🐺 -beast side-
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#01 第一日目(1)
頭がかち割れそうな程の頭痛に襲われ、目が覚めた
いつもなら視界に入るはずの
柔い部屋の豆電球が何故だか見当たらなかった
その代わりに
見慣れない殺風景な光景が目に飛び込んできて
慌てて体を起こした
◯◯「___なにこれ」
何が起こっているのか、どうしてここにいるのか
記憶を辿っても全く思い出せなかった
訳も分からないまま、辺りを見渡してみた
ひんやりと冷たいリノリウム張りの床
二階まで吹き抜けになっている高い天井
くすんだ色の剥がれかけた壁
窓を覆う大きなカーテン
___どこなの、ここ
そして、同じ状況にさらされているであろう
他の人達の姿が見えた
眼鏡をかけた華奢な男の人は
隣の強面でいかにも怖そうな男の人を
揺さぶり起こしている
関西弁で何かを喚いている男の人は
テクノカットが特徴的な男の人にしがみついて
今にも泣きそうだ
アニメTシャツを着たどこか中性的な男の人は
この非常事態をどこか楽しんでいるようだ
ふと、正面に座り込んでいた女の人と目が合った
知っている顔だった
◯◯「理子?」
声を掛けると彼女は安堵した表情で駆け寄ってきた
理子「◯◯!」
理子は唯一今も付き合いがある親しい友達だ
そういえば昨日も彼女と一緒に居たような気が
したりしなかったり
あれ、それからどうしたっけ
まずはそれどころじゃなかった
◯◯「ねえどういう状況?」
理子「普通に分かんない、状況も場所も」
◯◯「位置情報は」
理子「出ない、ていうより携帯の電源が入らない」
咄嗟にポケットに手を突っ込み携帯を取り出す
何度試しても動く気配のない携帯はただの塊と化していた
◯◯「えっやばいんじゃ」
理子「やばいよ、多分」
徐々に嫌な予感がしてきた
他の人達も全員目を覚ましたようで
同じように各々が今の状況を理解しようとしている
私はさっき気になった事を理子に聞いてみた
◯◯「ねえ理子」
理子「なに?」
◯◯「昨日さ、一緒にいなかったっけ?」
理子「いたはず、でもそこからどうしたかは覚えてない」
聞く前に返事が返ってきて、何も言えなくなった
辺りが静まり返る
深澤「__俺ら拉致られた説あるんじゃね?」
私達の話を聞いていたのだろうか
静寂を破ったのは
さっきの華奢な眼鏡の人だった
深澤「そこの二人の話、聞こえちゃったんだけど」
ラウ「俺らもそうなんだよね、気づいたらここにいた」
他の人達も大きく頷いている
恐らく全員記憶が無いのだろう
昨日理子と一緒にいた時にどこかで誘拐されて___という話は有り得そうだ
佐久間「え!?拉致!?俺らヤバくね!?」
岩本「佐久間うるさい」
阿部「でも拉致られたって決まった訳じゃないよ」
目黒「ワンチャン抜け出せるっしょ」
どうやら男性陣は全員がお互いに顔見知り、
というより相当仲が良さそうだ
___拉致られたかもしれないのに、能天気な人達
きっと理子もそう思っているだろう
すると突然、使えなかったはずの全員の携帯が一斉に鳴った
ビックリして携帯を取り出すと
身に覚えのないグループメールに新着のメッセージが届いていた
このグループメールには
今ここにいる11人が追加されているようだ
___なんか、やな感じ
恐る恐るメッセージを開いた
眼鏡の人がメッセージを読み上げてくれた
深澤「11人の皆様、こんにちは」
深澤「今から皆さんには、人狼ゲームを行って頂きます」
渡辺「人狼ゲーム?」
顔立ちの綺麗な男の人が気だるそうに呟いた
深澤「ルールは簡単。皆さんには3人の村人、1人の占い師、騎士、霊媒師、2人の共有者、そして3人の人狼のいずれかの役職が配分されています。毎日19時に投票が行われるので、その際に人狼だと思う人に投票してください。最も票を集めた人は死亡します」
___死亡?なんですか?それ
渡辺「死亡ってなに、笑」
向井「死ぬの?」
死亡___という強烈なワードに
誰一人戸惑いを隠せないようだ
眼鏡の人は読み進めた
深澤「また皆さんは0時〜7時の間は必ず自室で過ごし、人狼は0時〜2時の間にこの中から一人殺害してください。この時、騎士は自分以外の誰か一人を人狼の襲撃から守る事ができ、占い師は占った相手の役職を知る事ができます」
◯◯「いや待って待って待って」
思わず声が出てしまった
本気で何を言っているかがわからない
ラウ「いやマジで分かんないなんなのこれ」
丈の足りてないジーンズを吐いた男の子も
かなりパニックになっているようだ
___いやいやいや、正気?
全員が混乱していた
混乱している私達を差し置いて
メッセージは次々と届き
役職の説明やその他のルールについての説明、
またいずれかのルールに違反すると死亡する事も
伝えられた
深澤「___そして最後に、皆さんの役職はこの後個別でお知らせします。健闘を祈ります。だってよ」
全員の顔にはもう既に絶望の色しかなかった
向井「え待って、めっちゃ死ぬやん」
全員の気持ちを代弁するかのように
もう既に泣きじゃくっている彼がこなれた関西弁で呟いた
唐突に強いられた死への覚悟という現実を
誰一人受け入れられていないように思えた
その時、隣にいた理子が
突然勢いよく立ち上がった
理子「私、逃げる」
◯◯「へ?」
理子「普通に考えてこんなのに付き合ってらんないよ」
理子のまさかの行動に間抜けな声が出てしまった
◯◯「いや、待って、逃げるって」
理子「普通に、そこから出てくよ」
彼女は遠くの出入口を指さしている
本気で出ていくつもりのようだ
しかしゲームを放棄したり建物の外へ出る事は
ルール違反、違反した者は_______死ぬ
それだけは止めたかった
◯◯「待って理子、出たら、死んじゃうよ」
私の言葉を聞かず理子は真っ直ぐ出入口へ向かった
流石に他の人も焦ったようだ
向井「ほんまに死んじゃうかもしれへんからやめときいや、なあ」
宮舘「一旦落ち着こう、ね、一旦」
しかし理子は咎められても足を止めようとしない
◯◯「理子本当にヤバいって」
私は理子の腕を掴んだが、強引に振り払われ
その勢いで尻もちをついた
流石に分かってくれると思っていた、が
遠ざかる彼女をもう誰も止められなかった
◯◯「理子!」
私の叫びも届かず、理子はそのまま出入口から外へ踏み出した
しかし何も起こらなかった
理子「ほら、なんにもないじゃん」
彼女は振り返り、遠くから微笑んだ
彼女が前を向いたその瞬間
鼓膜を破るような銃声音と共に理子は反り返った
何が起こったのか理解できなかった
声の高い関西人は喚きながら縮こまり
強面のお兄さんは目を大きく見開いている
◯◯「___理子?」
私は慌てて出入口の方へ駆け寄った
理子はうつ伏せの状態で倒れていて
その背中は真っ赤に染まっていた
その小さな体はまだ微かに痙攣を起こしていた
◯◯「理子?」
しかし呼びかけてみたが返事はなかった
◯◯「理子!!!」
気づいたら私は嗚咽混じりの声で
彼女の名を叫び続けていた
痙攣していた彼女の体は
いつの間にピクリとも動かなくなっていた
私の様子を見て只事じゃないと察した他の人達も、様子を伺いに出入口へやってきた
彼女の死体を目の当たりにした彼らの
恐怖で怯えた叫び声や嗚咽する声が聞こえたが
そんな彼らの姿を見る余裕は私にはなかった
目の前で親友を失ったショックに
何も考えることができなかった
まるで感情をどこかに置き忘れてきたかのようだった
各々がさっきまで居た部屋に戻り始め
私はテクノカットの人に支えられながら皆の後に続いた
ショッキングな出来事を受けて
誰一人言葉を発する事ができない
殺風景な広い部屋に、しばらく沈黙が続いた
全員の携帯が鳴った
目黒「んだよビックリした」
テクノカットが声を上げた
またメッセージが届いていた
"役職のお知らせ"との文字と共に
何らかの画像のURLが添付されていた
きっとここに役職が書かれているのだろう
皆はついさっき目の前で人が死んだこの何とも言えない空気感の中で
お互いの様子を伺いつつ役職を確認していた
強面のお兄さんは眉間に皺を寄せて携帯の画面とにらめっこしていて
ダメージのある黒スキニーを履いた男の人は驚きからか口を手で覆っていた
彼らの様子を横目に私はURLをゆっくりタップした
___最悪じゃん
目の前で親友を失った私に
これ以上のアクションを起こす力など持ち合わせていなかった
___最悪だよ、本当に、最悪
細々と説明が書かれた画像の一番最後には
同じ役職である二人の顔写真と名前が添えられていた