夜行梟
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見慣れた天井、木で造られたベッド、鶏の声。こうしたものが吐きそうなほど憎かったのは初めてだ。
隣を見ても彼は居ない。着替えても鳥の羽根一つ落ちてこない。やはりというか、私は苛つくほど丁寧に村に帰されていた。
村では魔物に気をつけるようにとの話が流れていて、郵便受けに魔物避けの鈴が一つ入っていた。つまみ上げるとリィンリンと響く鈴を見て最近使っていなかったことを思い出す。
家を出て森を歩き回った。小さな花畑を通って、小川を横切って、鳥の鳴き声に耳を澄ませた。そして彼の住み家は__消えていた。
薪の積まれていた場所に木屑が残っている。家のあった地面には壁や柱の形跡があって、だけれどどうしようもなく更地だった。
ぽっかりと切り開かれたこの場所にはやがて種が根づき木が生えて消えてゆくのだろう。
「だから……っ……」
無い。なにも、誰も。
彼はまともな別れもせずにどこかへ消えてしまった。探されていたことが原因なのかもしれないし、間接的に別の理由があるのかもしれないし、それよりも前から考えていたのかもしれないけれど分からない。
なにも教えてくれなかったんだもの。
ばたぼたとこぼれる涙が乾いた土を濡らした。ずっとここに居ようか。彼が居なくなった今なら空いた縄張りを奪おうと魔物が寄ってくるかもしれないけれど、それでもいい。もうどうでもいい。
別れが来たら自分はまたありきたりな人生に戻るのかと思っていた。だけど、私は自分が思っていたよりも夜行さんのことが好きだったみたいだ。
いくら拭っても涙が絶えることはなく、梟の声が聞こえることもなかった。
隣を見ても彼は居ない。着替えても鳥の羽根一つ落ちてこない。やはりというか、私は苛つくほど丁寧に村に帰されていた。
村では魔物に気をつけるようにとの話が流れていて、郵便受けに魔物避けの鈴が一つ入っていた。つまみ上げるとリィンリンと響く鈴を見て最近使っていなかったことを思い出す。
家を出て森を歩き回った。小さな花畑を通って、小川を横切って、鳥の鳴き声に耳を澄ませた。そして彼の住み家は__消えていた。
薪の積まれていた場所に木屑が残っている。家のあった地面には壁や柱の形跡があって、だけれどどうしようもなく更地だった。
ぽっかりと切り開かれたこの場所にはやがて種が根づき木が生えて消えてゆくのだろう。
「だから……っ……」
無い。なにも、誰も。
彼はまともな別れもせずにどこかへ消えてしまった。探されていたことが原因なのかもしれないし、間接的に別の理由があるのかもしれないし、それよりも前から考えていたのかもしれないけれど分からない。
なにも教えてくれなかったんだもの。
ばたぼたとこぼれる涙が乾いた土を濡らした。ずっとここに居ようか。彼が居なくなった今なら空いた縄張りを奪おうと魔物が寄ってくるかもしれないけれど、それでもいい。もうどうでもいい。
別れが来たら自分はまたありきたりな人生に戻るのかと思っていた。だけど、私は自分が思っていたよりも夜行さんのことが好きだったみたいだ。
いくら拭っても涙が絶えることはなく、梟の声が聞こえることもなかった。