兄は烏なので文字が読めない。

「これはなんと書いてあるんだ？」

　だからレシピを利用して料理をつくるとき私を頼ってくれる。

「これはねー、牛乳を混ぜて焼いてって。クランベリーとか入れたら美味しいよって」
「なるほど」

　いつも守られてばかりだから、こんなときは嬉しくってぴょこぴょこと跳ねてしまう。兄の役に立てるならいくらでも勉強するし、新しい言葉だってなんでも覚えられそうな気がする。
　(守られるよりは切り開く方が好きだけど、学ぶことも切り開く行為だし、まあ大人しくしてるのもいいかなとか)

「これは？」
「生地をまとめてって」

　それに、料理をして笑う兄はかっこいい。にこって。にこってしてくれるの。あの御方に褒められてテンション爆上げ状態みたいな、幸せな空気をいつも纏っている。だから私も幸せ。
　役得は他にもある。リクエストをちょっと聞いてくれるところとか、試食をさせてくれるところとか、あと、

「これは？」
「これはね、冷蔵庫に入れて、妹を抱きしめながら二十分待ってねって書いてあるの！」
「そうか、そう書いてあるなら仕方ないな」

　こういうところ。
　兄は私を抱きしめて、頭を撫でた。

「満足？」
「まんぞく」

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料理するっていうとあからさまに子犬の尻尾が見えるのでわざと読めないレシピ持ってくるマルフィ