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外部協力一件、三万モラ。衣服の補填は一人三千モラ。遺跡の破損が__**モラ。
こうして書いているだけで溜息が出てくる。騎士団の財力は有限で無駄遣いなどできないというのに、無茶苦茶な作戦であらゆるものを壊したり破いたりする人がいるからだ。彼曰く「ちゃんと選んでいる」そうだけど、会計担当の自分からすればクレーと変わりない……さすがにそれは言いすぎか。
一度筆を置いて伸びをすると、雲ひとつなかった青空はいつの間にかカラメル色に溶けだしていた。窓を僅かに開ければ夕方の寂寥とした風が流れ込んでくる十七時、もうそろそろ定時になる。
今日の夜はどうしようか。鹿狩りで適当に食べてもいいし、郵便受けに璃月料理が期間限定で食べられるという広告も入っていた。それか清泉町まで行ってお肉でもいい。
とにかくこの書類を代理に提出してさっさと上がろう。足取り軽やかに団長室をノックすると、二人分の気配がある気がした。
「すみません、お邪魔しましたか?」
「〇か? ちょうどいい、私から訪ねようとしていたところだ」
その返事を聞いて扉を開けると、真っ直ぐに代理の元へ書類を提出した。ズラズラと並ぶ金額を見て難しそうな顔をしている彼女にいくつか提案して、来月の予算の指針にする。まだ月末ではないので今日はさくっと帰ろう。
「~ということですので、隊長には補充にもモラがかかるのだと言い聞かせていただいて」
「……その通りだ。分かったか? 会計のことも考えてくれ」
「……?」
私に話しかけているのではないようだ。なんだか嫌な予感が……っひあ!?
突然背後から脇下に手を差し込まれ逃げようとするがもう遅い。逃げられないようにがっちり足を固定してくすぐってくるなんて、こんなことする人一人しかっ、っぁは!
「がいっ、ふふっ! っは、やめ、がいあぁあああっはははは! はひっ、やぁ、めっ、ひっ」
「すまん、よく聞こえなかったからもう一度聞かせてくれ」
「らからぁっあは、ばか、やめてぇっはひっ、ぁっ、は!」
笑いたくないのに笑ってしまう悔しさを感じながら精一杯抵抗してみてもガイアの力には敵わない。足はビクともせず、一人で逃げることなどできなかった。
それにこの人のくすぐり方はただ同じところをくすぐるのではなくて、ソフトタッチでゾクゾクするような指捌きを混ぜてくるから息が上がる。慌てて代理が止めてくれたけれど、生理的な涙がぽたぽた床にこぼれた。
「っはぁ、あぁ……しぬかとおもった……」
「コラ、仲がいいのは良いが程々にしないか」
「すまんすまん。〇は面白い反応を見せてくれるからな、つい」
「はぁ……?」
仲がいい……? 誰と、誰が?
冗談じゃない。騎兵隊隊長__目の前でニマニマ腹立つ顔を見せている彼、ガイア。酒場では大人気。女性に対しても極めて紳士的__らしいけれど私にはそう見えない。入団して会計に着いて以降会う度に何かされてきたし、財政をそこそこ圧迫してくるし、文句こそあれ仲良しなんかじゃない。
抗議の意を込めて「ではこれで!」と書類を置いて去ろうとすると「じゃあまたな」と聞こえた。早く帰ろ。帰ってごはん食べよう。
「今日は鹿狩りのテラス席に特別なデザートが付いてくるらしいぞ」
そうなんだ。いつも中だしテラス席も__って待って待って待って。
「なんで着いてきてるの?」
「いや? ジンに挨拶もしたし、もう仕事もないからな」
どうやらさっきの挨拶は代理へ向けられたものだったらしい。少し早めに歩いていたが彼の長い足をもってすればなんの意味もなく、優雅にこちらを見下ろして「ん?」なんて目を細めてくるガイアがいた。
「……夜はお酒のお店にしか行かないのかと思ってた」
「そんなことはないさ。俺だって特別な夜は落ち着いた食事もする」
「特別な夜?」
「ああ、なにせ__」
言いかけた言葉は焦った足音にかき消された。見れば代理が走って来ていて、何かの書類を手に持っている。
「あれ、代理だ。ミスでもあったかな」
代理の方へ数歩引き返すと、隣の男がロクでもない顔をした気がする。
「? なに__」
「〇! すまない、君にもうひとつ用事があったんだ」
……そういえば、代理の方から訪ねる所だったと。もしかして会計のことではなかった?
だったら一体……。
「っ君の仕事には、満足している。いつも狂いがないし手配も上手い。それから……たまに戦闘任務も手伝っているらしいな?」
「あの、聞きますから落ち着いて……」
息を切らせたまま矢継ぎ早に言葉を紡ぐ代理に嬉しさよりも心配が勝ってしまう。それでも代理はいいんだ、と首を振って一枚の紙をこちらに渡してきた。
「えっと……? っ!?」
「……この通りだ。〇、頼めるか? 場所は少し違うが、今までのように騎士団の一員として支えてほしい」
「でも、えっ、えっ」
読めば読むほど信じられない通知書。振り返ればにこにこのガイアが軽く手を振ってきている。嘘でしょ、だって。
代理の言葉の続きが浴室内のようにぼんやりと響く。
「__騎兵隊補佐として」
なんて。
こうして書いているだけで溜息が出てくる。騎士団の財力は有限で無駄遣いなどできないというのに、無茶苦茶な作戦であらゆるものを壊したり破いたりする人がいるからだ。彼曰く「ちゃんと選んでいる」そうだけど、会計担当の自分からすればクレーと変わりない……さすがにそれは言いすぎか。
一度筆を置いて伸びをすると、雲ひとつなかった青空はいつの間にかカラメル色に溶けだしていた。窓を僅かに開ければ夕方の寂寥とした風が流れ込んでくる十七時、もうそろそろ定時になる。
今日の夜はどうしようか。鹿狩りで適当に食べてもいいし、郵便受けに璃月料理が期間限定で食べられるという広告も入っていた。それか清泉町まで行ってお肉でもいい。
とにかくこの書類を代理に提出してさっさと上がろう。足取り軽やかに団長室をノックすると、二人分の気配がある気がした。
「すみません、お邪魔しましたか?」
「〇か? ちょうどいい、私から訪ねようとしていたところだ」
その返事を聞いて扉を開けると、真っ直ぐに代理の元へ書類を提出した。ズラズラと並ぶ金額を見て難しそうな顔をしている彼女にいくつか提案して、来月の予算の指針にする。まだ月末ではないので今日はさくっと帰ろう。
「~ということですので、隊長には補充にもモラがかかるのだと言い聞かせていただいて」
「……その通りだ。分かったか? 会計のことも考えてくれ」
「……?」
私に話しかけているのではないようだ。なんだか嫌な予感が……っひあ!?
突然背後から脇下に手を差し込まれ逃げようとするがもう遅い。逃げられないようにがっちり足を固定してくすぐってくるなんて、こんなことする人一人しかっ、っぁは!
「がいっ、ふふっ! っは、やめ、がいあぁあああっはははは! はひっ、やぁ、めっ、ひっ」
「すまん、よく聞こえなかったからもう一度聞かせてくれ」
「らからぁっあは、ばか、やめてぇっはひっ、ぁっ、は!」
笑いたくないのに笑ってしまう悔しさを感じながら精一杯抵抗してみてもガイアの力には敵わない。足はビクともせず、一人で逃げることなどできなかった。
それにこの人のくすぐり方はただ同じところをくすぐるのではなくて、ソフトタッチでゾクゾクするような指捌きを混ぜてくるから息が上がる。慌てて代理が止めてくれたけれど、生理的な涙がぽたぽた床にこぼれた。
「っはぁ、あぁ……しぬかとおもった……」
「コラ、仲がいいのは良いが程々にしないか」
「すまんすまん。〇は面白い反応を見せてくれるからな、つい」
「はぁ……?」
仲がいい……? 誰と、誰が?
冗談じゃない。騎兵隊隊長__目の前でニマニマ腹立つ顔を見せている彼、ガイア。酒場では大人気。女性に対しても極めて紳士的__らしいけれど私にはそう見えない。入団して会計に着いて以降会う度に何かされてきたし、財政をそこそこ圧迫してくるし、文句こそあれ仲良しなんかじゃない。
抗議の意を込めて「ではこれで!」と書類を置いて去ろうとすると「じゃあまたな」と聞こえた。早く帰ろ。帰ってごはん食べよう。
「今日は鹿狩りのテラス席に特別なデザートが付いてくるらしいぞ」
そうなんだ。いつも中だしテラス席も__って待って待って待って。
「なんで着いてきてるの?」
「いや? ジンに挨拶もしたし、もう仕事もないからな」
どうやらさっきの挨拶は代理へ向けられたものだったらしい。少し早めに歩いていたが彼の長い足をもってすればなんの意味もなく、優雅にこちらを見下ろして「ん?」なんて目を細めてくるガイアがいた。
「……夜はお酒のお店にしか行かないのかと思ってた」
「そんなことはないさ。俺だって特別な夜は落ち着いた食事もする」
「特別な夜?」
「ああ、なにせ__」
言いかけた言葉は焦った足音にかき消された。見れば代理が走って来ていて、何かの書類を手に持っている。
「あれ、代理だ。ミスでもあったかな」
代理の方へ数歩引き返すと、隣の男がロクでもない顔をした気がする。
「? なに__」
「〇! すまない、君にもうひとつ用事があったんだ」
……そういえば、代理の方から訪ねる所だったと。もしかして会計のことではなかった?
だったら一体……。
「っ君の仕事には、満足している。いつも狂いがないし手配も上手い。それから……たまに戦闘任務も手伝っているらしいな?」
「あの、聞きますから落ち着いて……」
息を切らせたまま矢継ぎ早に言葉を紡ぐ代理に嬉しさよりも心配が勝ってしまう。それでも代理はいいんだ、と首を振って一枚の紙をこちらに渡してきた。
「えっと……? っ!?」
「……この通りだ。〇、頼めるか? 場所は少し違うが、今までのように騎士団の一員として支えてほしい」
「でも、えっ、えっ」
読めば読むほど信じられない通知書。振り返ればにこにこのガイアが軽く手を振ってきている。嘘でしょ、だって。
代理の言葉の続きが浴室内のようにぼんやりと響く。
「__騎兵隊補佐として」
なんて。