王馬バースデー
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―夕方。
王馬は今ベッドに寝転がりながら、みんなからもらった誕生日プレゼントを開けているところだ。
「わぁー!これタピオカジュースだよ!ゴン太にしてはセンスがいいね」
「…なぁ。何故わざわざ私の部屋に来て開けてるんだ?しかもそこは私のベッドだ」
「そんな固いこと言わないでよ。次は―…あ、ハンモックだ!……何これ。クマミミ?一体誰の嫌がらせかな?まぁ、だいたい想像はつくけど」
「…たくさん貰ったな」
数々の誕生日プレゼントに囲まれて、王馬はご満悦の様子だ。一部を除いて、どれもこれも王馬の好きなものばかりのようだ。全てモノモノマシーンとカジノで交換したものだろうが、欲しいものを狙うのはなかなか難しい事だ。モノモノマシーンは何が出るかわからないし、カジノで交換するにも大量のコインが必要らしい。
「六路木ちゃんは何かくれないの?」
プレゼントを催促するとはなんて図々しいんだ…。私からはすでにプレゼントしたろう。ケーキとプァンタで勘弁してくれ。
「せっかくだから、何か形に残るものが欲しいな。ねぇねぇ、何かない?」
そう言われても…と部屋の中を見回すが、特にこれといってあげられそうなものはない。モノクマメダルもコインも持っていないし…。
「あっ、じゃあこれちょうだい!」
言うが早いか、王馬はそう言いながら手を伸ばしてきたかと思うと、ぐっと“それ”を掴んで引っ張った。
「ちょっ…王馬!?」
するりと解けて王馬の手に渡り、ほどけた髪が肩から滑り落ちてきた。…邪魔くさい。王馬の手に握られていたのは、私の髪を結っていた組紐だった。意味がわからない。何故そんなものを欲しがるんだ。
「これ、どうせ予備あるんでしょ?」
「それはあるが…。そんなの貰ってどうする気だ?少し時間をくれれば、もっと実用的なものを用意するぞ?」
「何言ってんのさ。とっても実用的だよ!だってこれ、こうすれば首絞めに使えるじゃん?」
そう言って王馬は、自分の首に紐を巻いて両側からくんっと引っ張った。何をやっているんだと、私は思わず王馬の手首を掴んでいた。
「あはっ…。人殺せるもの普段から身に付けてるなんて、六路木ちゃんもなかなかだね。まっ、これは冗談だよ!じゃあこれ貰うね!オレからもそのうち、六路木ちゃんに何かあげるからさ」
そう言われても嫌な予感しかしない…。王馬のことだし、あんまり期待しないでおこう。
「今日は六路木ちゃんがオレを騙して部屋から引っ張り出してくれたおかげで、なかなかつまらなくない思いをすることができたよ。ありがとね!」
「他に言い方はないのか…。そういうお礼なら赤松に言ってくれ。赤松がみんなを誘ってパーティーを開いたんだからな」
「なるほど!いい子ちゃんぶってる赤松ちゃんが考えそうな事だよね!」
「おい」
「嘘だよ!そんなこと思ってないよ。感謝してるって。本当だよ?」
…やっぱり面倒くさい奴だ。進んで関わりたいとは思わないな。
「……来てくれて、本当に嬉しかったよ」
「ん?何だって?」
意識していたわけじゃないので、王馬の小さな呟きに気がつかなかった。すぐに聞き返したが、王馬は何も言わずにじっと私を見上げてきた。そしてすぐに笑って…。
「別に?え。ていうか、今の聞こえなかったわけ?うわー!六路木ちゃんってもしかして難聴なの!!?でも大丈夫だよ!何かあったら、オレが代わりに聞き取ってあげるからさ!!」
「難聴ではない!だいたい、お前に頼んだところであることないことホイホイ吹き込まれそうだ。遠慮しておく」
「そう言わずに。あ、でもそもそもオレの言葉が聞き取れないなら、オレがいくら他人の言葉を代弁したところで意味なかったね」
…これは喧嘩を売られているのか?残念だったな。私を煽って反論するのを待っているのだろうが、百田と一緒にしないでもらおうか。私はその程度では動じたりしないぞ。
「……六路木ちゃんって本当反応薄いよね。薄いっていうか、無表情だしさ。つまんないなー。そんなんで生きてて楽しい?もっと笑いなよ、ほらほら」
王馬がぐいっと私の頬を両側から引っ張った。何をするんだ。やめんか、放せ。無表情だって心の中では楽しんでる場合もある。余計なお世話とはこの事か。
「あはは。変な顔」
「……おうま!!!」
「あー、オレ疲れちゃったからちょっと寝るね。おやすみ~」
…な、なんて自由な奴なんだ。それに何度も言うが、そこは私のベッドだ。今すぐ荷物を持って自分の部屋へ戻れ。そしてそこで寝ろ。
「おい…王馬?」
ベッドに横になっている王馬を見れば、すでに丸まって目を閉じている。…本当に寝た。まさか狸寝入り…じゃないよな?
しかしまぁ、王馬も災難だったな。こんなところに連れてこられなければ、今頃外で他の友人や家族に祝ってもらって楽しく過ごせていただろうに。けど今日は、なんだかんだ楽しんでいたように思う。王馬がつまらなくなかったなら、それはそれでよかった。
「…………みんな」
「え?」
ぽつりと王馬が呟いた。寝言…?みんなっていうのは、ここにいるみんなのことか?それとも。
「待っている人が、いるのか」
王馬は何も言わずにすやすやと寝息をたてている。もしかして王馬が言っていた“仲間”のことだろうか。何にせよ…
「来年も、つまらなくない日が過ごせるといいな」
ベッドは王馬に占拠されてるし、外に散歩でも行こうか。私は王馬の様子を確認すると、起こさないように静かに部屋を後にした。
……この時の王馬がうっすらと目を開けて笑みを浮かべていたなんて、誰も知る由もない。
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