揺れるキモチ、変わらない想い
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「……っふ……う~…………。も、やだぁ」
溢れ出る涙とともに後悔が押し寄せる。
あの時、チョコを渡された時にちゃんと断ればよかった――そうすればこんな事にはならなかった。
受け取ってしまった後でこんな事言っても仕方ないってわかってる。だからちゃんと返してこようと思ってたのに。
「……ひっ……く……雅季くん……のばかぁ。なんで……貰っとけば、なんて言うのよぉ……」
いつもだったら私が男の子といるだけで怒るクセに……。
「何……考えてるのか全然……わかんない……よぉ……」
「……誰がバカだって?」
「え……ッ!?」
誰もいないと思っていたそこで、突然聞こえた声に驚くと同時に私の体は後ろからふわりと優しく抱きしめられる。
「キミに言われたくないんだけど?」
トクン……トクン……。後ろを振り向かなくてもわかる。声、話し方、強引なクセに遠慮がちに優しく包み込む腕、背中に感じる体温。……私が一番安心できる温もり。
「な、なんでここにいるの? もう授業始まってるよ?」
「それはお互い様でしょ? キミこそ、こんなとこでなに泣いてるの?」
「な、泣いてない……っもん」
頬を伝い落ちる涙を彼に見えないように、と拭ったその手を雅季くんが捕らえる。
「ヒロインは嘘つくの下手すぎ。僕が気づいてないとでも思ってるの?」
耳元で囁かれる優しい声。堪えきれない涙が再び頬を滑り落ちていく。
「だ……って、雅季くん『勝手にすれば』なんて歩いていっちゃ……っから。……も……私の事なんか、どうでもよくなったのかって……」
「何それ……どうでもよかったらこんな風にしなくない?」
「じゃあなんでっ……貰っとけばって……返しに行かなくていいなんて……言ったの?」
「それは……! ………………から」
「え?」
急に小声になった雅季くんの声を聞き取る為に振り向こうとした瞬間、ぎゅっと強く抱きしめられる。
「…………嫌だったんだ」
「え……?」
「チョコを返す為だとしても、ヒロインを他の男のところに行かせたくなかった」
「だって……ただ返しに行くだけ、だよ?」
「でも周りはそう思わないかもしれないでしょ? キミがチョコを配り歩いてる、なんてくだらない事を言う輩がいるかもしれない。だったらヒロインが、わざわざ返しに行く必要はないと思ったんだ」
「雅季くん……」
そっか……考えてみたらそうだよね。そこまで気にしてなかった。
「ごめんなさい……私、自分の事しか考えてなかった」
バカなのは私だ……。雅季くんはちゃんと考えてくれていたのに。
「……今度からさ」
「ん?」
「誰かに何か渡されても絶対受け取らないって約束して」
「うん。もう受け取らない」
「それから……これ以上僕に、ヤキモチ妬かせないで?」
「……っ! う、うん」
吐息混じりに言われて急激に顔に熱が集中する。
「ヒロイン……耳赤いけど寒い?」
「だっ、大丈夫」
「そろそろ校舎に戻ろうか。風邪ひくといけない」
「あ……っ」
背中に感じていた温もりが離れる間際、思わず雅季くんの腕を掴んでしまう。
「ヒロイン……どうかした?」
「あ、えっと……大丈夫だからもうちょっとだけ……」
こうしていたい。そう訴えると雅季くんはふっ、と笑う。
「心配しなくても教室には戻らないよ。僕もヒロインをもっと抱きしめていたいから」
「……!!」
今はまだ授業中だからここにいるのは僕達だけだしね、と私の手を引く雅季くん。
耳元で囁かれた甘い言葉にクラリとする。
世界中の甘いお菓子をたくさん集めても、雅季くんと過ごせる充足感には適わない。
たまにケンカしたりすれ違う事もあるけど、雅季くんを想う気持ちだけは絶対に変わらない。
この想いだけはきっと揺らぐ事なくずっと続いていく――。
END...
† Masaki side †
あの時、本当は見てたんだ。
ヒロインが他の男から何かを渡されてるのを。
車を降りて直ぐで突然だったかもしれないけど、なんで受け取ってるわけ?
明日が何の日で今年は男から渡すのがブームになってるって知らないんだろうか。
それにしたって受け取る事ないよね?
ヒロインが戸惑いながらも校舎へ近づいてくるのを確認して、偶然を装って彼女の背後から声を掛けると予想外に驚かれた。
彼女の落としたたくさんの箱を拾い上げその近くにあったカードに目を通すと、そこにはヒロインへのメッセージが書かれていた。
やっぱり逆チョコって奴か。まったく……嫌な予感ほどよく当たる。
しかもヒロインはこれが逆チョコだってわかっていて、一人で返しに行くなんて言っている。
ねぇ? 本当にわかってる? 明日がバレンタインだって事。ヒロインは貰ったものを返しに行くつもりでも、周りにはそう映らないんだよ?
何よりヒロインが僕以外の男にわざわざ会いに行く事が我慢できなかった。
ヒロインが返しに行かなくったって、雅弥に一言言えば自然と渡し主に戻っていくはずだ。
嫉妬という感情に支配されていた僕は知らない内にヒロインを傷つけていた。
“ほっといて!”彼女から放たれた拒絶の言葉……。だけどそれを言わせたのは僕。
その時の僕に余裕なんてなかった。ヒロインが呼び止めるのは聞こえていたけど、ヒロインの傍にいるともっと傷つけかねなかった。
教室へ向かう足を止め、向かった先は屋上。
とてもじゃないけどこんな状態で授業を受ける気になれなかった。
こんな季節に屋上へ来る生徒はまずいないから、一人になるには都合がいい。
ヒロインが関係すると僕は冷静でいられなくなる。
こんな自分がいたことに戸惑ってしまう。
一人、風に当たっていると、屋上の扉が開かれて誰かの気配を感じた。
真冬にこんな場所に来る物好きなんて、一人しか知らない。
息を殺してゆっくり近づいてふと耳に飛び込んできたのは、僕に向けられた恨み言。
なのに、どうしてだろう? ヒロインへの愛しさが溢れ出してたまらなくなって……。
気がついたら後ろから彼女を抱きしめていた。
無理に強がるところも素直に甘えるところも
何もかも愛しい。
誰にも邪魔されない
二人だけの時間。
去年までバレンタインなんて興味がなくて、製菓会社にいいように躍らされてるだけとしか思えなかった。
だけど今年からは
ヒロインとこうして過ごせるなら
躍らされてみるのも悪くないかもね?
END.
溢れ出る涙とともに後悔が押し寄せる。
あの時、チョコを渡された時にちゃんと断ればよかった――そうすればこんな事にはならなかった。
受け取ってしまった後でこんな事言っても仕方ないってわかってる。だからちゃんと返してこようと思ってたのに。
「……ひっ……く……雅季くん……のばかぁ。なんで……貰っとけば、なんて言うのよぉ……」
いつもだったら私が男の子といるだけで怒るクセに……。
「何……考えてるのか全然……わかんない……よぉ……」
「……誰がバカだって?」
「え……ッ!?」
誰もいないと思っていたそこで、突然聞こえた声に驚くと同時に私の体は後ろからふわりと優しく抱きしめられる。
「キミに言われたくないんだけど?」
トクン……トクン……。後ろを振り向かなくてもわかる。声、話し方、強引なクセに遠慮がちに優しく包み込む腕、背中に感じる体温。……私が一番安心できる温もり。
「な、なんでここにいるの? もう授業始まってるよ?」
「それはお互い様でしょ? キミこそ、こんなとこでなに泣いてるの?」
「な、泣いてない……っもん」
頬を伝い落ちる涙を彼に見えないように、と拭ったその手を雅季くんが捕らえる。
「ヒロインは嘘つくの下手すぎ。僕が気づいてないとでも思ってるの?」
耳元で囁かれる優しい声。堪えきれない涙が再び頬を滑り落ちていく。
「だ……って、雅季くん『勝手にすれば』なんて歩いていっちゃ……っから。……も……私の事なんか、どうでもよくなったのかって……」
「何それ……どうでもよかったらこんな風にしなくない?」
「じゃあなんでっ……貰っとけばって……返しに行かなくていいなんて……言ったの?」
「それは……! ………………から」
「え?」
急に小声になった雅季くんの声を聞き取る為に振り向こうとした瞬間、ぎゅっと強く抱きしめられる。
「…………嫌だったんだ」
「え……?」
「チョコを返す為だとしても、ヒロインを他の男のところに行かせたくなかった」
「だって……ただ返しに行くだけ、だよ?」
「でも周りはそう思わないかもしれないでしょ? キミがチョコを配り歩いてる、なんてくだらない事を言う輩がいるかもしれない。だったらヒロインが、わざわざ返しに行く必要はないと思ったんだ」
「雅季くん……」
そっか……考えてみたらそうだよね。そこまで気にしてなかった。
「ごめんなさい……私、自分の事しか考えてなかった」
バカなのは私だ……。雅季くんはちゃんと考えてくれていたのに。
「……今度からさ」
「ん?」
「誰かに何か渡されても絶対受け取らないって約束して」
「うん。もう受け取らない」
「それから……これ以上僕に、ヤキモチ妬かせないで?」
「……っ! う、うん」
吐息混じりに言われて急激に顔に熱が集中する。
「ヒロイン……耳赤いけど寒い?」
「だっ、大丈夫」
「そろそろ校舎に戻ろうか。風邪ひくといけない」
「あ……っ」
背中に感じていた温もりが離れる間際、思わず雅季くんの腕を掴んでしまう。
「ヒロイン……どうかした?」
「あ、えっと……大丈夫だからもうちょっとだけ……」
こうしていたい。そう訴えると雅季くんはふっ、と笑う。
「心配しなくても教室には戻らないよ。僕もヒロインをもっと抱きしめていたいから」
「……!!」
今はまだ授業中だからここにいるのは僕達だけだしね、と私の手を引く雅季くん。
耳元で囁かれた甘い言葉にクラリとする。
世界中の甘いお菓子をたくさん集めても、雅季くんと過ごせる充足感には適わない。
たまにケンカしたりすれ違う事もあるけど、雅季くんを想う気持ちだけは絶対に変わらない。
この想いだけはきっと揺らぐ事なくずっと続いていく――。
END...
† Masaki side †
あの時、本当は見てたんだ。
ヒロインが他の男から何かを渡されてるのを。
車を降りて直ぐで突然だったかもしれないけど、なんで受け取ってるわけ?
明日が何の日で今年は男から渡すのがブームになってるって知らないんだろうか。
それにしたって受け取る事ないよね?
ヒロインが戸惑いながらも校舎へ近づいてくるのを確認して、偶然を装って彼女の背後から声を掛けると予想外に驚かれた。
彼女の落としたたくさんの箱を拾い上げその近くにあったカードに目を通すと、そこにはヒロインへのメッセージが書かれていた。
やっぱり逆チョコって奴か。まったく……嫌な予感ほどよく当たる。
しかもヒロインはこれが逆チョコだってわかっていて、一人で返しに行くなんて言っている。
ねぇ? 本当にわかってる? 明日がバレンタインだって事。ヒロインは貰ったものを返しに行くつもりでも、周りにはそう映らないんだよ?
何よりヒロインが僕以外の男にわざわざ会いに行く事が我慢できなかった。
ヒロインが返しに行かなくったって、雅弥に一言言えば自然と渡し主に戻っていくはずだ。
嫉妬という感情に支配されていた僕は知らない内にヒロインを傷つけていた。
“ほっといて!”彼女から放たれた拒絶の言葉……。だけどそれを言わせたのは僕。
その時の僕に余裕なんてなかった。ヒロインが呼び止めるのは聞こえていたけど、ヒロインの傍にいるともっと傷つけかねなかった。
教室へ向かう足を止め、向かった先は屋上。
とてもじゃないけどこんな状態で授業を受ける気になれなかった。
こんな季節に屋上へ来る生徒はまずいないから、一人になるには都合がいい。
ヒロインが関係すると僕は冷静でいられなくなる。
こんな自分がいたことに戸惑ってしまう。
一人、風に当たっていると、屋上の扉が開かれて誰かの気配を感じた。
真冬にこんな場所に来る物好きなんて、一人しか知らない。
息を殺してゆっくり近づいてふと耳に飛び込んできたのは、僕に向けられた恨み言。
なのに、どうしてだろう? ヒロインへの愛しさが溢れ出してたまらなくなって……。
気がついたら後ろから彼女を抱きしめていた。
無理に強がるところも素直に甘えるところも
何もかも愛しい。
誰にも邪魔されない
二人だけの時間。
去年までバレンタインなんて興味がなくて、製菓会社にいいように躍らされてるだけとしか思えなかった。
だけど今年からは
ヒロインとこうして過ごせるなら
躍らされてみるのも悪くないかもね?
END.
