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今夜もたくさん辻Y談してきたと、彼が嬉しそうにやって来たのはもう夜も遅い頃だった。宣言通り心なしか肌が艶々している気がしないでもない。
「ご実家の方は大丈夫だったんですか?」
「ああ、VRC? へーきへーき。どうやら辻野球拳の方にも人員を割いていたらしくてね」
「ワア~……」
吸対にお疲れ様と念を送りつつ彼のコートをかける。あちこち走って来ただろうから軽くブラッシングしていると、ソファに横柄になだれ込んだヨルマさんからやけに視線を感じた。
「……? どうしました? 」
「いや? やっぱり来るならお風呂上がりで正解だと思ってね」
そういえば彼の言うとおりちょうどお風呂上がりだった。以前くれたジェラ〇ケのショートパンツ型のやつを着ているおかげでぽかぽかだ。でも特別なことはない気がする。
「……?」
「ハハッそう気にしないでくれたまえ。よく似合っているよ」
「そ、そうですか……?」
なんとなく意味ありげな視線がいたたまれなくてキッチンへ逃げる。たっぷり深呼吸してから、コップにミネラルウォーターをとぽとぽ注いでまた戻る。いつも水か珈琲紅茶だけどミルクの方がよかったりするのかな、とソファを見た時だった。
ガクッと足が引っかかる感触がした。分かる、朝も転びそうになったヘアアイロンのコード。だからあの時片付けておいた方が良いなって思ったのに……と後悔してももう遅い。コップは見事に私の手を離れて、空中で円弧を描き落ちていった。
「わ、ぁあ! よるまさん!!」
コップが床に落ちてガランガランと鳴る。やがて止まるまでヨルマさんからは何の音もせずに、こわくてそろりとソファに手をかけて覗いてみた。
「……」
びしゃびしゃだ。
どうやら顔面にちょうど水をかけてしまったようで、彼は前髪を乱し、首筋にまで水滴を流しながらそこにいた。ぱちっと開いた金色の睫毛さえも水を含んで濡れて光っている。何か言わなきゃ。ごめんなさいとか、大丈夫ですかとか、言わなきゃいけないのに、喉を伝う水に見惚れてしまっていた。品のある彼の香水が立ち上ってきて酔いそうだ。瞬きをして、半分開いたような目から覗く赤い眼球がゆっくり動いて私を捉える。何か話す唇から見えた鋭い八重歯から目を逸らせない。
「……〇ちゃん? 聞こえているかい」
その口が私の名前を呼ぶ。動けないでいると彼は水を払いながら立ち上がって、しゅるりと首元をゆるめた。ソファの後ろでへたり込んでいる私の元へ膝をつく。
「……ふふっ、そう。〇ちゃんには刺激が強すぎた?」
「だ、って……よるまさん、髪」
「ああ、乱れてしまったかね。似合うかい?」
「にあう、って……」
ヨルマさんは前髪にぐしゃっと手を通して、その隙間から笑った。ゆるめられた首元から喉仏が露わにされている。私のすぐ後ろに片手をついて、体勢を崩されれば毛足の長いカーペットの感触を頭に感じた。心臓の音だけがばくばくと何よりも大きく響いている。きっと彼にも聞こえているんだろう、くすくすと零れる声が鼓動の合間に聞こえる。
「〇ちゃん、顔が真っ赤だよ。一体おじさんのどこを見ていたのかな?」
「や……ちがくて……」
「そう? 素直になった方が楽だと思うけどなぁ。君も嘘が下手だねえ」
「うそじゃ……っ」
後頭部を抱えられて目を瞑った。唇が奪われる――けれど、押し当てるだけ。ふに、ふに、と何度か押し当てては離れて、先程よりも官能的な香りを増した香水が湧き立つ中で彼の唇の感触だけが伝わってくる。
「ん……、……?」
「っはは、物足りない?」
彼らしくないキスに瞼を開くと、舌なめずりする口元がチラリと見えて咄嗟にまた目を瞑る。舌の先でぬらぬらと唇をなぞられて、口の隙間もそろりと撫でていく。けれど中には入ってこない。頭を支える手が耳を慈しむように温めては擦られるだけだ。音が聞こえにくくなって、耳がくすぐったくてゾクゾクする。生理的な涙がじわりと込み上げると彼は涙をひと舐めしてまた唇を舐めた。まるで下ごしらえのような動きにビクついてしまう。それを見越してか、ふっとあつい吐息がかけられた後やっと唇に吸いつかれ、ゆっくりとはまれた。
「ん、む……ぁ……」
「……ふふっ……力が抜けてきたね。いい子になれそうかな」
耳をくすぐっていた彼の左手がずれてきて、濡れた唇を多少乾燥した親指でなぞられる。ちゅぷ、と口内に入ってきた指は舌を診るように撫であげては押し込んだ。彼の前髪からぽたりと落ちてきた水滴にぼんやり目を開ける。脳内に響く水音の一つ一つに意識が溶かされていく。
「ん~……とろとろだねえ。今日はお口を躾てあげようか」
「んっ……む、ぅ……」
「ハハッそう物欲しそうな顔しないで。私もお腹が空いているんだ」
ヨルマさんが指を抜く。銀の糸がつぅと引いた。首筋に顔が埋められて、彼の八重歯が甘噛みするように肌を引っ掻いている。
「ご実家の方は大丈夫だったんですか?」
「ああ、VRC? へーきへーき。どうやら辻野球拳の方にも人員を割いていたらしくてね」
「ワア~……」
吸対にお疲れ様と念を送りつつ彼のコートをかける。あちこち走って来ただろうから軽くブラッシングしていると、ソファに横柄になだれ込んだヨルマさんからやけに視線を感じた。
「……? どうしました? 」
「いや? やっぱり来るならお風呂上がりで正解だと思ってね」
そういえば彼の言うとおりちょうどお風呂上がりだった。以前くれたジェラ〇ケのショートパンツ型のやつを着ているおかげでぽかぽかだ。でも特別なことはない気がする。
「……?」
「ハハッそう気にしないでくれたまえ。よく似合っているよ」
「そ、そうですか……?」
なんとなく意味ありげな視線がいたたまれなくてキッチンへ逃げる。たっぷり深呼吸してから、コップにミネラルウォーターをとぽとぽ注いでまた戻る。いつも水か珈琲紅茶だけどミルクの方がよかったりするのかな、とソファを見た時だった。
ガクッと足が引っかかる感触がした。分かる、朝も転びそうになったヘアアイロンのコード。だからあの時片付けておいた方が良いなって思ったのに……と後悔してももう遅い。コップは見事に私の手を離れて、空中で円弧を描き落ちていった。
「わ、ぁあ! よるまさん!!」
コップが床に落ちてガランガランと鳴る。やがて止まるまでヨルマさんからは何の音もせずに、こわくてそろりとソファに手をかけて覗いてみた。
「……」
びしゃびしゃだ。
どうやら顔面にちょうど水をかけてしまったようで、彼は前髪を乱し、首筋にまで水滴を流しながらそこにいた。ぱちっと開いた金色の睫毛さえも水を含んで濡れて光っている。何か言わなきゃ。ごめんなさいとか、大丈夫ですかとか、言わなきゃいけないのに、喉を伝う水に見惚れてしまっていた。品のある彼の香水が立ち上ってきて酔いそうだ。瞬きをして、半分開いたような目から覗く赤い眼球がゆっくり動いて私を捉える。何か話す唇から見えた鋭い八重歯から目を逸らせない。
「……〇ちゃん? 聞こえているかい」
その口が私の名前を呼ぶ。動けないでいると彼は水を払いながら立ち上がって、しゅるりと首元をゆるめた。ソファの後ろでへたり込んでいる私の元へ膝をつく。
「……ふふっ、そう。〇ちゃんには刺激が強すぎた?」
「だ、って……よるまさん、髪」
「ああ、乱れてしまったかね。似合うかい?」
「にあう、って……」
ヨルマさんは前髪にぐしゃっと手を通して、その隙間から笑った。ゆるめられた首元から喉仏が露わにされている。私のすぐ後ろに片手をついて、体勢を崩されれば毛足の長いカーペットの感触を頭に感じた。心臓の音だけがばくばくと何よりも大きく響いている。きっと彼にも聞こえているんだろう、くすくすと零れる声が鼓動の合間に聞こえる。
「〇ちゃん、顔が真っ赤だよ。一体おじさんのどこを見ていたのかな?」
「や……ちがくて……」
「そう? 素直になった方が楽だと思うけどなぁ。君も嘘が下手だねえ」
「うそじゃ……っ」
後頭部を抱えられて目を瞑った。唇が奪われる――けれど、押し当てるだけ。ふに、ふに、と何度か押し当てては離れて、先程よりも官能的な香りを増した香水が湧き立つ中で彼の唇の感触だけが伝わってくる。
「ん……、……?」
「っはは、物足りない?」
彼らしくないキスに瞼を開くと、舌なめずりする口元がチラリと見えて咄嗟にまた目を瞑る。舌の先でぬらぬらと唇をなぞられて、口の隙間もそろりと撫でていく。けれど中には入ってこない。頭を支える手が耳を慈しむように温めては擦られるだけだ。音が聞こえにくくなって、耳がくすぐったくてゾクゾクする。生理的な涙がじわりと込み上げると彼は涙をひと舐めしてまた唇を舐めた。まるで下ごしらえのような動きにビクついてしまう。それを見越してか、ふっとあつい吐息がかけられた後やっと唇に吸いつかれ、ゆっくりとはまれた。
「ん、む……ぁ……」
「……ふふっ……力が抜けてきたね。いい子になれそうかな」
耳をくすぐっていた彼の左手がずれてきて、濡れた唇を多少乾燥した親指でなぞられる。ちゅぷ、と口内に入ってきた指は舌を診るように撫であげては押し込んだ。彼の前髪からぽたりと落ちてきた水滴にぼんやり目を開ける。脳内に響く水音の一つ一つに意識が溶かされていく。
「ん~……とろとろだねえ。今日はお口を躾てあげようか」
「んっ……む、ぅ……」
「ハハッそう物欲しそうな顔しないで。私もお腹が空いているんだ」
ヨルマさんが指を抜く。銀の糸がつぅと引いた。首筋に顔が埋められて、彼の八重歯が甘噛みするように肌を引っ掻いている。