You really got me(YとVRC職員)
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今日も食事を運ぶ。それも吸血鬼向けの食事を。
私が勤務するVRCには多数の吸血鬼が収容されていて、それぞれに合わせた食事が必要だ。輸血パックだけの者もいれば、より人間らしい食事を好むもの、偏食な者など非常に面倒くさい。誰か手伝ってくれないかな~……と野球拳の前を小走りに避けつつワゴンを押せば、思ったより勢いがついてしまった。
あ、と声に出た時にはワゴンは手から離れた後だった。やばい廊下が真っ赤になる。でもミルクもあるからピンク? なんて考え始めた頭は既にパニクっていたんだと思う。とにかくワゴンを捕まえないと、と踏み出せば、着地したはずの足すらずるっと滑った。
「!? なん……っ」
「おっと、危なっかしいお嬢さんだね」
囁くような声がする。ぐるっと反転しかけた視界は途中でぴたりと止まって、ワゴンが倒れる音も聞こえてこない。ぎゅっと閉じていた目を恐る恐る開くと__収容服を着た成人指定吸血鬼がニンマリ瞳を歪めてこちらを覗き込んでいた。
「わ、わわわy……!」
「ん~? なんだって? このY談おじさんに助けられた気分はどうかな」
どうもこうもゴミ箱を食べさせられるような気持ちだ。この、わ…………に助けられるなんて。だってこの人は一番近寄りたくなかった人物で、借りを作るなんて以ての外なのだから。
しかし彼はそんな私の悔しさをじゅうぶんに察知しているようだ。もう転ばないとみるとワゴンを眺めて「君が調理師か。いつも美味しい料理をありがとう、たまに薬入ってるけど」とか、「あっ今日は私これがいいな。ちょうどローストビーフ食べたくて」とか好き放題言っている。大体ローストビーフはリクエストに投函されてたから……ごほん、とにかく早く職務に戻るべきだ。ワゴンを取り返さないと。そう焦って踏み出した私はまた床に裏切られた。
「ひぁっ! あぁ、あ……」
「こら。気をつけなさい、床が濡れている」
……。
言われた通りよく見ると廊下の一部が濡れていた。多分清掃された後に乾ききっていなかったんだろうけど……けど……!
「う……うぅ……」
「う?」
「う、うっさいばーーーか!!」
もう無理。恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい! しんじゃう! いやしね! 一度ならまだしも二度も転びかけるなんて最悪だ。しかも両方このへ、へんた……成人指定待ったなしの吸血鬼に助けられるなんて! 有り得ない有り得ないしね!
濡れている場所を避けてワゴンに飛びつくと超速で廊下の一番奥を目指して走った。奥から運んだら俺の遅くなる……とか文句も聞こえてきたけどそんなの知らない。ばか! 私がばか!!
一番奥の部屋について、ダーンっと扉を開けて、「今日のメニューはこれですけ……ど?」……あれ、収容されているはずの吸血鬼が居ない。
……そういえばここって誰の部屋? ネームプレートは……。
「ありがとう。リクエスト通りローストビーフで頼むよ」
……追いついてきた彼の名が、しっかりと刻まれていた。
現実を受け入れたくないあまり頭がフリーズする。彼はワゴンから一つプレートを取って、それからデザートも悠々と選ぶ。その間何も出来ずに突っ立っている。
「……ふふっ。顔、真っ赤だけど大丈夫かな?」
「だ……っな……っ!」
大丈夫なわけ、ないでしょ。
収容されているのに綺麗に整えられた金髪が目に入る。妖しげなものを秘めた真っ赤な瞳も、愉悦に満ちた表情も。いつ見てもその言動からは考えられないほどに私の心臓を揺らす。だから近寄りたくなかったんだ。自分の弱みを嫌というほど教えられてしまうから。
「この……っ……」
「……はは、はははっ! 良いねえお嬢さん、君を暴くのはとても面白そうだ」
むかつくことを言われてるのに反論できない。片眉を上げて下卑た顔でじろじろとあちこち観察されて、嫌なはずなのに目を逸らせない。なんで、なんで……その理由は分かっているけど分かりたくなかった。振り切るようにワゴンを持ち直して、廊下の入口に向けてUターンさせる。
「おや」
そして、ダッシュで逃げた。あんな人と居たら全部だめになっちゃう。さっさとほかの配給を終わらせて……
「っひぁああころぶ!!」
「アッハハ! 君本気でドジだね!」
私が勤務するVRCには多数の吸血鬼が収容されていて、それぞれに合わせた食事が必要だ。輸血パックだけの者もいれば、より人間らしい食事を好むもの、偏食な者など非常に面倒くさい。誰か手伝ってくれないかな~……と野球拳の前を小走りに避けつつワゴンを押せば、思ったより勢いがついてしまった。
あ、と声に出た時にはワゴンは手から離れた後だった。やばい廊下が真っ赤になる。でもミルクもあるからピンク? なんて考え始めた頭は既にパニクっていたんだと思う。とにかくワゴンを捕まえないと、と踏み出せば、着地したはずの足すらずるっと滑った。
「!? なん……っ」
「おっと、危なっかしいお嬢さんだね」
囁くような声がする。ぐるっと反転しかけた視界は途中でぴたりと止まって、ワゴンが倒れる音も聞こえてこない。ぎゅっと閉じていた目を恐る恐る開くと__収容服を着た成人指定吸血鬼がニンマリ瞳を歪めてこちらを覗き込んでいた。
「わ、わわわy……!」
「ん~? なんだって? このY談おじさんに助けられた気分はどうかな」
どうもこうもゴミ箱を食べさせられるような気持ちだ。この、わ…………に助けられるなんて。だってこの人は一番近寄りたくなかった人物で、借りを作るなんて以ての外なのだから。
しかし彼はそんな私の悔しさをじゅうぶんに察知しているようだ。もう転ばないとみるとワゴンを眺めて「君が調理師か。いつも美味しい料理をありがとう、たまに薬入ってるけど」とか、「あっ今日は私これがいいな。ちょうどローストビーフ食べたくて」とか好き放題言っている。大体ローストビーフはリクエストに投函されてたから……ごほん、とにかく早く職務に戻るべきだ。ワゴンを取り返さないと。そう焦って踏み出した私はまた床に裏切られた。
「ひぁっ! あぁ、あ……」
「こら。気をつけなさい、床が濡れている」
……。
言われた通りよく見ると廊下の一部が濡れていた。多分清掃された後に乾ききっていなかったんだろうけど……けど……!
「う……うぅ……」
「う?」
「う、うっさいばーーーか!!」
もう無理。恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい! しんじゃう! いやしね! 一度ならまだしも二度も転びかけるなんて最悪だ。しかも両方このへ、へんた……成人指定待ったなしの吸血鬼に助けられるなんて! 有り得ない有り得ないしね!
濡れている場所を避けてワゴンに飛びつくと超速で廊下の一番奥を目指して走った。奥から運んだら俺の遅くなる……とか文句も聞こえてきたけどそんなの知らない。ばか! 私がばか!!
一番奥の部屋について、ダーンっと扉を開けて、「今日のメニューはこれですけ……ど?」……あれ、収容されているはずの吸血鬼が居ない。
……そういえばここって誰の部屋? ネームプレートは……。
「ありがとう。リクエスト通りローストビーフで頼むよ」
……追いついてきた彼の名が、しっかりと刻まれていた。
現実を受け入れたくないあまり頭がフリーズする。彼はワゴンから一つプレートを取って、それからデザートも悠々と選ぶ。その間何も出来ずに突っ立っている。
「……ふふっ。顔、真っ赤だけど大丈夫かな?」
「だ……っな……っ!」
大丈夫なわけ、ないでしょ。
収容されているのに綺麗に整えられた金髪が目に入る。妖しげなものを秘めた真っ赤な瞳も、愉悦に満ちた表情も。いつ見てもその言動からは考えられないほどに私の心臓を揺らす。だから近寄りたくなかったんだ。自分の弱みを嫌というほど教えられてしまうから。
「この……っ……」
「……はは、はははっ! 良いねえお嬢さん、君を暴くのはとても面白そうだ」
むかつくことを言われてるのに反論できない。片眉を上げて下卑た顔でじろじろとあちこち観察されて、嫌なはずなのに目を逸らせない。なんで、なんで……その理由は分かっているけど分かりたくなかった。振り切るようにワゴンを持ち直して、廊下の入口に向けてUターンさせる。
「おや」
そして、ダッシュで逃げた。あんな人と居たら全部だめになっちゃう。さっさとほかの配給を終わらせて……
「っひぁああころぶ!!」
「アッハハ! 君本気でドジだね!」