🚨 - 復讐 -
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《登場人物》
半藤 司(岩本照)
:警視庁捜査一課 刑事、信頼と実績の男
熊井 佑介(渡辺翔太)
:警視庁捜査一課 刑事、半藤の同期であり相棒
九十九 唯(佐久間大介)
:警視庁捜査一課 刑事、二課から一課へ異動となり半藤の班に配属される
九条 総(深澤辰哉)
:警視庁刑事部長、鋭い観察力を持つ、九十九を不安視している
鮫島 浩大(宮舘涼太)
:警視庁捜査一課 刑事、半藤が多大なる信頼を寄せる上司
葛城 凌(向井康二)
:警視庁鑑識課 鑑識、腕だけはある関西出身の鑑識、熊井にウザがられている
シューヤ(ラウール):謎の男
トオル(目黒蓮):シューヤの仲間
榎本 孝(阿部亮平):殺人事件の被害者の親族
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満開の桜が、やわらかい風に煽られてゆっくりと体を傾けている
俺はそれをまだ誰もいない部署の窓から眺めていた
今年も警視庁に、春がやってきたみたいだな
まぁ、俺らに春を謳歌する暇なんて最初からありゃしないが
ひどく虚しい気持ちで俺は自分のデスクに戻った
キャスターの付いたイスを雑に引き、どかりと腰を下ろす
大きく伸びをし、左手首の腕時計に目をやった
まだ朝の7時にもなっていない
___こんな朝早くから何してんだ俺は
俺は半藤司、警視庁捜査一課で刑事をやっている
ちなみに捜査一課っていうのはあれだ、殺人や強盗、立てこもりとかの凶悪犯罪を扱う部署だ
扱ってる案件の発生頻度的には忙しくなさそうに見えるだろうけど、実際はその逆で___
凶悪犯罪は案件によっては捜査が難航するんだ
俺が今こんな朝早くから出勤しているのもそのせいだ
我々捜査一課では今、ある殺人事件の捜査を進めているんだが、まあ、お察しの通り、厄介ってわけ
今日までに同じケースの殺しが二件起こっていて、いわゆる連続殺人の可能性が高いと見ているんだが
実は決定的な証拠に欠けていてまだ現場検証を続けているところだ
しかも俺はよりによってその捜査班のリーダーを任されてる
ったく、参ってるよ
犯人様が本当に抜かりなくてよ、刑事の俺が精一杯の皮肉を込めて言わせてもらうとまあ素晴らしいんだやり口が
だから手がかりも掴めないし容疑者だって浮上しない
上の人も難しい顔をしているから相当だ
あーあ、全く
新年度早々なんでこんな思いしなきゃならないんだよ
本当は刑事たるもの、こんなこと言ってちゃダメなんだがなあ
流石に気が重い
憂鬱な気分のまま、俺は昨日分の報告書に目を通した
と同時に、部署の戸が大きく音を立てて開いた
熊井「うぃーす、おはよう」
俺の同期であり、大事な相棒である熊井が出勤してきたようだ
今日も彼の右手には眠気覚ましの缶コーヒーが握られている
こいつはいつもこんな調子だ
うぃーす、とかマジエグエグだねー、とか平気で言いやがる
刑事らしさの欠片もない
こんなので刑事が務まるかよ、って俺は思っちまうが
仕事はそれなりにできる上にその親しみやすさからか何故かこいつを慕う部下が一定数いるそうだ
だから何も言えない
そんな熊井だが、いつも以上に目がとろんとしていて何だかまだ眠そうだ
きっとさっき起きたばかりなんだろう
缶コーヒーも今日は珍しくブラックだ
半藤「あぁ、おはよう___眠いか?」
熊井「当たり前だっつーの___本っ当にもう、昨日あんな時間までかかるなんて思わなかったんだけどマジで、司もそう思わない?」
熊井も熊井でこの厄介案件に対し思うところがあるらしい
三時間しか寝てないんだけどー、と彼はブツブツ文句を言いながら俺と向かい合わせのデスクに座った
半藤「咲いてんな」
熊井「なに?」
半藤「桜だよ」
熊井「えぇっ?あー、ホントじゃん」
気分を上げようと桜の話をしてみたら、熊井はあまり興味無さそうに窓の外に目をやった
窓の外で風に煽られている桜は、その花びらをふわりと舞わせている
熊井「そこまで気回んないわ」
まあ、そうだろうな
俺もそうなんだから
半藤「俺もさっき気づいたとこ」
俺がそう答えると熊井は間の抜けた顔を見せた
お前から聞いといてそれかよ!とでも言い出しそうな顔だ
俺は何も言わず手元の報告書に目を落とした
なんだよ、と気だるげに呟いた熊井はそのまま大きく伸びをした
きらきらと輝く桜が、なんだか羨ましく感じる
彼もきっとそう感じているだろう
熊井「___嫌になっちゃうねーほんっと」
熊井は口をぽかーっと開きながら桜を眺めていた
こいつは何かに夢中になると口が開きがちだ
ちょっとアホっぽくなるその顔が、俺は意外と好きだったりする
という話はまあ置いといて
熊井「あぁ___そう言えばさあ」
何かを思い出したのか熊井が呟いた
熊井「昨日分の現場報告、どう?」
昨日の現場報告、かあ
俺はさっきからずっと読んでいるその報告書を強く握った
熊井の問いかけに対し、手がかりになりそうなのがあったぞ!と答えたいところだが、そうはいかないのが現実だ
俺は飾ることなく正直に答えた
半藤「一通り目通したけど、変わらずって感じ」
俺は報告書の束を熊井に差し出した
報告書を見た限り、昨日の現場検証でも特に目新しいものは見つけられなかった
熊井は何か言いたげな表情をしたまま束を受け取った
熊井「ちょっと期待したんだけどなーー」
報告書を机にバラバラと広げ、熊井は眺め始めた
あまりの成果の無さに、幼稚園児のように口を尖らせブーブー唸っている
半藤「期待も何も、昨日現場入った時点で分かってたようなもんだろ」
熊井「ひえー、まあそうなんだけどねー」
不誠実さとは裏腹に、過去に数多くの事件を担当し爽快に真実を暴いてきたこいつでさえも、ほぼお手上げ状態だ
こいつがここまで頭を抱えているのは珍しい
熊井「ちょっと犯人上手くいきすぎじゃね?って俺は思っちゃう、だってなんにもないんだぜ証拠が」
そう言って熊井は机に広げられた報告書を手に取り、天井の蛍光灯に透かした
透かしたところで何も出てこないぞ
熊井「今まで連続殺人でこんなに苦労した事なかったんじゃない?」
半藤「ああ」
こんなにも証拠が出ない
犯人によって綺麗さっぱりお片付けされている
きっと手慣れた奴なんだろうなあ
俺はそう思う事しかできなかった
クッソ、ついにお蔵案件が出てしまったか
いや、ここで立ち止まる訳にはいかないんだ
刑事として役目を全うしなければ___
なんて思っていたら、熊井が部屋の隅からホワイトボードを引っ張り出してきた
このホワイトボードには、この過去二回の殺しの概要や被害者の情報、そして事件現場の写真などが無秩序に貼り出されている
俺ら刑事はここに貼り出された情報を元に、推理をする
定期的に全体で開かれる捜査会議においては、デジタル化が進む今の時代、ホワイトボードをゴロゴロ引いてわざわざ持っていく事はしない
だが俺らはいつまで経っても昔から変わらずアナログなやり方で、つまりそのホワイトボードをぐるっと取り囲み資料と睨めっこをしながら推理合戦をする
これが俺らの決まったやり方だ
熊井「とりま___やるだけやるか?」
こいつの顔は相変わらず気だるげだ
本当にやる気があるのかないのか、よく分からない
半藤「___そうだな」
俺は重い腰を上げた
熊井「やるだけ___な?笑」
だから、どっちなんだよお前は
まあ、何年も相棒なんだし、言われなくても分かるけどな
俺らは報告書を片手にホワイトボードの前に立ち、朝っぱらからこの事件と対峙する事にした