王馬に仕返しする
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─翌日。
「……あの、六路木さん」
「なんだ」
「お、王馬くん…すごい見てるよ」
「わかっている」
食堂で隣に座る王馬にチラッと視線を向けると、何かを期待するような目でじっと私を見てくる。それを無視して、再び目の前の朝食に手をつけた。
「六路木ちゃん、好き。好き好き」
感じる視線を無視していると、今度は好きを連呼しながら うっとりした表情で隣から抱きついてくる。ぐりぐりと頭を擦り付けて。それを見て私は心の中でほくそ笑んだ。ふふ…見たか。私だってやればできるのだ。いつもは私が王馬にからかわれていたが、その王馬を手中に収めればこんなものよ。実に気分がいい。目的は達成したので、今日からはまた普段通りの態度で接するつもりだ。王馬の慌てた様子も見られたし、ちょっと楽しかったな。
*
今日は朝起きると、部屋の中にも外にも六路木ちゃんの姿はなかった。ピッキングして六路木ちゃんの部屋に入ると、彼女は自分の部屋でいつも通り眠っていた。そしていつも通り起きて、いつも通り追い出されて、いつも通り着替えて六路木ちゃんは部屋から出てきた。もちろん、いつも通りの無表情で。……昨日のアレは夢だったのだろうか。何だったんだというくらい、今日は冷めている。冷めてるんだけど……。
「おはよう王馬」
「お、おはよう…」
「今日はトレーニングの日だな。いつも通り学園内にいるから、用があれば声をかけてくれ」
六路木ちゃんはそう言って、オレの一歩先を颯爽と歩いていった。……あ、素敵。好き。
朝食を食べるために食堂に来てからも同じだった。一昨日までと同じように、六路木ちゃんは黙々とご飯を食べているし、何事もなかったかのように振る舞っている。距離だって適切だ。試しにオレから六路木ちゃんにあーんするように言ってみたけど、「やめろ」とバッサリ斬られてしまった。
「ねぇ、六路木ちゃん。今日は昨日みたいにしてくれないの?」
「……昨日みたいにって?」
「だからほら、六路木ちゃんの方から…なんか、いろいろ……」
「しないよ」
「えっ…な、なんで?オレのこと嫌になったの?六路木ちゃんだって、昨日オレのこと好きって言ったよね!?」
昨日の様子を思い出しているのか、六路木ちゃんは僅かに眉をひそめて遠くを見つめたあと、無表情のままオレに視線を向けた。
「そんなこと言ったか?」
「え」
「まぁ、嫌いではないし好きだよ。しかし昨日それを言った覚えはないぞ」
オレも昨日の出来事を思い出してみる。……本当だ、言ってなかった。オレが勝手にそう思ってただけだ。
「じ、じゃあさ。きっ昨日の数々のアレって…何だったの?」
オレは昨日の事を思い出して赤くなっているというのに、六路木ちゃんは今までの行為を思い出して照れるわけでもなく、しれっと「お前の真似」と答えた。……ま、ね?ああ、いつもオレから口説いたりベタベタしたりしてたから?その仕返しってこと?あー、納得。…なわけねーだろ!
じゃあ何?昨日のは六路木ちゃんがしたくてしてくれてたんじゃなくて、オレに仕返しするため?そのための行動だから恥ずかしくもなかったって?全部、オレの反応を窺うために……?
「……あは、」
はははは。…何だよ。ドキドキしてたのってオレだけかよ。オレは六路木ちゃんのこと本気で好きなんだって言ったよね?人の心弄ぶようなことしやがって。上等だよ。だったらオレもお返ししてあげる。今まで以上に、嫌って言えなくなるくらいにね。
「六路木ちゃん、今日も一緒にお喋りしたいなぁ。……夜はオレの部屋に来いよ」
青筋立てながらこれまでにないくらいの笑みを浮かべれば、何かを察したらしい六路木ちゃんの顔が僅かにひきつった。けど、そんなのしーらない。今日はオレが六路木ちゃんをたっぷりかわいがってやるから、覚悟してろよ。いやー、夜が楽しみだね!
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