あなたに一番近い場所で
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
西園寺家の兄弟は全員格好いい。
それは身内びいきや、大袈裟なんかじゃなくて、本当にみんなそれぞれ魅力があってすっごく人気がある。
でもそれに気付いてないの、多分本人達だけなんだよね。
学院に通い始めたすぐの頃。
西園寺兄弟に妹が出来たっていう噂を聞き付けた女の子達から、それぞれの兄弟達への手紙やプレゼントを、それはもう想像をはるかに超える勢いで強引に頼まれてしまった事に始まり。
それを私がいちいち全部持って帰った時まで、本当にみんな自分達が人気があるって知らなかったくらいだったもの。
さすがにそんなプレゼント攻撃をずっと続けられたら、いくら広いお屋敷でも片付けが大変だって理由から断る様にしたんだけど、さすがはセレブ!
文句を言う事なく、ちゃんと納得してすんなり聞き入れてくれるあたり、育ちの良さを感じてしまう。
それでもたまに、手紙だけでもって娘もいる。
気持ちはわかる。なんとかして近付きたいって気持ち。
私だってもし妹じゃなかったら、どうにかして近付きたいって思ったかもしれない。
「……それ以前に出会うワケないか」
“妹じゃなかったら”絶対出会う事のない人達だもんね。
それに……、“彼”をこんなに好きになる事もなかったかもしれない。
今、私はその“彼”――雅季くんを待っている。
同い年の兄であり、私にとって初めての“彼氏”。
学院内では、私達が兄妹だって知らない人はいないだろうから、表立っては言えないけど。
「……それにしても、遅いなぁ。雅季くん。会議、長引いてるのかな?」
その時、教室の扉が開く音がした。
「ま……」
雅季くんじゃない。期待を持って見上げた私の目には知らない女の子が映っていて、彼女は私に向かって歩いて来る。
「西園寺さん、よね?」
「……そうですけど」
腰まである緩いウェーブヘアに、ぱっちりとした二重。喩えるならまるで、フランス人形みたいな女の子。
こんな可愛い人、いるんだ……。
整った顔立ちに見とれていると、座ってる私の前に彼女の両手が差し出された。
その両手にあるのは可愛いピンクの封筒。
「え……これ?」
「……こういう手紙断ってるの知ってるんだけど、でもどうしても渡して欲しいの!」
差し出された両手が震えてる。多分、すごく勇気出してるんだろうな……。
「……渡して欲しい、って誰にですか?」
彼女の必死さに、気付けば私はそう聞いていた。
「西園寺くん……雅季くんに渡して欲しいの……」
「え……?」
どきん、と大きく心臓が跳ねる。
「雅季くん……に?」
声が震えそうになる。この娘も、雅季くん好きなんだ……。
「こんなの……頼む事じゃないってわかってるの。だけど、もう抑えられなくて……。お願い!」
そう一息に捲し立てるとその娘は、呆然とする私の手に手紙を渡して、教室を飛び出してしまった。
「あ……! ちょっと待っ……。行っちゃった……」
どうしよう、これ。
渡して、って。私が? それも雅季くんに?
「……そんなの無理だよ」
だって、誰にも内緒とはいえ、雅季くんは私の彼氏なんだもん。
両腕を抱える様に、机に突っ伏せる。
「他の娘のラブレターなんて……渡したくないよ」
「何を渡したくないの?」
私の呟いた言葉を聞き慣れた声が拾う。
「雅季くん!?」
がばっ、と勢い良く顔をあげると、私の大好きなチョコレート色の瞳が私を見つめる。
「遅くなってごめん。で? 何を渡したくないって?」
……う。誤魔化したいけど、なんせ相手は雅季くん。勘のいい彼を誤魔化すのは並大抵のことじゃない。
「…………」
複雑な思いを隠し、さっき渡された手紙を雅季くんに見せる。
「? 何これ?」
「渡して欲しいって頼まれたの。……雅季くんにって」
ちら、と雅季くんを盗み見ると、さっきまでの優しい微笑みは消えていて、厳しい目で私を見据えていた。
……やっぱり不機嫌になっちゃった。
「どうしてヒロインが僕への手紙なんか受け取るのさ?」
「だ、だって……」
「僕がこういうの嫌いだって知ってるでしょ?」
「…………うん」
ふう、と雅季くんが溜め息を吐く。
「あ、でもね。その手紙の娘、すごく勇気出しててね……」
「関係ない」
ぴしゃり、と言い切られて私はそれ以上、何も言えなくなってしまった。
それは身内びいきや、大袈裟なんかじゃなくて、本当にみんなそれぞれ魅力があってすっごく人気がある。
でもそれに気付いてないの、多分本人達だけなんだよね。
学院に通い始めたすぐの頃。
西園寺兄弟に妹が出来たっていう噂を聞き付けた女の子達から、それぞれの兄弟達への手紙やプレゼントを、それはもう想像をはるかに超える勢いで強引に頼まれてしまった事に始まり。
それを私がいちいち全部持って帰った時まで、本当にみんな自分達が人気があるって知らなかったくらいだったもの。
さすがにそんなプレゼント攻撃をずっと続けられたら、いくら広いお屋敷でも片付けが大変だって理由から断る様にしたんだけど、さすがはセレブ!
文句を言う事なく、ちゃんと納得してすんなり聞き入れてくれるあたり、育ちの良さを感じてしまう。
それでもたまに、手紙だけでもって娘もいる。
気持ちはわかる。なんとかして近付きたいって気持ち。
私だってもし妹じゃなかったら、どうにかして近付きたいって思ったかもしれない。
「……それ以前に出会うワケないか」
“妹じゃなかったら”絶対出会う事のない人達だもんね。
それに……、“彼”をこんなに好きになる事もなかったかもしれない。
今、私はその“彼”――雅季くんを待っている。
同い年の兄であり、私にとって初めての“彼氏”。
学院内では、私達が兄妹だって知らない人はいないだろうから、表立っては言えないけど。
「……それにしても、遅いなぁ。雅季くん。会議、長引いてるのかな?」
その時、教室の扉が開く音がした。
「ま……」
雅季くんじゃない。期待を持って見上げた私の目には知らない女の子が映っていて、彼女は私に向かって歩いて来る。
「西園寺さん、よね?」
「……そうですけど」
腰まである緩いウェーブヘアに、ぱっちりとした二重。喩えるならまるで、フランス人形みたいな女の子。
こんな可愛い人、いるんだ……。
整った顔立ちに見とれていると、座ってる私の前に彼女の両手が差し出された。
その両手にあるのは可愛いピンクの封筒。
「え……これ?」
「……こういう手紙断ってるの知ってるんだけど、でもどうしても渡して欲しいの!」
差し出された両手が震えてる。多分、すごく勇気出してるんだろうな……。
「……渡して欲しい、って誰にですか?」
彼女の必死さに、気付けば私はそう聞いていた。
「西園寺くん……雅季くんに渡して欲しいの……」
「え……?」
どきん、と大きく心臓が跳ねる。
「雅季くん……に?」
声が震えそうになる。この娘も、雅季くん好きなんだ……。
「こんなの……頼む事じゃないってわかってるの。だけど、もう抑えられなくて……。お願い!」
そう一息に捲し立てるとその娘は、呆然とする私の手に手紙を渡して、教室を飛び出してしまった。
「あ……! ちょっと待っ……。行っちゃった……」
どうしよう、これ。
渡して、って。私が? それも雅季くんに?
「……そんなの無理だよ」
だって、誰にも内緒とはいえ、雅季くんは私の彼氏なんだもん。
両腕を抱える様に、机に突っ伏せる。
「他の娘のラブレターなんて……渡したくないよ」
「何を渡したくないの?」
私の呟いた言葉を聞き慣れた声が拾う。
「雅季くん!?」
がばっ、と勢い良く顔をあげると、私の大好きなチョコレート色の瞳が私を見つめる。
「遅くなってごめん。で? 何を渡したくないって?」
……う。誤魔化したいけど、なんせ相手は雅季くん。勘のいい彼を誤魔化すのは並大抵のことじゃない。
「…………」
複雑な思いを隠し、さっき渡された手紙を雅季くんに見せる。
「? 何これ?」
「渡して欲しいって頼まれたの。……雅季くんにって」
ちら、と雅季くんを盗み見ると、さっきまでの優しい微笑みは消えていて、厳しい目で私を見据えていた。
……やっぱり不機嫌になっちゃった。
「どうしてヒロインが僕への手紙なんか受け取るのさ?」
「だ、だって……」
「僕がこういうの嫌いだって知ってるでしょ?」
「…………うん」
ふう、と雅季くんが溜め息を吐く。
「あ、でもね。その手紙の娘、すごく勇気出しててね……」
「関係ない」
ぴしゃり、と言い切られて私はそれ以上、何も言えなくなってしまった。
