闇鍋
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今日もたっぷり仕込みをしなければ。
調理人の朝は早い。それも一人一人が山ほど食べる夜兎に合わせてつくるとなれば、当然大量の食材と調味料が必要だった。
お肉は一人一頭レベルだし、そのくせ野菜は好き嫌いの多い人もあるし、主食はまたえげつなくて……こんなときばっかりは夜兎の力が欲しいと思う。私がのろのろとお米一袋を炊飯器に投入する間に、団長は両手に二袋ずつ持って、はい、終わり、ってするんだもの。
「ほーんとすっごい……」
「〇も鍛えればいいんじゃない?」
「鍛えるとかいう次元ですか?」
団長はニコニコして今日はなにつくるの? なんて大鍋を覗いている。あっ食べた。今絶対つまみ食いした。
だけど重たいものを運んでくれたのはすごくありがたかったので、なにも言わないでおいた。たまたま通りがかってくれたおかげで、少し朝食が豪華になるのだから。
「団長、あとは機械の力も借りられますし大丈夫ですよ。ほんと助かりました。朝食は多めに__」
「なにが大丈夫なの?」
「え?」
なに、って。
意味がわからなくてきょとんとしていると、団長がずいっと近づいてきて、身体を傾けながら聞いてくる。
「俺がここに来たのは偶然だとでも?」
「思ってますけど……」
素直に答えれば団長は不満気な表情を浮かべて、ぼそ、と呟いた。
「会いに来たとか考えないの」
その瞬間、時が止まってしまう。
会いに? 誰が、誰に、そんなの。
「わー顔真っ赤」
「団長……っ!」
両手で顔を包み込まれて、彼の温かさがじんわり伝わってくる。あつくてあつくて、もう頭が真っ白で、誤魔化すことすらできない。
「ねえ、俺ちゃんと名前あるんだけど。知らなかったら覚えてね、かーむーい、はい」
「か、かむ……」
「ん?」
団長、顔怖い。笑ってるけど笑ってない。
「神威、さん」
「ハーイ神威です。今日も美味しかったよ、朝ごはん楽しみにしてるネ」
「あ」
ひらひら、と手を振って、そのまま団長は出ていってしまった。
なんだったんだろう、今の。夢みたい。だけど、自動運転を始めている巨大炊飯器が妄想じゃないことを教えてくれている。
別の星で調理人だった私を引き抜きに来た団長。
いつもニコニコ話しかけてくれて、機嫌が悪いときには色んな人のお腹をぶち抜く団長。
〇のつくるご飯は美味しいネ、って、毎日褒めてくれる団長。
……同い年の、ふとしたときに無邪気に笑う神威。
__「会いに来たとか考えないの」
「……っ!」
そこからはあまり記憶がない。
気づけば阿伏兎さんが食事を取りに来ていた。食卓に着いたとき、初めてにんじんが全部ハート型にくり抜かれているのに気がついて、恥ずかしすぎて即食べて寝た。
調理人の朝は早い。それも一人一人が山ほど食べる夜兎に合わせてつくるとなれば、当然大量の食材と調味料が必要だった。
お肉は一人一頭レベルだし、そのくせ野菜は好き嫌いの多い人もあるし、主食はまたえげつなくて……こんなときばっかりは夜兎の力が欲しいと思う。私がのろのろとお米一袋を炊飯器に投入する間に、団長は両手に二袋ずつ持って、はい、終わり、ってするんだもの。
「ほーんとすっごい……」
「〇も鍛えればいいんじゃない?」
「鍛えるとかいう次元ですか?」
団長はニコニコして今日はなにつくるの? なんて大鍋を覗いている。あっ食べた。今絶対つまみ食いした。
だけど重たいものを運んでくれたのはすごくありがたかったので、なにも言わないでおいた。たまたま通りがかってくれたおかげで、少し朝食が豪華になるのだから。
「団長、あとは機械の力も借りられますし大丈夫ですよ。ほんと助かりました。朝食は多めに__」
「なにが大丈夫なの?」
「え?」
なに、って。
意味がわからなくてきょとんとしていると、団長がずいっと近づいてきて、身体を傾けながら聞いてくる。
「俺がここに来たのは偶然だとでも?」
「思ってますけど……」
素直に答えれば団長は不満気な表情を浮かべて、ぼそ、と呟いた。
「会いに来たとか考えないの」
その瞬間、時が止まってしまう。
会いに? 誰が、誰に、そんなの。
「わー顔真っ赤」
「団長……っ!」
両手で顔を包み込まれて、彼の温かさがじんわり伝わってくる。あつくてあつくて、もう頭が真っ白で、誤魔化すことすらできない。
「ねえ、俺ちゃんと名前あるんだけど。知らなかったら覚えてね、かーむーい、はい」
「か、かむ……」
「ん?」
団長、顔怖い。笑ってるけど笑ってない。
「神威、さん」
「ハーイ神威です。今日も美味しかったよ、朝ごはん楽しみにしてるネ」
「あ」
ひらひら、と手を振って、そのまま団長は出ていってしまった。
なんだったんだろう、今の。夢みたい。だけど、自動運転を始めている巨大炊飯器が妄想じゃないことを教えてくれている。
別の星で調理人だった私を引き抜きに来た団長。
いつもニコニコ話しかけてくれて、機嫌が悪いときには色んな人のお腹をぶち抜く団長。
〇のつくるご飯は美味しいネ、って、毎日褒めてくれる団長。
……同い年の、ふとしたときに無邪気に笑う神威。
__「会いに来たとか考えないの」
「……っ!」
そこからはあまり記憶がない。
気づけば阿伏兎さんが食事を取りに来ていた。食卓に着いたとき、初めてにんじんが全部ハート型にくり抜かれているのに気がついて、恥ずかしすぎて即食べて寝た。