あなたに出逢えた奇跡に感謝を ~Happy Birthday Dear Masaki&Masaya~
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授業の合間の休み時間。
僕はいつものように本の世界へと入り込む。
賑やかな教室の中にいて、ひとり静かに過ごす事に抵抗はなかったし、むしろその方が面倒な人付き合いをしなくていいと思っていた。
周囲にいるクラスメートも、暗黙の了解のようにそんな僕に話しかけてくることもない。
気にすることと言えば次の授業開始を知らせる鐘の音だけ。
いつもは、教室内の雑音なんて気にも留めてない。なのに何故だか今日に限って、ヒロインと巧、2人の楽しそうな声が僕の耳に響いて集中力が掻き乱される。
「ヒロインちゃんって、手小さいね」
「そうかな? 普通だと思うんだけど」
「絶対小さいよ。ほら、見て。俺の手の半分しかないよ?」
どんなに気にしないようにしても、ヒロインが誰かと話をしてるだけで心の中がざわつく。
ましてその相手が巧なら尚更。到底、平静でなんていられない。
僕は読んでいた本をパタンと閉じて、未だ楽しそうに話し続ける2人に向かって歩き出す。
「あれ? 雅季?」
「えっ! 雅季くん?」
「……ヒロイン。ちょっといい?」
そう訊ねながらも僕の手は既にヒロインの腕を掴んでいて、有無を言わせず巧からヒロインを引き離す。
「ま、雅季くん? な、何?」
「ちょ……おい? 雅季、どこ行くんだよ? もうすぐ次の授業始まる……」
巧の制止の言葉に応えず、ヒロインの腕を強引に掴んだまま、教室から廊下へと歩みを進める。
屋上へと続く階段を上がるところで、次の授業開始を知らせる鐘が高らかに鳴り響いた。
「ね、ねぇっ! 雅季くん、どうしたの? 授業始まっちゃうよ?」
必死にヒロインが僕を宥めるように言う。
「…………」
何も応えない僕にヒロインが戸惑ってるのがわかる。
それに気づかない振りをして屋上の扉を開け放つと、春特有の暖かな日差しと柔らかな風が僕達を出迎えてくれる。
「随分……」
「え……。きゃ……っ!?」
屋上に足を踏み入れると同時に、ヒロインを壁に押しつけて逃げられないように彼女の両肩に手を乗せる。
「楽しそうにしてたね? 巧と」
「そっ、そんな事ないよ」
「その割には巧に手を触られて嬉しそうだったけど?」
「う、嬉しそうになんかしてないよ! だって振り払うのも変だし……それに」
そう言って僕の顔から視線を外し、俯くヒロイン。
「それに、何?」
「雅季くん、本ばっかり読んでて。私と話なんて……」
顔を下に向けたまま、目線だけで僕を見上げる。
僕がその表情に弱いって知っててやってるわけ?
「じゃあ、これから本を読まないようにする。だから……」
ヒロインに自分の顔をぐっと近づける。
「巧とばかり話してないで僕を見てよ」
わざと息が掛かるように耳元で囁くと、ヒロインの体がびくん、と跳ねた。
ヒロインの顔を覗き込むと、トマトみたいに真っ赤に染まっていた。
誰とでも仲良く話すヒロインのこんな表情。
見せるのも僕だけにしてよね。
From Masaki.
