王馬バースデー
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…………と、言われて王馬の部屋の前までやってきたわけだが。どうする。何と声をかけるべきだろうか。あまり下手なことは言えないぞ。扉を開けてくれるどころか、このまま追い返されそうだ。私は食堂から持ってきた荷物に視線を落とすと、ぐっと握りしめて顔をあげた。
「…王馬、いるか?」
しばらくして中から小さく声が聞こえた。
「………六路木ちゃん?」
「ああ、私だ。少し話が…。良ければ中に入れて欲しい」
「なぁに~?オレ忙しいんだけど…。今部屋汚いからさ。六路木ちゃんの部屋でもいいなら…」
「あっ…わかった。じゃあ部屋で待ってるぞ」
階段を下りて、私は自分の部屋に入ると椅子に座って王馬が来るのを待った。……しかし来ない。まさか追い返すための嘘だったか?もう一度王馬の様子を確認しようか迷っていると、部屋の扉がガチャリと音をたてて開いた。
「六路木ちゃん、何か用?」
「あっ…王馬。その、これをお前に」
袋の中から、先ほど私が手に入れたアストロケーキと彼が好きなプァンタを取り出して、それを王馬に差し出した。
「誕生日おめでとう」
「へ?」
王馬はそれらを受け取ると、ポカンとして手元のケーキを見つめた。目をぱちくりさせてケーキと私を交互に見ている。
「ほら、今日は誕生日だろ?モノパッドで確認していたから知ってたんだよ。しかし私は人の誕生日をこうして祝うことがなかったから、どうしていいのかわからなくてな。こんなものしか用意できなくてすまないが…」
「…え。あ…なっ、何言ってんの六路木ちゃん!今日がオレの誕生日なんて嘘に決まってんじゃん!モノパッドに書いてあるのは嘘だよ、嘘!!どうせオレが嘘つきだからって、モノクマがオレのプロフィールだけ嘘にしちゃったんでしょ。もー、こんなの信じちゃうなんて六路木ちゃんは馬鹿だなぁ」
あまりにもいつもとは違う様子で、しかもペラペラと喋ってくるのでさすがに嘘だということがわかった。わたわたしながら目を泳がせている。やがて真顔になって黙り込んでしまった。
「それならそれでいい」
「は?なんで…」
「どうせ1年のうち、どこかが誕生日なのは間違いないんだからな。プロフィールにも今日の日付があるんだし、それなら今日祝ったって問題あるまい」
王馬はじっとケーキを見つめたまま無言だったが、やがてぷいっとそっぽを向くと小さく呟いた。
「…………あ、ありがとう」
椅子に座って袋の中からフォークを取り出すと、王馬はもくもくとケーキを食べ始めた。これでいくらかは機嫌が直っただろうか…。
「なぁ王馬。食堂に行かないか?」
「え?…いや、オレはいいよ。何で?」
「せっかくの誕生日なんだ。もっとちゃんと祝わせてくれ。私も料理は出来なくもないから、何か要望があるなら作るし…。それだけじゃ足りないだろう。な?」
「別に…オレはこれでもいいんだけどね。まぁ、六路木ちゃんがそんなに来て欲しいって言うなら行ってあげてもいいよ」
あっという間にケーキを平らげて、プァンタ片手に“それじゃあ食堂行こう”と言ってきた王馬。私は密かに心の中でガッツポーズをした。王馬を連れ出すことに成功したぞ赤松!
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