SONGS 〜MASAKI〜
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『お疲れ様。天気予報だと、今日は晴れなんだって。天の川、雅季くんと一緒に見たいな……』
携帯メールの本文に書いた文章。それをじっと見つめている。だけど送信ボタンは押せないまま、時間だけが過ぎていく。
「……やっぱり、迷惑……だよね」
今頃雅季くんは、一人暮らしのアパートで、一生懸命次の脚本に取り組んでいるはずだし。
悩んだ末押したのは、送信ボタンではなく電源の方。
『保存しないで終了』を選んで、携帯のフリップを閉じる。
まだ彼が西園寺のお屋敷にいた頃は、会いたい時にいつでも会いに行けたのに……。
あれからいくつかの季節を過ごして、一人暮らしを始めた雅季くんが夢を叶えて……。
それと同時に脚本の依頼が増えた事で、彼に会う時間は日に日に少なくなっていた。
雅季くんに会いたい、声が聞きたい……雅季くんに触れたい。
雅季くんは違うのかな? 私と会えなくても平気……なのかな。会いたいって思うのは、ワガママなのかなぁ?
そんな事を考え始めると心がだんだん寂しさに支配されて、頬を雫が伝っていく。
一年に一度しか彦星に会えない織姫って、こんな気持ちをずっと抱えているの?
私には耐えられないよ……。
一頻り涙を流した後、窓を開けて夜空を見上げる。
今日は晴れる、と言っていたのに、予報に反して雲が空を覆い始めている。
「これじゃ、天の川見れないよ……」
しばらく眺めていると、雲が切れて東京の空には珍しく、たくさんの星が瞬き始める。
と、同時に先程閉じた携帯が音を奏で出す。
『……ヒロイン』
「雅季……くん」
ディスプレイに映し出された名前に、半信半疑のまま取った携帯から、待ち望んでいた声が聞こえる。
『今……なにしてた?』
「あ、えっと。空……見てた。今日、七夕……だから」
『ふーん……』
続かない会話。いろいろ話したい事はいっぱいあったはずなのに……。
「ま、雅季くんは? なにしてたの? って、脚本書いてたに決まってるよね」
それでも、沈黙が怖くて話し続ける。
『……僕も』
「え……?」
『空、見てた。天の川が雲に隠れたから……。でももし、この雲が晴れたらヒロインに電話しよう、って……』
『ヒロイン、こっち……来ない?』
「え……だって、雅季くんお仕事中で……」
『別に。気にならないから』
「迷惑じゃ……ない?」
『僕がいつ迷惑だなんて言ったの?』
「で、でも……」
未だ戸惑う私に、痺れを切らしたように雅季くんが言う。
『わかった。じゃあ、僕の方からそっち、行くから』
「え?」
電話はまだ繋がった状態。その証拠に、鍵を掛ける金属音や階段を駆け下りる足音が受話器越しに聞こえてくる。
『言っとくけど、キミのせいだからね』
「えっ? 何が?」
『脚本のイメージが全然沸かないのも……一行も書けないのも……キミが全然、顔を見せないから……っ』
「…………」
『責任、取ってよ……ヒロイン』
表面上では憎まれ口のオンパレード。だけど……雅季くんも私と同じように会いたいと思ってくれてたんだ。
「ま、待って! 私も今から行く!」
携帯だけを持って部屋を出て、お屋敷を飛び出す。
夕方に降った雨の名残か、少し湿った風が頬を髪を撫でていく。
頭上には満天の星空。天の川を挟んで一年に一度の逢瀬を果たしたベガとアルタイルが、臆病な私を後押しするかのように、一層輝きを放っている――。
7月7日、晴れ
/DREAMS COME TRUE
おまけ。
「あ、また雲に隠れちゃった」
雅季くんのアパートの窓から、雲に隠れた空を見上げる。
「でも雨は降ってないんだし、いいんじゃない?」
私のすぐ後ろで、机に向かってペンを絶えず走らせている雅季くんがそう応える。
「せっかく一年に一度っきりなのに……」
未練がましく夜空をじっと見上げ続けていると、いつの間に移動したのか雅季くんが後ろから私を包み込む。
「一年に一度っきりだから、じゃない? 空の2人だって、そろそろ2人っきりになりたいだろうし。……こんな風に、ね?」
7月7日。七夕。
短冊に願いを乗せて
みんなの願い事が叶いますように――。
携帯メールの本文に書いた文章。それをじっと見つめている。だけど送信ボタンは押せないまま、時間だけが過ぎていく。
「……やっぱり、迷惑……だよね」
今頃雅季くんは、一人暮らしのアパートで、一生懸命次の脚本に取り組んでいるはずだし。
悩んだ末押したのは、送信ボタンではなく電源の方。
『保存しないで終了』を選んで、携帯のフリップを閉じる。
まだ彼が西園寺のお屋敷にいた頃は、会いたい時にいつでも会いに行けたのに……。
あれからいくつかの季節を過ごして、一人暮らしを始めた雅季くんが夢を叶えて……。
それと同時に脚本の依頼が増えた事で、彼に会う時間は日に日に少なくなっていた。
雅季くんに会いたい、声が聞きたい……雅季くんに触れたい。
雅季くんは違うのかな? 私と会えなくても平気……なのかな。会いたいって思うのは、ワガママなのかなぁ?
そんな事を考え始めると心がだんだん寂しさに支配されて、頬を雫が伝っていく。
一年に一度しか彦星に会えない織姫って、こんな気持ちをずっと抱えているの?
私には耐えられないよ……。
一頻り涙を流した後、窓を開けて夜空を見上げる。
今日は晴れる、と言っていたのに、予報に反して雲が空を覆い始めている。
「これじゃ、天の川見れないよ……」
しばらく眺めていると、雲が切れて東京の空には珍しく、たくさんの星が瞬き始める。
と、同時に先程閉じた携帯が音を奏で出す。
『……ヒロイン』
「雅季……くん」
ディスプレイに映し出された名前に、半信半疑のまま取った携帯から、待ち望んでいた声が聞こえる。
『今……なにしてた?』
「あ、えっと。空……見てた。今日、七夕……だから」
『ふーん……』
続かない会話。いろいろ話したい事はいっぱいあったはずなのに……。
「ま、雅季くんは? なにしてたの? って、脚本書いてたに決まってるよね」
それでも、沈黙が怖くて話し続ける。
『……僕も』
「え……?」
『空、見てた。天の川が雲に隠れたから……。でももし、この雲が晴れたらヒロインに電話しよう、って……』
『ヒロイン、こっち……来ない?』
「え……だって、雅季くんお仕事中で……」
『別に。気にならないから』
「迷惑じゃ……ない?」
『僕がいつ迷惑だなんて言ったの?』
「で、でも……」
未だ戸惑う私に、痺れを切らしたように雅季くんが言う。
『わかった。じゃあ、僕の方からそっち、行くから』
「え?」
電話はまだ繋がった状態。その証拠に、鍵を掛ける金属音や階段を駆け下りる足音が受話器越しに聞こえてくる。
『言っとくけど、キミのせいだからね』
「えっ? 何が?」
『脚本のイメージが全然沸かないのも……一行も書けないのも……キミが全然、顔を見せないから……っ』
「…………」
『責任、取ってよ……ヒロイン』
表面上では憎まれ口のオンパレード。だけど……雅季くんも私と同じように会いたいと思ってくれてたんだ。
「ま、待って! 私も今から行く!」
携帯だけを持って部屋を出て、お屋敷を飛び出す。
夕方に降った雨の名残か、少し湿った風が頬を髪を撫でていく。
頭上には満天の星空。天の川を挟んで一年に一度の逢瀬を果たしたベガとアルタイルが、臆病な私を後押しするかのように、一層輝きを放っている――。
7月7日、晴れ
/DREAMS COME TRUE
おまけ。
「あ、また雲に隠れちゃった」
雅季くんのアパートの窓から、雲に隠れた空を見上げる。
「でも雨は降ってないんだし、いいんじゃない?」
私のすぐ後ろで、机に向かってペンを絶えず走らせている雅季くんがそう応える。
「せっかく一年に一度っきりなのに……」
未練がましく夜空をじっと見上げ続けていると、いつの間に移動したのか雅季くんが後ろから私を包み込む。
「一年に一度っきりだから、じゃない? 空の2人だって、そろそろ2人っきりになりたいだろうし。……こんな風に、ね?」
7月7日。七夕。
短冊に願いを乗せて
みんなの願い事が叶いますように――。
