誓いの印〜After Story〜
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――……
「つけてあげる。僕の印」
狭い観覧車の中で、雅季くんは私の首筋に朱い花弁をつけた。
「愛してる……ヒロイン」
「ん……っ、雅季く……っ」
甘い囁きと深さを増す口づけ、だんだん下に滑り降りて私の全てを探ろうとする雅季くんの細い指に体が溶けてしまいそうになる。
「……そろそろ地上に着くな」
「……え?」
体から力がすっかり抜けてしまって、頭がまともに働いていない私は雅季くんの言葉にも上手く反応できない。
「ほら。ちゃんとボタン留めてリボン結ばないと。それ、他の人に見られるよ?」
そう言って、私の首筋を雅季くんの細い指がなぞる。
「……っ! あ、う、うん」
我に帰った私は慌ててボタンを留めて、急いでリボンを結ぶ。
「……リボン曲がってる」
「あ」
視線を下に落とすと、焦りながら結んだリボンは見事に斜めに歪んでいた。
「そんなんじゃリボン外したの、バレるでしょ?」
言いながら私が結んだリボンを雅季くんがほどいて結び直す。
「ありがとう」
「どういたしまして」
さっきまであんなに甘い雰囲気だったのに、私達のゴンドラが地上に降りる頃にはすっかり普段の雅季くんに戻ってしまった。
なんだか夢見てたみたい。
でも、観覧車を降りて待たせてある車に向かうまでの間、お互いの指を絡めた繋ぎ方がこれは現実だと教えてくれる。
「……帰ったらみんなに報告するから」
「あ……。うん」
そうだ。私達の関係をお兄ちゃん達に告白するんだった。
ドキドキする心臓。だけど、雅季くんが言ってくれた“ダイジョウブ”って言葉が、心の中で生まれた小さな不安を優しく包んでくれる。
雅季くんがいれば何も怖くない。そんな思いで繋いでる手に力を込めると、応えるように雅季くんも力強く握り返してくれる。
「……報告、し終わったらさ」
「うん?」
「さっきの……続きしても、いい?」
「……さっきの? って、ええっ!?」
戸惑う私を見て「嫌なの?」って聞いてくる。
……う。い、嫌じゃないけど……でも素直に「うん」とも言えない。
未だ答えることの出来ない私の耳元に、雅季くんの顔が近づいてきてそっと囁く。
「ていうか、続きするから。……覚悟してて」
耳元で囁かれるだけでもゾクッとするのに、そんな事を言われたら……。
「ヒロイン、顔真っ赤」
「ま、雅季くんのせいだよっ」
ふっ、と笑う雅季くん。だけど、彼の耳が暗くてもわかる程に赤く色づいてる。
雅季くんも真っ赤じゃん……。
でも、それ指摘したらせっかく繋いでる手、離されちゃったらやだし。……言わないでおこう。
結局、私達の手は車に乗ってるときはもちろん、お屋敷に着いて御堂さんに迎えられても離されることはないまま、お兄ちゃん達が集まっている食堂へと向かう。
「ただいま」
2人同時に声を掛ける。と、繋がれた手に雅弥くんが素早く反応を示す。
「なんだよ、遅かったじゃん? つーかお前ら、そんな風にしてっとマジで恋人同士みてぇだぞ?」
「うん」
からかい半分口調の雅弥くんに、雅季くんは静かに頷いた。
「は? うん……って何が?」
「だからそう。僕とヒロインは恋人同士だから」
雅季くんの言葉に、みんなが静まり返る。
一瞬の沈黙の後、修一お兄ちゃんが口を開く。
「雅季。一体どういう事だ? ヒロインさんは僕たちの妹だぞ。……自分が何を言ってるのかわかってるのか?」
「修一兄さん。僕はヒロインを最初から妹としてなんか見ていない。ヒロインをひとりの女性として愛してる」
他の兄弟たちの視線を一身に受け止めている雅季くんの表情は、真剣で揺らぐ事がない。
「ヒロインさんは? あなたは雅季の事をどう思ってるんですか?」
どきん、と心臓が一気に跳ね上がる。同時に、繋いでる手にも力が入る。
その瞬間、雅季くんの手が包み込むように優しく握り返してくる。
大丈夫だから――そう言われたような気がして安心感が胸に広がる。
「私……私も雅季くんが好き。雅季くんの隣が、私にとって一番幸せになれる場所なの」
じっと私たちを見据える修一お兄ちゃんの目を見つめる。
「2人とも、真剣な気持ちなんですね?」
修一お兄ちゃんの問いに私たちは顔を見合わせて頷く。
再び、沈黙が訪れる。
