君の笑顔に揺れて
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この感情はなんだ?
座りの悪い椅子に座っているような落ち着かない気持ち。
地に足がついてないような覚束なさ。
ふわふわした気持ちがつきまとう。
この感情は一体いつ生まれどこから来たのか。
説明しようのない気持ちにどんな名前をつければ納得できる?
親心? とは違う。じゃあ、恋――?
……まさか。それは錯覚だ。恋なんかじゃない。
そう頭で否定する。が、心がそれを聞いてくれない。
仮に恋だとしよう。だが、この想いは決して許される事じゃない。
まして、自分が特定の誰かに対して恋心を抱くなんて事は今までなかった。
一時の気の迷い。
そう。今までずっと男所帯だった中に、突然女の子が加わって大事に慈しむ気持ちを恋心だと思いこんでるだけだ。
世間一般に“大人”と属される自分が、7歳も年下の彼女に心が騒つき惑わされているなんて。
彼女は妹だ――。ただし血は繋がっていない戸籍上の妹だから、倫理上は何ら問題はない。
それより、彼女が教師である自分の生徒だという事の方が問題かもしれない。
だがしかし、彼女が自分に向ける笑顔も甘えるような眼差しも、兄としての自分に向けられたものなのだ。
それ以上のものが……あるはずがない。
思い悩む必要はない。
確かに、彼女の笑顔は今まで出会った他の人達とは種類が違う。
“西園寺”の名前を利用しようと近づいて来る計算しつくされた笑顔なら、これまで嫌になるくらい山ほど見てきた。
僕に気に入られたいが為の社交辞令の言葉に上辺だけの取り繕った笑顔。
そんな張り付けただけの笑顔にうんざりしていた。
僕に好意を寄せているであろう女性も、結局は西園寺の名前が欲しいだけだ。
彼女たちは僕を好きなんじゃない。事実、仮面を被った作り物の僕を本当の僕だと信じている。
本当の自分をさらけ出せる相手はこのまま現れないと思っていた。
彼女が――ヒロインさんが西園寺家に来るまでは。
彼女が僕に向ける眩しいほどの笑顔。
見ているとこちらまで自然と笑みが零れてしまう。
見返りを求めない無償の笑顔がこんなにも心を惑わせるものだと、今まで知らずにいた。
ヒロインさんに本当の僕を知ってほしい。
いつしかそう思うようになった。
仮面を被った偽りの僕じゃなく。
本当は不器用で、7歳も年下の女の子に情けないくらい振り回されている素顔の僕を見つけてほしい。
これが恋なのか?
こんな風にもっと自分の事を知ってほしいと思う、彼女が僕に向ける笑顔ひとつで安心するこの気持ちが、恋?
頑なに否定して認めようとしなかった。
頭で考えるだけで、心で考えた事がなかった。
答えはとっくに出ていたというのに。
この胸の騒めきも、彼女の笑顔を見つけたときの高揚感も……言いようのない愛しさも。
そうなのだとしたら全て合点がいく。
――ヒロインが好きだ。
自分でも気づかないほど、ヒロインは自然に僕の心に住みついた。
くすぐったい様な、少し気恥ずかしい気持ち。
人を好きになると言うのは、こんなに幸せな心持ちになるのか。
ふ、と疑問がよぎる。
自分の気持ちに気づく事が出来た。
彼女は……ヒロインはどう思っているのだろう?
学校でも家でも、惜しみなく笑顔を向けてくれる。
兄としての僕に。
もし、この想いを彼女が知ったら……。
目の前であの笑顔が凍りついたら?
そんな事、今から気に病んでも仕方ない。
今は、ヒロインが僕に教えてくれた掛け替えのないこの気持ちを大切にしよう。
敷地内のお気に入りの場所で、一人密かに芽生えた想いをそっと取り出す。
そして静かに目を閉じて、小さな願掛けをする。
彼女が僕を見つけてくれますように――と。
もしもこの願いが叶ったら
自惚れても構わないだろうか?
彼女にとって兄以上の存在になれると
期待しても……。
「修一お兄ちゃん! やっぱりここだったんだ。何してたの?」
背後から耳に届く愛しい声。
期待しても構わないのか?
「待ってたんですよ。ヒロインさんを」
いつか、この想いをあなたに届けたい。
いつか伝わる事を願って……。
いつまでも君の笑顔に揺れていたい。
END.
座りの悪い椅子に座っているような落ち着かない気持ち。
地に足がついてないような覚束なさ。
ふわふわした気持ちがつきまとう。
この感情は一体いつ生まれどこから来たのか。
説明しようのない気持ちにどんな名前をつければ納得できる?
親心? とは違う。じゃあ、恋――?
……まさか。それは錯覚だ。恋なんかじゃない。
そう頭で否定する。が、心がそれを聞いてくれない。
仮に恋だとしよう。だが、この想いは決して許される事じゃない。
まして、自分が特定の誰かに対して恋心を抱くなんて事は今までなかった。
一時の気の迷い。
そう。今までずっと男所帯だった中に、突然女の子が加わって大事に慈しむ気持ちを恋心だと思いこんでるだけだ。
世間一般に“大人”と属される自分が、7歳も年下の彼女に心が騒つき惑わされているなんて。
彼女は妹だ――。ただし血は繋がっていない戸籍上の妹だから、倫理上は何ら問題はない。
それより、彼女が教師である自分の生徒だという事の方が問題かもしれない。
だがしかし、彼女が自分に向ける笑顔も甘えるような眼差しも、兄としての自分に向けられたものなのだ。
それ以上のものが……あるはずがない。
思い悩む必要はない。
確かに、彼女の笑顔は今まで出会った他の人達とは種類が違う。
“西園寺”の名前を利用しようと近づいて来る計算しつくされた笑顔なら、これまで嫌になるくらい山ほど見てきた。
僕に気に入られたいが為の社交辞令の言葉に上辺だけの取り繕った笑顔。
そんな張り付けただけの笑顔にうんざりしていた。
僕に好意を寄せているであろう女性も、結局は西園寺の名前が欲しいだけだ。
彼女たちは僕を好きなんじゃない。事実、仮面を被った作り物の僕を本当の僕だと信じている。
本当の自分をさらけ出せる相手はこのまま現れないと思っていた。
彼女が――ヒロインさんが西園寺家に来るまでは。
彼女が僕に向ける眩しいほどの笑顔。
見ているとこちらまで自然と笑みが零れてしまう。
見返りを求めない無償の笑顔がこんなにも心を惑わせるものだと、今まで知らずにいた。
ヒロインさんに本当の僕を知ってほしい。
いつしかそう思うようになった。
仮面を被った偽りの僕じゃなく。
本当は不器用で、7歳も年下の女の子に情けないくらい振り回されている素顔の僕を見つけてほしい。
これが恋なのか?
こんな風にもっと自分の事を知ってほしいと思う、彼女が僕に向ける笑顔ひとつで安心するこの気持ちが、恋?
頑なに否定して認めようとしなかった。
頭で考えるだけで、心で考えた事がなかった。
答えはとっくに出ていたというのに。
この胸の騒めきも、彼女の笑顔を見つけたときの高揚感も……言いようのない愛しさも。
そうなのだとしたら全て合点がいく。
――ヒロインが好きだ。
自分でも気づかないほど、ヒロインは自然に僕の心に住みついた。
くすぐったい様な、少し気恥ずかしい気持ち。
人を好きになると言うのは、こんなに幸せな心持ちになるのか。
ふ、と疑問がよぎる。
自分の気持ちに気づく事が出来た。
彼女は……ヒロインはどう思っているのだろう?
学校でも家でも、惜しみなく笑顔を向けてくれる。
兄としての僕に。
もし、この想いを彼女が知ったら……。
目の前であの笑顔が凍りついたら?
そんな事、今から気に病んでも仕方ない。
今は、ヒロインが僕に教えてくれた掛け替えのないこの気持ちを大切にしよう。
敷地内のお気に入りの場所で、一人密かに芽生えた想いをそっと取り出す。
そして静かに目を閉じて、小さな願掛けをする。
彼女が僕を見つけてくれますように――と。
もしもこの願いが叶ったら
自惚れても構わないだろうか?
彼女にとって兄以上の存在になれると
期待しても……。
「修一お兄ちゃん! やっぱりここだったんだ。何してたの?」
背後から耳に届く愛しい声。
期待しても構わないのか?
「待ってたんですよ。ヒロインさんを」
いつか、この想いをあなたに届けたい。
いつか伝わる事を願って……。
いつまでも君の笑顔に揺れていたい。
END.
