ジャンピンジャックサイコネス(ウスパパの教え子になる)
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「〇君、君は決して落ちこぼれではない。私が必ず立派な吸血鬼にしてみせる! 努力すれば他の能力だって身につけられるかもしれないし!」
「わーんドラウスさぁん……!」
翌日、午後からいよいよ指導が始まった。サイコキネシスが上手く使えない……というのは、具体的には自発的に使うと変なことになってしまう、意識がない時に暴走してしまうの二つに分けられる。後者の理屈を知るためにもまずは前者から始めようということになったのだった。
「そうだな……まずはこれ、このチョコレートを浮かべてくれ」
「は、はい」
ドラウスさんが掲げてみせたのは何の変哲もないタブレットチョコレート。意識を飛ばすように物の構造をよくイメージして、浮かばせる。くるくるっと回転させたり上下に揺らしたり、一口だけパキッと割ってドラウスさんに渡すことだって造作ない。彼も頷いてご褒美にチョコレートをくれた。
「よくできている。次にあの花瓶はどうだ?」
「花瓶ですか!? でもあの、もし壊したら」
「いくらでも変えは利く。やってみなさい」
そう言われても次の目標である花瓶はとても変えが利きそうな代物には見えない。とってもお高そうだし、陶器の細やかな飾りもついていて繊細そうだ。内心ビビって逃げたい気持ちを抑えながら花瓶に意識を飛ばすと、ふらふらっと揺れながらも花瓶は浮き上がった。回してと言われて回してみるけれど角度が斜めっている。かえって戻そうとすればぐるんっと上下反対になってしまった。
「もう下ろしても……?」
「……なるほど。よし、次はこのソファだ。聞いて驚け、これは日本の家具屋で買ったやつでな、数千円で買えるのに壊れにくいのだ。いくらでも振り回していい。なんならそろそろ買い替えたいやつだし」
ひえ~許された。花瓶をそっと戻して今度はソファに向き直る。確かにこれは歴史も価値も感じられないし(数千円は嘘だけど)、それでいて全体の形もイメージしやすい。浮かせて、回して、そのままお掃除だってできちゃう。どや、と振り返るとなぜかドラウスさんもどやっとしていて可愛かった。
「分かった! 君のサイコキネシスは精神状態と深く密接しているようだ。つまり自信だな。本当にこれを動かしてもいいのか? 怒られないか? ……と、お伺いを立てているからふよふよっとなってしまうのだ」
「なるほど、それが分かったからどやっとしてたんですね」
「ああ! ここに気づくとはさすが私! 御祖父様には敵わなくても解決してみせよう!」
よく見れば髪の毛のアンテナもビビっとして嬉しそうだ。でも御祖父様? というのは……私が聞いたのはドラウスさんとその奥さんとご子息のことだけだったので、あまりその前を知らないのだ。御祖父様はそんなにすごいお方なのですか、と聞くと彼は多少驚いた様子でこちらを見た。
「君、御祖父様を知らなかったのかね? てっきり一族の格の高さに惹かれて申し込んできたのかと」
「??? たしかに竜の一族がすごいっていうのは聞いてましたけど……ドラウスさんのことじゃないんですか? すみません浅学で」
「わ、私が……!? すごい……!?」
「あ、そういえば当主じゃなくて次期当主なんでしたっけ。でも色々とやられてるし……そのへんあやふやでした」
言えば言うほど自分の学のなさにびっくりする。とにかく住処を確保することが最優先だったのでなんかすごい人がいるとこなんだな~くらいに思っていて、あんまり調べたことなかった。こういうのは普通教育されるのだろうか? ……というか、ドラウスさんが静かだ。
「ドラウスさん?」
「あ、ああ……具体的には?」
「へ?」
「その、具体的には私のどの辺がすごいと思ってくれたのかな~って……」
えっかわいい。 ……かわいい!
照れながらも子供のようにチラチラこちらを見てくる姿は心にキュンとくるものがあった。昨日の朝方に書斎からドンドンドラウス努力の子……とか聞こえてきたし、この人ももしかして褒められなれていなかったりする? 私なんかが親しんでいい人ではない、雲の上の存在なのはわかっているけれど。
「えっと、今のご指導も本当に頼もしかったです! あと昨日のケーキもお料理も一級品でしたし、図書室の蔵書にも見識の高さが伺えたというか」
「そ、そう? 私にとっては当たり前だけど……」
「そんなそんな、夕方だってこの部屋の場所が分からなくて迷子になってたらテレパシー送ってきてくれたじゃないですか! あれは本当に助かりました。まさかテレパシーまで使えるなんて」
「ふっふ~ん……そっかあ……」
満更でもなさそうな顔で、アンテナもハートを描いているドラウスさん。か~わいい……指導ってこんなにふわふわしたものだっけ。聞くところによるとビシバシ怒られたり泣かされたりするところもあるようなので、来る前はすごく緊張していたのに。
「私、ドラウスさんのところに来れて本当に幸せです……」
ついぽろっとこぼれた言葉にはっと口を噤む。今のはさすがに馴れ馴れしかったかも__との心配は三秒で吹き飛んだ。聞いた途端ドラウスさんが堪らないといった勢いで飛びつくように抱きしめてきたのだ。
「パパに任せなさいもう全部!」
「ひゃっ!? ぱ、パパ?」
「息子も可愛いが娘も可愛いなあ! 来なさい、いや運んであげよう。君が来る前に準備したものが色々あるんだ」
「わわわ……!」
マントの中に包まれて、まるでセグウェイに乗っているかのように廊下を進む。こんなにあったかいもの知らない。受け止めていいものなのかも分からない。ただそろ~っ……と見上げたドラウスさんは幸せそうで、それを見たらなんだか嬉しくなったのだった。
「わーんドラウスさぁん……!」
翌日、午後からいよいよ指導が始まった。サイコキネシスが上手く使えない……というのは、具体的には自発的に使うと変なことになってしまう、意識がない時に暴走してしまうの二つに分けられる。後者の理屈を知るためにもまずは前者から始めようということになったのだった。
「そうだな……まずはこれ、このチョコレートを浮かべてくれ」
「は、はい」
ドラウスさんが掲げてみせたのは何の変哲もないタブレットチョコレート。意識を飛ばすように物の構造をよくイメージして、浮かばせる。くるくるっと回転させたり上下に揺らしたり、一口だけパキッと割ってドラウスさんに渡すことだって造作ない。彼も頷いてご褒美にチョコレートをくれた。
「よくできている。次にあの花瓶はどうだ?」
「花瓶ですか!? でもあの、もし壊したら」
「いくらでも変えは利く。やってみなさい」
そう言われても次の目標である花瓶はとても変えが利きそうな代物には見えない。とってもお高そうだし、陶器の細やかな飾りもついていて繊細そうだ。内心ビビって逃げたい気持ちを抑えながら花瓶に意識を飛ばすと、ふらふらっと揺れながらも花瓶は浮き上がった。回してと言われて回してみるけれど角度が斜めっている。かえって戻そうとすればぐるんっと上下反対になってしまった。
「もう下ろしても……?」
「……なるほど。よし、次はこのソファだ。聞いて驚け、これは日本の家具屋で買ったやつでな、数千円で買えるのに壊れにくいのだ。いくらでも振り回していい。なんならそろそろ買い替えたいやつだし」
ひえ~許された。花瓶をそっと戻して今度はソファに向き直る。確かにこれは歴史も価値も感じられないし(数千円は嘘だけど)、それでいて全体の形もイメージしやすい。浮かせて、回して、そのままお掃除だってできちゃう。どや、と振り返るとなぜかドラウスさんもどやっとしていて可愛かった。
「分かった! 君のサイコキネシスは精神状態と深く密接しているようだ。つまり自信だな。本当にこれを動かしてもいいのか? 怒られないか? ……と、お伺いを立てているからふよふよっとなってしまうのだ」
「なるほど、それが分かったからどやっとしてたんですね」
「ああ! ここに気づくとはさすが私! 御祖父様には敵わなくても解決してみせよう!」
よく見れば髪の毛のアンテナもビビっとして嬉しそうだ。でも御祖父様? というのは……私が聞いたのはドラウスさんとその奥さんとご子息のことだけだったので、あまりその前を知らないのだ。御祖父様はそんなにすごいお方なのですか、と聞くと彼は多少驚いた様子でこちらを見た。
「君、御祖父様を知らなかったのかね? てっきり一族の格の高さに惹かれて申し込んできたのかと」
「??? たしかに竜の一族がすごいっていうのは聞いてましたけど……ドラウスさんのことじゃないんですか? すみません浅学で」
「わ、私が……!? すごい……!?」
「あ、そういえば当主じゃなくて次期当主なんでしたっけ。でも色々とやられてるし……そのへんあやふやでした」
言えば言うほど自分の学のなさにびっくりする。とにかく住処を確保することが最優先だったのでなんかすごい人がいるとこなんだな~くらいに思っていて、あんまり調べたことなかった。こういうのは普通教育されるのだろうか? ……というか、ドラウスさんが静かだ。
「ドラウスさん?」
「あ、ああ……具体的には?」
「へ?」
「その、具体的には私のどの辺がすごいと思ってくれたのかな~って……」
えっかわいい。 ……かわいい!
照れながらも子供のようにチラチラこちらを見てくる姿は心にキュンとくるものがあった。昨日の朝方に書斎からドンドンドラウス努力の子……とか聞こえてきたし、この人ももしかして褒められなれていなかったりする? 私なんかが親しんでいい人ではない、雲の上の存在なのはわかっているけれど。
「えっと、今のご指導も本当に頼もしかったです! あと昨日のケーキもお料理も一級品でしたし、図書室の蔵書にも見識の高さが伺えたというか」
「そ、そう? 私にとっては当たり前だけど……」
「そんなそんな、夕方だってこの部屋の場所が分からなくて迷子になってたらテレパシー送ってきてくれたじゃないですか! あれは本当に助かりました。まさかテレパシーまで使えるなんて」
「ふっふ~ん……そっかあ……」
満更でもなさそうな顔で、アンテナもハートを描いているドラウスさん。か~わいい……指導ってこんなにふわふわしたものだっけ。聞くところによるとビシバシ怒られたり泣かされたりするところもあるようなので、来る前はすごく緊張していたのに。
「私、ドラウスさんのところに来れて本当に幸せです……」
ついぽろっとこぼれた言葉にはっと口を噤む。今のはさすがに馴れ馴れしかったかも__との心配は三秒で吹き飛んだ。聞いた途端ドラウスさんが堪らないといった勢いで飛びつくように抱きしめてきたのだ。
「パパに任せなさいもう全部!」
「ひゃっ!? ぱ、パパ?」
「息子も可愛いが娘も可愛いなあ! 来なさい、いや運んであげよう。君が来る前に準備したものが色々あるんだ」
「わわわ……!」
マントの中に包まれて、まるでセグウェイに乗っているかのように廊下を進む。こんなにあったかいもの知らない。受け止めていいものなのかも分からない。ただそろ~っ……と見上げたドラウスさんは幸せそうで、それを見たらなんだか嬉しくなったのだった。