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起きた。確か外のベンチで寝ていたはずだが、今の僕はベッドに寝かされている。上体を起こしてみるとザイトゥン桃が置いてあったので、勝手に齧りながら部屋を出た。まあ食べてはいけないものだったら弁償できるし。
桃はシャクシャクとして美味しいが果汁が多い。横着して手首に垂れた果汁を舐め取ろうとしたとき、皮膚に妙な文字列を見つけた。
「……この男が外で寝ていたら、以下に連絡してください?」
「起きたか」
「うわ」
振り返ると足を組んだアルハイゼンが優雅な朝食を摂っていた。ということはこの家は彼の家? でもまさかこの男が僕を気にかけて運び入れるはずがないので、連れてきたのはきっと同居人のカーヴェだろう。それはそれとしてアルハイゼンの飲んでいる珈琲が欲しかったので近寄って奪う。代わりに食べかけの桃を置いて。
「いま口にしたそれは、君の時給ぶんあるぞ」
「飲み得ってこと?」
「後で償え。カーヴェと話したいならそこで寝ている」
「……ほんとだ」
最初は気づかなかったが、よく見るとテーブルの下から白い足が伸びている。ソファで寝て、床に落ちたようだ。僕をこっちに寝かせたら良かったのに。
そろりと近づくと酒の匂いがする。
「カーヴェ、背中痛くなるよ」
「ん……〇……? あー……きみ……外で寝るのは……よくないぞ」
「床で寝ている奴に言われても」
腕を掴んで起こし、なんとかソファに座らせる。カーヴェは目眩に襲われているようで、品の良い眉は歪められて苦しげだ。いつもの事なのか、アルハイゼンはというと我知らずとばかりに僕の桃に口をつけている。
「……こうなるまでお酒飲んだのは僕のせいじゃないよね?」
「ああ。そもそも何処で寝ようが君の自由だ。だが、シティでの犯罪率はゼロとは言えない。俺も、外で眠る君の悪癖は治した方がいいと思っている」
「ふーん。代理賢者さまに心配されて光栄だな」
「〇」
「なに? ……ごめんって」
アルハイゼンに顎で示された先を見ると、カーヴェが何か言いたげにしていた。別に、ここに運んでくれたのを迷惑だと思っている訳では無いから謝っておく。
……僕がどうなろうと、僕は僕に関心ないんだけどな。
「〇……僕は心配なんだ。先週の講義の後、君にしつこく言い寄っている奴を見た。それに一昨日も、昨日もだ! 君は悪くないけど……」
「大丈夫だよ、もし悪いことする人がいたらセノが裁いてくれるから」
「起こってからだろう? そうじゃなくて……痛……」
少し喋ると眠気が薄れたらしく、カーヴェは目を閉じて頭に手を置いた。珈琲をあげると却ってだめな気がしたので、とりあえず横になるように言う。
「カーヴェ、分かったから。全部君が一度寝て、起きてから聞く。僕が外で寝ているのを見て、君はここに運んでくれた。そうだね? ありがとう」
「……いや……ああ……」
それを最後に、カーヴェは目を閉じた。
「寝たか。〇、君は好きにするといい。シャワーを浴びるなら勝手に使え」
朝食を終えたアルハイゼンがカーヴェには一瞥もくれずに言う。よくこの冷血漢とカーヴェが一緒に住めるものだと思いながら、僕も立ち上がった。もう陽も明るいしそろそろ出るべきだろう。
「分かった。今度お礼しようと思うけど」
「不要だ。そんなことをするリソースがあるのなら自分の寝床で寝るようにしろ。外で軽率に寝顔を晒すな。それに君は寝相がとても悪い。はだけた服でいることは景観にとっても迷惑な話だ」
「……? ん、んん?? なんかすごく怒られ」
「怒ってはいない。助言をしている。君はまだ鏡を見ていないな。見ろ。首を」
無理矢理手鏡を握らせられる。えっと、何が起きてる? 分からないが言われた通りに鏡を見ると、首に内出血がいくつかできていた。アルハイゼンはこれを見て怒っている……のか?
「これは君自身がつくった傷か?」
「違う……」
「そうだ。これは、君を狙っている学生が、君が寝ている間に襲おうとしたものだ。俺が通報した」
アルハイゼンが立ち上がる。すると背の高くて筋肉質な彼はまるで壁のようにそびえ立って、頭上から降ってくる圧が僕をその場に縫いつけた。
「あ、アルハイゼンが通報? カーヴェなんじゃ」
「カーヴェは俺の後に来た。誰が、君をここまで運んだのがカーヴェだと言った? そもそも酔った彼が君を運べると思うか?」
「それは、……」
思い返すと、カーヴェが運んだ等と一言も言われていない。僕がそう思い込んでいただけで。だったら……恐る恐るアルハイゼンを見上げると、めちゃくちゃ、めちゃくちゃ怒っていた。
「もう、二度と、外で寝るな。家が遠い時はここに来てもいい。だが外は駄目だ。分かったな?」
「……はい」
「分かったらシャワーを浴びてきたらどうだ。その乱れた服装から着替えるべきだ」
「アルハイゼン、なんか」
「それとも、犯されないと分からないか?」
腰の両側を大きな手で掴まれて持ち上げられ、足が浮く。ごつん、とアルハイゼンの額と僕の額を合わせられる。間近で見た彼の目はギラギラと光っていて、冷や汗をかく僕の手首に書かれていた文字は今思えばこの人の書体で。
「しゃ、シャワー浴びてくる……」
「よく洗え」
「……うん……」
腰を離された途端、逃げるようにその場を後にしてシャワー室に滑り込んだ。しかしどれだけ強く擦っても文字は落ちなかった。嫌なら外で寝るなということだろう。
なにより、シャワーを浴びてアルハイゼンの家を出るまでの間、生きている心地がしなかった。
桃はシャクシャクとして美味しいが果汁が多い。横着して手首に垂れた果汁を舐め取ろうとしたとき、皮膚に妙な文字列を見つけた。
「……この男が外で寝ていたら、以下に連絡してください?」
「起きたか」
「うわ」
振り返ると足を組んだアルハイゼンが優雅な朝食を摂っていた。ということはこの家は彼の家? でもまさかこの男が僕を気にかけて運び入れるはずがないので、連れてきたのはきっと同居人のカーヴェだろう。それはそれとしてアルハイゼンの飲んでいる珈琲が欲しかったので近寄って奪う。代わりに食べかけの桃を置いて。
「いま口にしたそれは、君の時給ぶんあるぞ」
「飲み得ってこと?」
「後で償え。カーヴェと話したいならそこで寝ている」
「……ほんとだ」
最初は気づかなかったが、よく見るとテーブルの下から白い足が伸びている。ソファで寝て、床に落ちたようだ。僕をこっちに寝かせたら良かったのに。
そろりと近づくと酒の匂いがする。
「カーヴェ、背中痛くなるよ」
「ん……〇……? あー……きみ……外で寝るのは……よくないぞ」
「床で寝ている奴に言われても」
腕を掴んで起こし、なんとかソファに座らせる。カーヴェは目眩に襲われているようで、品の良い眉は歪められて苦しげだ。いつもの事なのか、アルハイゼンはというと我知らずとばかりに僕の桃に口をつけている。
「……こうなるまでお酒飲んだのは僕のせいじゃないよね?」
「ああ。そもそも何処で寝ようが君の自由だ。だが、シティでの犯罪率はゼロとは言えない。俺も、外で眠る君の悪癖は治した方がいいと思っている」
「ふーん。代理賢者さまに心配されて光栄だな」
「〇」
「なに? ……ごめんって」
アルハイゼンに顎で示された先を見ると、カーヴェが何か言いたげにしていた。別に、ここに運んでくれたのを迷惑だと思っている訳では無いから謝っておく。
……僕がどうなろうと、僕は僕に関心ないんだけどな。
「〇……僕は心配なんだ。先週の講義の後、君にしつこく言い寄っている奴を見た。それに一昨日も、昨日もだ! 君は悪くないけど……」
「大丈夫だよ、もし悪いことする人がいたらセノが裁いてくれるから」
「起こってからだろう? そうじゃなくて……痛……」
少し喋ると眠気が薄れたらしく、カーヴェは目を閉じて頭に手を置いた。珈琲をあげると却ってだめな気がしたので、とりあえず横になるように言う。
「カーヴェ、分かったから。全部君が一度寝て、起きてから聞く。僕が外で寝ているのを見て、君はここに運んでくれた。そうだね? ありがとう」
「……いや……ああ……」
それを最後に、カーヴェは目を閉じた。
「寝たか。〇、君は好きにするといい。シャワーを浴びるなら勝手に使え」
朝食を終えたアルハイゼンがカーヴェには一瞥もくれずに言う。よくこの冷血漢とカーヴェが一緒に住めるものだと思いながら、僕も立ち上がった。もう陽も明るいしそろそろ出るべきだろう。
「分かった。今度お礼しようと思うけど」
「不要だ。そんなことをするリソースがあるのなら自分の寝床で寝るようにしろ。外で軽率に寝顔を晒すな。それに君は寝相がとても悪い。はだけた服でいることは景観にとっても迷惑な話だ」
「……? ん、んん?? なんかすごく怒られ」
「怒ってはいない。助言をしている。君はまだ鏡を見ていないな。見ろ。首を」
無理矢理手鏡を握らせられる。えっと、何が起きてる? 分からないが言われた通りに鏡を見ると、首に内出血がいくつかできていた。アルハイゼンはこれを見て怒っている……のか?
「これは君自身がつくった傷か?」
「違う……」
「そうだ。これは、君を狙っている学生が、君が寝ている間に襲おうとしたものだ。俺が通報した」
アルハイゼンが立ち上がる。すると背の高くて筋肉質な彼はまるで壁のようにそびえ立って、頭上から降ってくる圧が僕をその場に縫いつけた。
「あ、アルハイゼンが通報? カーヴェなんじゃ」
「カーヴェは俺の後に来た。誰が、君をここまで運んだのがカーヴェだと言った? そもそも酔った彼が君を運べると思うか?」
「それは、……」
思い返すと、カーヴェが運んだ等と一言も言われていない。僕がそう思い込んでいただけで。だったら……恐る恐るアルハイゼンを見上げると、めちゃくちゃ、めちゃくちゃ怒っていた。
「もう、二度と、外で寝るな。家が遠い時はここに来てもいい。だが外は駄目だ。分かったな?」
「……はい」
「分かったらシャワーを浴びてきたらどうだ。その乱れた服装から着替えるべきだ」
「アルハイゼン、なんか」
「それとも、犯されないと分からないか?」
腰の両側を大きな手で掴まれて持ち上げられ、足が浮く。ごつん、とアルハイゼンの額と僕の額を合わせられる。間近で見た彼の目はギラギラと光っていて、冷や汗をかく僕の手首に書かれていた文字は今思えばこの人の書体で。
「しゃ、シャワー浴びてくる……」
「よく洗え」
「……うん……」
腰を離された途端、逃げるようにその場を後にしてシャワー室に滑り込んだ。しかしどれだけ強く擦っても文字は落ちなかった。嫌なら外で寝るなということだろう。
なにより、シャワーを浴びてアルハイゼンの家を出るまでの間、生きている心地がしなかった。