揺れるキモチ、変わらない想い
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明日は2月14日――聖バレンタインデー。
一年に一度、女の子に告白する勇気を与えてくれる大切な日。
でも今年は……ちょっと違うみたい。
2月13日。いつものように学院の正門前で車を降りた私は、あっという間に男の子たちにとり囲まれてしまった。
「おはよう西園寺さん! これ本場のベルギーから取り寄せたんだよ」
「俺のは超有名なショコラティエに君をイメージして作らせた特別なチョコだから」
その後も俺のは俺のは、と矢継ぎ早にそれぞれアピールを始める男の子たち。
「え? あ、あの……?」
「受け取って!!」
私に答える間も与えず、半ば勢いに圧されたのも手伝って反射的に彼らに差し出された品物を受け取ると、ひと仕事終えて満足そうな顔つきの男の子たちは校舎へ向かっていった。
「えっと…………チョコレート? これ、もしかして逆チョコ?」
去年までのバレンタインは女の子がチョコを渡す日だった。だけど今年は、男の子が女の子にチョコを渡す“逆チョコ”がブームだと聞いてはいた。
でもまさか自分がそれを経験するなんて……。
「どうしよう。受け取っちゃった」
困りながら手の中にあるチョコの包みに視線を落とすと、可愛らしいカードが差し込まれているのが見えた。
「あ、ちゃんとクラスと名前が書いてある」
んー。一度受け取った物を返すのは失礼な事かもしれないけど……。
「でもやっぱり受け取れないもんね」
うん。返してこよう。それでちゃんと『受け取れません』って断らなきゃ。
今の内に返してくれば雅季くんに知られずに済むよね。今日は会議があるって言ってたから、まだ生徒会室にいるはずだし。
そう頭を巡らせながら廊下を歩いていたちょうどその時。
「ヒロイン」
「きゃあっ!?」
突然後ろから声を掛けられ、驚いた弾みで手に持っていたチョコをばらばらと落としてしまった。
「ごめん。そんなに驚くと思わなかった」
「ま、雅季くん!? か、会議だったんじゃ……?」
「ああ。もう終わったから。ていうか……どうしたの、これ」
そう言って、私が落としたチョコを拾い上げる雅季くん。
「あ、えと……な、なんか貰っちゃってっ!」
誤魔化すように笑って彼に倣って慌ててチョコを拾う。
「ふーん。……誰から?」
「え……えっと……」
……どうしよう。男の子から、なんて言ったら不機嫌になるよね。でも、嘘つくわけにもいかないし……。
「キミが好きです」
「えっ!?」
「僕とつきあってください」
突然の雅季くんの発言にびっくりして俯けていた顔をあげると、彼の手元にはさっきのカードが。
「あ……」
なんだ、びっくりした……。そっか、落とした時にカードも床に散らばっちゃったんだ。
「こっちは“今度どこか遊びに行こうよ”って書いてあるけど……ヒロイン、行くの?」
「い、行かないよっ! そ、それにいま返しにいこうと思ってたところだもん!」
「返す? ……まさか1人で行くつもり?」
雅季くんの言葉に頷く。と、途端に彼の表情が不機嫌なものに変わる。
「雅季くん?」
「行かなくていい」
「……え。何で?」
「せっかくだし貰っとけば? ヒロイン、甘いもの好きなんだし」
「も、貰えるわけないじゃん!! だってこれ、逆チョコだしっ!」
「へぇ……逆チョコってわかってるんだ? それなのに受け取ったんだ」
「……だ、だって急に渡されたから」
「それでもその場で断る事くらい出来たんじゃない? 少なくとも僕ならそうする」
「……っ!!」
雅季くんの言ってることは正論で、冷静な言葉のひとつひとつが私の軽率さを責める棘のように胸に突き刺さる。
「…………返してくる」
「だから行く事ないって言って……」
「いいのっ! 返してくるって言ったら返してくるんだからほっといて!!」
雅季くんの話を遮って出たのは、感情に任せた強い口調。
不意に口をついて出た言葉にはっとして、謝ろうと顔をあげる。
でも、彼の傷ついたような表情の前に私は何も言えなくなってしまう。
「……そ。じゃあ勝手にすれば?」
そう言って立ち上がった雅季くんの背中がどんどん遠くなる。
「え? ちょっと……雅季くん!?」
慌てて呼びかけたものの彼の姿はすでに見えなくなっていて、私の声は予鈴の音に虚しくかき消された。
どうしよう。雅季くん怒っちゃった。すごく、悲しそうな表情(かお)してた……。
彼が床の上に綺麗に整頓して積んでくれたチョコをぼんやりと見て、のろのろとそれを腕に抱え持つ。
予鈴鳴っちゃったし今は返しに行けないよね。教室、行かなきゃ……。
だけど私の足は教室とは違う方へ向いていた。
――……
「……あれ? なんで私」
教室に行ったら席が前後の雅季くんと顔を合わせるの気まずいな、と考えながら歩いていたらいつの間にか屋上に来ていたらしい。
今日は晴れて太陽の光が降り注いでいるものの、春まだ遠い2月。吹きつける風は容赦なく全身を刺すように冷たくしていく。
寒いけど、頭を冷やすには丁度いい。
腕に抱えていたチョコを日の当たらない場所に置いてから、自分は日当たりのいい場所に腰を下ろす。
「はぁ……。なんでこんな日にケンカしちゃうんだろ……」
予定では今日は明日のために手作りチョコを作って、初めてのバレンタインを雅季くんと迎えるはずだった。
大好きな人と過ごす最高の1日になる……はずだったのに。
一年に一度、女の子に告白する勇気を与えてくれる大切な日。
でも今年は……ちょっと違うみたい。
2月13日。いつものように学院の正門前で車を降りた私は、あっという間に男の子たちにとり囲まれてしまった。
「おはよう西園寺さん! これ本場のベルギーから取り寄せたんだよ」
「俺のは超有名なショコラティエに君をイメージして作らせた特別なチョコだから」
その後も俺のは俺のは、と矢継ぎ早にそれぞれアピールを始める男の子たち。
「え? あ、あの……?」
「受け取って!!」
私に答える間も与えず、半ば勢いに圧されたのも手伝って反射的に彼らに差し出された品物を受け取ると、ひと仕事終えて満足そうな顔つきの男の子たちは校舎へ向かっていった。
「えっと…………チョコレート? これ、もしかして逆チョコ?」
去年までのバレンタインは女の子がチョコを渡す日だった。だけど今年は、男の子が女の子にチョコを渡す“逆チョコ”がブームだと聞いてはいた。
でもまさか自分がそれを経験するなんて……。
「どうしよう。受け取っちゃった」
困りながら手の中にあるチョコの包みに視線を落とすと、可愛らしいカードが差し込まれているのが見えた。
「あ、ちゃんとクラスと名前が書いてある」
んー。一度受け取った物を返すのは失礼な事かもしれないけど……。
「でもやっぱり受け取れないもんね」
うん。返してこよう。それでちゃんと『受け取れません』って断らなきゃ。
今の内に返してくれば雅季くんに知られずに済むよね。今日は会議があるって言ってたから、まだ生徒会室にいるはずだし。
そう頭を巡らせながら廊下を歩いていたちょうどその時。
「ヒロイン」
「きゃあっ!?」
突然後ろから声を掛けられ、驚いた弾みで手に持っていたチョコをばらばらと落としてしまった。
「ごめん。そんなに驚くと思わなかった」
「ま、雅季くん!? か、会議だったんじゃ……?」
「ああ。もう終わったから。ていうか……どうしたの、これ」
そう言って、私が落としたチョコを拾い上げる雅季くん。
「あ、えと……な、なんか貰っちゃってっ!」
誤魔化すように笑って彼に倣って慌ててチョコを拾う。
「ふーん。……誰から?」
「え……えっと……」
……どうしよう。男の子から、なんて言ったら不機嫌になるよね。でも、嘘つくわけにもいかないし……。
「キミが好きです」
「えっ!?」
「僕とつきあってください」
突然の雅季くんの発言にびっくりして俯けていた顔をあげると、彼の手元にはさっきのカードが。
「あ……」
なんだ、びっくりした……。そっか、落とした時にカードも床に散らばっちゃったんだ。
「こっちは“今度どこか遊びに行こうよ”って書いてあるけど……ヒロイン、行くの?」
「い、行かないよっ! そ、それにいま返しにいこうと思ってたところだもん!」
「返す? ……まさか1人で行くつもり?」
雅季くんの言葉に頷く。と、途端に彼の表情が不機嫌なものに変わる。
「雅季くん?」
「行かなくていい」
「……え。何で?」
「せっかくだし貰っとけば? ヒロイン、甘いもの好きなんだし」
「も、貰えるわけないじゃん!! だってこれ、逆チョコだしっ!」
「へぇ……逆チョコってわかってるんだ? それなのに受け取ったんだ」
「……だ、だって急に渡されたから」
「それでもその場で断る事くらい出来たんじゃない? 少なくとも僕ならそうする」
「……っ!!」
雅季くんの言ってることは正論で、冷静な言葉のひとつひとつが私の軽率さを責める棘のように胸に突き刺さる。
「…………返してくる」
「だから行く事ないって言って……」
「いいのっ! 返してくるって言ったら返してくるんだからほっといて!!」
雅季くんの話を遮って出たのは、感情に任せた強い口調。
不意に口をついて出た言葉にはっとして、謝ろうと顔をあげる。
でも、彼の傷ついたような表情の前に私は何も言えなくなってしまう。
「……そ。じゃあ勝手にすれば?」
そう言って立ち上がった雅季くんの背中がどんどん遠くなる。
「え? ちょっと……雅季くん!?」
慌てて呼びかけたものの彼の姿はすでに見えなくなっていて、私の声は予鈴の音に虚しくかき消された。
どうしよう。雅季くん怒っちゃった。すごく、悲しそうな表情(かお)してた……。
彼が床の上に綺麗に整頓して積んでくれたチョコをぼんやりと見て、のろのろとそれを腕に抱え持つ。
予鈴鳴っちゃったし今は返しに行けないよね。教室、行かなきゃ……。
だけど私の足は教室とは違う方へ向いていた。
――……
「……あれ? なんで私」
教室に行ったら席が前後の雅季くんと顔を合わせるの気まずいな、と考えながら歩いていたらいつの間にか屋上に来ていたらしい。
今日は晴れて太陽の光が降り注いでいるものの、春まだ遠い2月。吹きつける風は容赦なく全身を刺すように冷たくしていく。
寒いけど、頭を冷やすには丁度いい。
腕に抱えていたチョコを日の当たらない場所に置いてから、自分は日当たりのいい場所に腰を下ろす。
「はぁ……。なんでこんな日にケンカしちゃうんだろ……」
予定では今日は明日のために手作りチョコを作って、初めてのバレンタインを雅季くんと迎えるはずだった。
大好きな人と過ごす最高の1日になる……はずだったのに。
