双子誕生日記念ゲームブック~HAPPY HAPPY BIRTHDAY!!~
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結局、あれから雅季くんに似合いそうな色の生地を何点かと、手芸用の小物類も併せて買って。
お屋敷に戻ってすぐに書斎へ行って、雅季くんがよく読んでいる本を何冊か選んで寸法を計って、なんとかサイズ別に2種類のブックカバーが出来上がった。
表裏リバーシブルで、どちらでも使えるようにと、藤色と桜色のシンプルな生地で一針ずつ縫い上げたブックカバー。
差し込みタイプで作ったその内側に、『MASAKI.S』と、刺繍を入れて漸く完成させる事が出来た。
雅季くん、喜んでくれるかな……。
ドキドキしながら、迎えた4月19日。
制服を着て食堂へ向かうと、すでに雅季くんと雅弥くんが一緒に朝食を取っていた。
「おはよう。ヒロイン」
「ヒロイン、遅ぇぞ?」
「おはよう。今日は二人ともゆっくりなんだね?」
そう私が訊ねると、オレンジジュースを飲み干した雅弥くんが答える。
「あぁ、今日は朝練ねぇからな」
「僕も今日は、生徒会の用事はないから」
ここ最近、朝に二人と会う事がなかったから、それだけでなんとなく嬉しくなってしまう。
「ほら。早く食わねぇと置いてっちまうぜ?」
「え? 置いてく、って……」
「どうせ行く所は一緒でしょ? 待ってるから早く朝食食べなよ」
二人からの思いがけない言葉に、「うん!」と返事をする。
――……。
車が西園寺学院近くに差し掛かる。
今日はいつにも増して女子生徒が目立っている。中には学院以外の制服を着た女の子もいる。
……この女の子達、もしかして。
ちらりと二人の様子を盗み見る。けれど、二人はこの光景に全く気付いていないのか、いつもと何ら変わらない。
西園寺学院の高等部に車が着いて二人が先に降りると、あちこちから黄色い声が飛んできた。
その声の多くが二人の誕生日を祝福する内容で、所々で「プレゼントを受け取って」と言う声も聞こえてくる。
す、すごい……。ここに集まってる子達みんな、雅季くんと雅弥くんのファンなんだ。
なんとなく降りるのを躊躇っていると、雅季くんに声を掛けられる。
「何してんの? 早く降りれば?」
まるでこの声が聞こえていないかの様に、驚くほど普段どおりの雅季くん。
「……あ。で、でも」
今降りたら、どうなるか……想像しなくてもわかる展開に、思わず足が震える。
俯いて動こうとしない私に、雅季くんがもう一度車に乗り込み、私の隣に座る。
「ヒロイン。大丈夫……怖いなら、手を繋いでいてあげるから」
そう言われて見上げた雅季くんの表情はとても穏やかで優しくて、その言葉に安心した私はコクンと頷いた。
車から降りて、雅季くんにエスコートされる私の耳に、悲鳴にも似た声が届く。
それでも相手が妹の私だとわかると、雅季くんの紳士的な振る舞いを見た彼女達から再び、熱い声が投げかけられる。
――……。
なんだか今日は朝からずっと気を張り通して疲れてしまった。
お屋敷で開かれた二人の誕生日パーティーの中で御堂さんから聞いた話によると、二人の誕生日当日は毎年あんな感じらしい。
去年は日曜日だった事もあって、今年はいつも以上にたくさんのファンが集まったんだとか。
今日、二人が一緒に登校してくれたのは、私を通してプレゼントを渡されるのを防ぐため。
だけど、それだけじゃないって事は、今朝の彼の行動で窺い知る事が出来る。
たとえ私経由でも、一人でもそれを許してしまうと、みんなの分も受け取らなきゃいけなくなるからって事なんだろうけど……。
「私のプレゼント……受け取ってくれるかなぁ」
パーティーが終わって部屋に戻った私は、昨日用意したプレゼントを見つめて不安になっていた。
その時、控え目にドアをノックする音が聞こえる。
「は、はぁい。あ……雅季くん」
開け放ったドアの向こうに立っていた雅季くんが、人差し指を立てて静かに、と合図を送る。
そして一旦、周囲を気にしてから私の部屋にするりと体を滑りこませた。
「ま、雅季くん、どうしたの? こんな時間に」
「どうしたの、はこっちのセリフ。ヒロイン、何か隠し事してない?」
一瞬、ドキリとする。騒ぐ心臓の音を感じながら、「何もないよ?」と誤魔化す。
「ふうん。今日はずっとそわそわしてる様に見えたけど?」
「あ……」
雅季くん、気づいてたんだ。確かに今日一日、プレゼントをいつ渡そう、ってそわそわしていた。でも……。
「そわそわなんて……してないよ? 気のせいじゃない?」
「そう? てっきりヒロインは僕に、何か渡したい物があるんじゃないかと思ったんだけど?」
雅季くんが一歩近づいて、私の顔を覗き込む。
私の心の中を見透かそうとする様に、彼のチョコレート色の瞳が私を映し出す。
……ずるい。こんな風に見つめられたらもう誤魔化しきれないよ。
「受け取って……くれるの?」
「僕がいつ『受け取らない』なんて言ったの?」
「だって、今日は誰のプレゼントも受け取らないって……」
「ヒロインのは違うでしょ? 僕の恋人、なんだから」
『恋人』という響きに胸の中に温かな安らぎが広がっていく。
雅季くんにとって私が特別な存在だと言われた様で嬉しくなる。
「誕生日おめでとう。雅季くん」
綺麗にラッピングしたプレゼントを雅季くんに手渡すと、嬉しそうに目を細めて彼が「ありがとう」と受け取ってくれる。
「……ブックカバー?」
ベッドに腰掛けて、渡したプレゼントのラッピングを綺麗に剥がした雅季くんが、中身を確認する。
「うん! 雅季くん、本読むの好きでしょ? 頑張って作ったんだ」
「へえ、ヒロインの手作りなんだ? それで縫い目がずれてるんだ?」
「えっ!? へ、変? 上手く出来たと思ったのに……」
隣に座る雅季くんの手にあるブックカバーの縫い目を慌てて確認すると、くすっと笑う声。
「冗談だよ。上手く出来てる」
「も、もう! 雅季くんの意地悪!」
ぷいっ、とそっぽを向くと後ろからふわっ、と包み込まれる。
「ありがとう、ヒロイン。お礼したいから、こっち向いて?」
耳元で囁かれた声にぴくん、と反応する。まるで魔法にかけられたように、素直に雅季くんの方を向くと、唇に柔らかな感触が一瞬あった。
それが雅季くんの唇だという事は言うまでもなく。
恥ずかしくて顔を俯かせた私に、雅季くんが声を掛ける。
「ね。もうひとつ、プレゼント欲しいんだけど……いい?」
「え……もう、ひとつ?」
「ヒロインからキス……してくれない?」
雅季くんのお願いに私は……。
お屋敷に戻ってすぐに書斎へ行って、雅季くんがよく読んでいる本を何冊か選んで寸法を計って、なんとかサイズ別に2種類のブックカバーが出来上がった。
表裏リバーシブルで、どちらでも使えるようにと、藤色と桜色のシンプルな生地で一針ずつ縫い上げたブックカバー。
差し込みタイプで作ったその内側に、『MASAKI.S』と、刺繍を入れて漸く完成させる事が出来た。
雅季くん、喜んでくれるかな……。
ドキドキしながら、迎えた4月19日。
制服を着て食堂へ向かうと、すでに雅季くんと雅弥くんが一緒に朝食を取っていた。
「おはよう。ヒロイン」
「ヒロイン、遅ぇぞ?」
「おはよう。今日は二人ともゆっくりなんだね?」
そう私が訊ねると、オレンジジュースを飲み干した雅弥くんが答える。
「あぁ、今日は朝練ねぇからな」
「僕も今日は、生徒会の用事はないから」
ここ最近、朝に二人と会う事がなかったから、それだけでなんとなく嬉しくなってしまう。
「ほら。早く食わねぇと置いてっちまうぜ?」
「え? 置いてく、って……」
「どうせ行く所は一緒でしょ? 待ってるから早く朝食食べなよ」
二人からの思いがけない言葉に、「うん!」と返事をする。
――……。
車が西園寺学院近くに差し掛かる。
今日はいつにも増して女子生徒が目立っている。中には学院以外の制服を着た女の子もいる。
……この女の子達、もしかして。
ちらりと二人の様子を盗み見る。けれど、二人はこの光景に全く気付いていないのか、いつもと何ら変わらない。
西園寺学院の高等部に車が着いて二人が先に降りると、あちこちから黄色い声が飛んできた。
その声の多くが二人の誕生日を祝福する内容で、所々で「プレゼントを受け取って」と言う声も聞こえてくる。
す、すごい……。ここに集まってる子達みんな、雅季くんと雅弥くんのファンなんだ。
なんとなく降りるのを躊躇っていると、雅季くんに声を掛けられる。
「何してんの? 早く降りれば?」
まるでこの声が聞こえていないかの様に、驚くほど普段どおりの雅季くん。
「……あ。で、でも」
今降りたら、どうなるか……想像しなくてもわかる展開に、思わず足が震える。
俯いて動こうとしない私に、雅季くんがもう一度車に乗り込み、私の隣に座る。
「ヒロイン。大丈夫……怖いなら、手を繋いでいてあげるから」
そう言われて見上げた雅季くんの表情はとても穏やかで優しくて、その言葉に安心した私はコクンと頷いた。
車から降りて、雅季くんにエスコートされる私の耳に、悲鳴にも似た声が届く。
それでも相手が妹の私だとわかると、雅季くんの紳士的な振る舞いを見た彼女達から再び、熱い声が投げかけられる。
――……。
なんだか今日は朝からずっと気を張り通して疲れてしまった。
お屋敷で開かれた二人の誕生日パーティーの中で御堂さんから聞いた話によると、二人の誕生日当日は毎年あんな感じらしい。
去年は日曜日だった事もあって、今年はいつも以上にたくさんのファンが集まったんだとか。
今日、二人が一緒に登校してくれたのは、私を通してプレゼントを渡されるのを防ぐため。
だけど、それだけじゃないって事は、今朝の彼の行動で窺い知る事が出来る。
たとえ私経由でも、一人でもそれを許してしまうと、みんなの分も受け取らなきゃいけなくなるからって事なんだろうけど……。
「私のプレゼント……受け取ってくれるかなぁ」
パーティーが終わって部屋に戻った私は、昨日用意したプレゼントを見つめて不安になっていた。
その時、控え目にドアをノックする音が聞こえる。
「は、はぁい。あ……雅季くん」
開け放ったドアの向こうに立っていた雅季くんが、人差し指を立てて静かに、と合図を送る。
そして一旦、周囲を気にしてから私の部屋にするりと体を滑りこませた。
「ま、雅季くん、どうしたの? こんな時間に」
「どうしたの、はこっちのセリフ。ヒロイン、何か隠し事してない?」
一瞬、ドキリとする。騒ぐ心臓の音を感じながら、「何もないよ?」と誤魔化す。
「ふうん。今日はずっとそわそわしてる様に見えたけど?」
「あ……」
雅季くん、気づいてたんだ。確かに今日一日、プレゼントをいつ渡そう、ってそわそわしていた。でも……。
「そわそわなんて……してないよ? 気のせいじゃない?」
「そう? てっきりヒロインは僕に、何か渡したい物があるんじゃないかと思ったんだけど?」
雅季くんが一歩近づいて、私の顔を覗き込む。
私の心の中を見透かそうとする様に、彼のチョコレート色の瞳が私を映し出す。
……ずるい。こんな風に見つめられたらもう誤魔化しきれないよ。
「受け取って……くれるの?」
「僕がいつ『受け取らない』なんて言ったの?」
「だって、今日は誰のプレゼントも受け取らないって……」
「ヒロインのは違うでしょ? 僕の恋人、なんだから」
『恋人』という響きに胸の中に温かな安らぎが広がっていく。
雅季くんにとって私が特別な存在だと言われた様で嬉しくなる。
「誕生日おめでとう。雅季くん」
綺麗にラッピングしたプレゼントを雅季くんに手渡すと、嬉しそうに目を細めて彼が「ありがとう」と受け取ってくれる。
「……ブックカバー?」
ベッドに腰掛けて、渡したプレゼントのラッピングを綺麗に剥がした雅季くんが、中身を確認する。
「うん! 雅季くん、本読むの好きでしょ? 頑張って作ったんだ」
「へえ、ヒロインの手作りなんだ? それで縫い目がずれてるんだ?」
「えっ!? へ、変? 上手く出来たと思ったのに……」
隣に座る雅季くんの手にあるブックカバーの縫い目を慌てて確認すると、くすっと笑う声。
「冗談だよ。上手く出来てる」
「も、もう! 雅季くんの意地悪!」
ぷいっ、とそっぽを向くと後ろからふわっ、と包み込まれる。
「ありがとう、ヒロイン。お礼したいから、こっち向いて?」
耳元で囁かれた声にぴくん、と反応する。まるで魔法にかけられたように、素直に雅季くんの方を向くと、唇に柔らかな感触が一瞬あった。
それが雅季くんの唇だという事は言うまでもなく。
恥ずかしくて顔を俯かせた私に、雅季くんが声を掛ける。
「ね。もうひとつ、プレゼント欲しいんだけど……いい?」
「え……もう、ひとつ?」
「ヒロインからキス……してくれない?」
雅季くんのお願いに私は……。
