氷笑卿
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「げろっ」と声真似をした瞬間、テーブルの上に置いたそれは師匠 によって端っこに追いやられてしまった。
「あ~! カエルが!」
「何の真似だ?」
「何の真似って……酷いですよ師匠 、こんなに可愛いのに」
師匠 の拳くらいの大きさのカエル――の、チョコレート。なんか執務をしてるっぽい師匠 にこそこそ近づいて、テーブルに身を隠して、チョコレートだけテーブルに乗せてアテレコまでしてあげたのに。哀れにもカエルは机の端ギリギリで火曜サスペンスのラストシーンみたいになっていた。
「今忙しいと見て分からないか?」
「えーん、どうせインスタ用の勉強か何かなのに」
「お前どこでそんな入れ知恵をされたんだ」
「イシカナさんとRINE交換したから……あっ」
師匠 は私のポケットに無遠慮に手を突っ込むとスマホを取り上げた。ああ、また私のスマホが犠牲になっちゃう……もう二回くらい没収されてるから愛着はないけど。
「それで? 暇なのか?」
「師匠 、私のことよく分かってますね」
「毎日構え構えと絡まれているからな」
「そんな師匠 に朗報なんですけど」
崖っぷちにいたカエルをもう一度真ん中に持ってくると、師匠 はまじまじと不愉快そうにそれを見た。つぶらな瞳の造形がなかなか可愛いと思うんだけどな……とにかく、師匠 に頼み事があるのだ。簡単に言うとこれはチョコレートだ。つまり、食べ物だ。食べないといけない。でも、
「このチョコレート大きいし固いし全然食べれないんですよ」
「なんで買ったんだ」
「アホみたいな外国の味がするもの食べたくて……」
師匠 はまた馬鹿なことを始めたな……というように溜息を吐く。私だって師匠 の周りには色々巻き込んでくる人が多いなあとは思うけれど、弟子なんだからこのぐらい許してほしい。いや、許されるはず。「せんせ♡」と目をぱちぱちさせて上目遣いしたらデコピンされたけど。
「えーん暴力!師匠 なのに!」
「私に何をしろと?」
「あ、だからその、食べられるようにこれを粉々にしてほしいんです」
「可愛いとか言ってなかったか!?」
だって食べ物は食べ物ですもん。そう言うと師匠 は「なんなんだ……」と呟きながらも立ち上がってチョコレートを手に取った。キッチンへ向かう師匠 にてててとついて行きながら、執務を中断して構ってくれたのが嬉しくて誰かに言いふらしたい気持ちにまでなってしまう。
だってあの氷笑卿が、畏怖いこの人が、私の師匠 で私に構ってくれるのだから。それに師匠 ってなんだかんだ根気強く面倒見てくれるし、「いい加減にしろ」とは言うけど「勝手にしろ」とは言わないし。やっぱり師匠 大好き……なんて、今日は少し浮かれているかもしれない。
キッチンにつくと師匠 はお湯を沸かし始めた。その横でせっせとボウルと包丁を準備して、ぐつぐつ音がしてきたらそろそろ。師匠 は包丁にお湯をかけると軽く拭って、チョコレートに振りかざした。
……それにしても可愛いカエルだ。おめめがまんまるで、ちょっとアニメっぽいタッチで。チョコレート色だけど、ホワイトチョコレートのカエルもあったらもっと可愛いかも。この子が今から……バラバラに……。
「……」
「……」
「……〇、本当に切って良いんだな?」
「え? はい」
だって食べ物だもの。
師匠 は改めて包丁をカエルの頭に向けた。
頭、頭かあ。丸っぽくて平たくて可愛い頭だ。苦手だって人もいるとは思うけれど、このデフォルメっぽい形のカエルなら皆に愛されて然るべきだと思う。でもなんといっても可愛いのはおててだ。ちっちゃくて、指先がぷっくりしてて。……でも……バラバラに……。
「……」
「……?師匠 ?」
「切りにくい!」
「ひっ! な、なんですか師匠 、そんな急に叫ばなくても」
「お前わざとか? わざとじゃないのか? さっきから切ろうとする度にうるうるうるうる泣きそうな顔をして、私が悪人みたいだろうが! これが可愛いなら食べずに取っておいたらいい、それが買った者の権利というものだ」
師匠 は一息にそう言うとぜえはあと肩を上下させて包丁を置いた。え……? ウルウル……? 買った者の権利……? 何言ってるんだろう、食べ物なのに。
「師匠 、普通に切ってくれたらいいのに」
「だ、か、ら、〇、お前が……っ!」
「わたしが?」
「お前の顔が……」
「??」
顔? 不思議で師匠 の顔を下から覗き込むと、師匠 は私を見て顔を背けてしまった。何してるんだろ師匠 ……。服をぐいぐい引っ張って呼びかけて見てもこちらを見てくれない。
「……あ、師匠 、もしかしてカエルが可愛くて切れないんですか? 師匠 も可愛いところありますね」
「お前だお前!」
「あ! やっと見てくれた」
師匠 が私の肩を掴む。と同時に師匠 の顔が見れて嬉しくなった。でも少し表情に出ちゃったかもしれない。師匠 が私を見て、もう全てどうでもいいというように脱力してしまったから。
「っお前……天然どころじゃないぞ……」
「てんねん……? えと、とりあえずチョコレート切って欲しいんですけど……せんせ? せんせー……?」
「あ~! カエルが!」
「何の真似だ?」
「何の真似って……酷いですよ
「今忙しいと見て分からないか?」
「えーん、どうせインスタ用の勉強か何かなのに」
「お前どこでそんな入れ知恵をされたんだ」
「イシカナさんとRINE交換したから……あっ」
「それで? 暇なのか?」
「
「毎日構え構えと絡まれているからな」
「そんな
崖っぷちにいたカエルをもう一度真ん中に持ってくると、
「このチョコレート大きいし固いし全然食べれないんですよ」
「なんで買ったんだ」
「アホみたいな外国の味がするもの食べたくて……」
「えーん暴力!
「私に何をしろと?」
「あ、だからその、食べられるようにこれを粉々にしてほしいんです」
「可愛いとか言ってなかったか!?」
だって食べ物は食べ物ですもん。そう言うと
だってあの氷笑卿が、畏怖いこの人が、私の
キッチンにつくと
……それにしても可愛いカエルだ。おめめがまんまるで、ちょっとアニメっぽいタッチで。チョコレート色だけど、ホワイトチョコレートのカエルもあったらもっと可愛いかも。この子が今から……バラバラに……。
「……」
「……」
「……〇、本当に切って良いんだな?」
「え? はい」
だって食べ物だもの。
頭、頭かあ。丸っぽくて平たくて可愛い頭だ。苦手だって人もいるとは思うけれど、このデフォルメっぽい形のカエルなら皆に愛されて然るべきだと思う。でもなんといっても可愛いのはおててだ。ちっちゃくて、指先がぷっくりしてて。……でも……バラバラに……。
「……」
「……?
「切りにくい!」
「ひっ! な、なんですか
「お前わざとか? わざとじゃないのか? さっきから切ろうとする度にうるうるうるうる泣きそうな顔をして、私が悪人みたいだろうが! これが可愛いなら食べずに取っておいたらいい、それが買った者の権利というものだ」
「
「だ、か、ら、〇、お前が……っ!」
「わたしが?」
「お前の顔が……」
「??」
顔? 不思議で
「……あ、
「お前だお前!」
「あ! やっと見てくれた」
「っお前……天然どころじゃないぞ……」
「てんねん……? えと、とりあえずチョコレート切って欲しいんですけど……せんせ? せんせー……?」