井に促されて左手首の腕時計を確認した
時計は午前九時五分を指していた
うわ___まただ
熊井「うわ、またやったわ、とか思ったでしょ?___俺も(笑)」
熊井は呆れ顔で笑った
実はうちの部署の人間、朝の八時半にはほぼ全員揃うようになっていてだな、それに加えて基本班で動く仕事なもんで、まあ点呼まではいかないが班の人間が揃った事が確認できたら各自動き出す、という感じなんだ
___つまり何をやらかしたかというと、そういう事だ
俺らが目の前の事に夢中になっていたせいで、班の他の奴らが出勤してきた事に気づかなかったようだ
しかもそいつらは呆れてもう外に出向いたのか、デスクにはいなかった
熊井「司ちゃん、俺ら、何回目?(笑)これ」
肩を落とす俺に熊井は笑いかけた
熊井「いやー俺も悪いんだけどさ、これ、俺と組んでからかれこれ六回目」
半藤「___よく覚えてんな」
熊井「刑事なんだから、自分の悪いところは把握しておかないとじゃん?」
熊井は笑顔で答えた
クッソ、こういう時だけ刑事面しやがって
と思いつつ憎めない自分がいた
俺はデスクに散乱する報告書に目を留めた
半藤「他の奴らはもう報告書見ていったのか?」
熊井「知らねーよ、俺らが気付いてないだけでとっくの前に見てったんじゃないの?」
鮫島「あいつらなら目だけ通してもう出てったぞ」
俺は振り返った
声の主は上司の鮫島さんだった
捜査一課のエリート中のエリート刑事で、俺の憧れの存在だ
今日もグレーのスーツが似合ってて、男の俺でも惚れそうだ
って、そんな事考えてる場合じゃない
半藤「アイツらいつの間に___」
焦る俺に鮫島さんは優しい表情を向けた
鮫島「ま、朝から熱心なのは感心するし、お前らは特に仕事が良くできるから文句は言わないが、周りは見るように」
その優しさに気が緩みかけたが、超的確に指摘され俺は身を縮めた
熊井「すいません___」
隣の熊井も背筋が伸びていた
まあ、見かけだけかもしれないが
鮫島「構わないよ、さあ、そんな事よりお前らに紹介したい奴がいるんだ」
紹介したい人?
心当たりのなさに俺は呆然とした
熊井も熊井で何のことやら、と寝起きの三歳児のような顔をしている
鮫島「そんな顔するなよ(笑)、お前ら今日は何月何日か分かってんのか?」
半藤「四月一日です」
鮫島「だからそういう事だ、では刑事部長、お願いします」
そう言って鮫島さんは半開き状態の部署の戸に手をかけた
俺は困惑しながらもそれを見つめた
熊井「えぇ、なんなの」
熊井も動揺が隠せていないようだ
戸が大きく開くと、刑事部長と知らない男が並んで立っているのが見えた
俺は慌てて居住まいを正した
俺らの姿を捉えた刑事部長とその知らない男はゆっくりと歩き出し、無秩序なデスクと椅子をかき分け俺らの前に立った
九条「おはよう、刑事部長の九条だ」
刑事部長は律儀に挨拶をしてくれた
この人が来ると俺は決まって緊張する
なんたって、お偉いさんだからな
九条「朝から張り切ってるなあ、感心だ」
散らかったホワイトボードとデスクを見つめ、刑事部長は感激した様子を見せた
褒めてもらったのはいいものの、成果らしきものは結局何も無いんだがな
俺は心の中で自分を嘲笑った
半藤「いえ、とんでもございません」
九条「その調子で頑張れよ、あぁそうだ___」
刑事部長はひと息置いた
九条「こいつは今日から捜査一課に配属になった九十九だ、よろしく頼むぞ」
ん?
熊井「はにゃ?」
熊井は慌てて自らの口を押さえた
馬鹿野郎、はにゃ?はないだろうが
こいつは本当の幼稚園児なのかもしれない
まったく、頼むぜ
それにしても今日から配属って、何なんだ
そんな俺らを見て動揺する事なく、九十九は口を開いた
九十九「九十九唯です、今日からよろしくお願いします」
そいつの目はキラキラと輝いていた
俺は尋ねた
半藤「___新入社員って事ですか」
九条「新入社員というか、異動だな」
半藤「でも何故わざわざ俺らの所へ紹介を」
刑事部長はその輝く銀縁の眼鏡に軽く触れた
九条「こいつはお前らの班に入ってもらう事になった、というよりお前ら二人の元で頑張ってもらう事になった」
はい?
それこそ、はにゃ?だ
隣の熊井はまだ手で口を押さえている
多分手の奥ではにゃはにゃ言っているだろう
半藤「三人で動けと?」
九条「優秀さで名の知れた半藤熊井コンビだからな、ハッハ、まあ三人で仲良くやってくれ」
俺の動揺した気持ちを軽く流した刑事部長は、俺の肩を二回叩き部署を去った
鮫島さんもその後ろをついて出ていった
一瞬、場が静まり返った
俺は混乱していた
自分で言うのもあれだが、俺と熊井は一蓮托生のコンビとしてここ何年か過ごしてきた
この新入りを迎え入れ、これからやっていけと言われても___
まあ、やるしかないんだがな
そんな九十九を迎え入れることに不安を覚える俺とは対照的に、熊井はもう既に九十九に対し興味があるようだ
熊井「九十九ってさ、もしかしてあれなの?二課でなかなかいい仕事してたって噂されてた奴?」
九十九「いや〜大した仕事はしてないんですけど、なんか噂されちゃってたみたいですね〜」
九十九は満面の笑みで熊井の相手をしている
待て
なんだ、こいつ
熊井と同じ匂いがする
もしやそういうタイプか
俺はこれ以上問題児を抱えたくないんだが
九十九「異動とはいえ、刑事部のカリスマ達とこれからご一緒できるなんて!俺もう死んでもいいっすわ!」
やっぱりだ
なんていうか、この、軽々しさ?
あぁ、先が思いやられるぜ
俺は渋い顔をしながらしれっと自分のデスクに戻った
熊井「おぉ(笑)お前、意外と元気だな(笑)」
お前もだよ、と心の中で俺は呟いた
九十九「二課にいた時からこんな感じっす!」
熊井「うわ〜やりづら〜(笑)」
お前もだよ、と心の中でまた俺は呟いた
九十九「俺も今日から、花形一課様ですね〜!」
熊井「お前、舐めすぎ(笑)」
九十九「まぁまぁ熊井先輩〜、俺、仕事だけはちゃんとやりますから」
熊井「はいはい、分かりましたよ九十九さん」
九十九とかいうやつに散々舐められているようだが、熊井はなんやかんや嬉しそうだ
俺は目を細めて楽しそうな二人を眺めていた
俺は今日からこいつの世話をしろっていうのか?
くっ、厄介な奴だなあ
___いや、奴らか
俺はモヤモヤとした気持ちで、さっき刑事部長に叩かれた肩にそっと触れた
刑事部長の手に宿った期待という名のプレッシャーを、俺はひしひしと感じていた