ホワイトデーも戦争だ
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王馬が次々と差し出してくるマカロンを何個か食べたところで、私は先程から思っていたことを恐る恐る聞いてみることにした。
「王馬…何か怒ってるか?」
「え、何が?」
「いや……。機嫌が悪いように見えたから」
すると王馬は何かを思い出すように視線を逸らし、俯きながら話し始めた。
「……実はさっき校門で絡まれてさ。他校の生徒だったり大人だったり、たくさんいたんだけど。色々言われたよ。バレンタインに渡せなかったから、誰々に渡してほしいとかね。オレ宛てのもあったけど、全部断ったよ。他人のお願い聞いてやるほど暇じゃないし。で、その中にさ…六路木ちゃんに渡してほしいってのもあって。しかもやたら豪華なんだよね。なんかそれ見たらムカついたっていうか……」
……えーと。それは何というか…。
「嫉妬、と受け取っていいのか?」
「……はっ!!?こ、このオレが嫉妬とかあり得ないんだけど!!自意識過剰だと思うね!悪の総統は常に余裕でなくちゃいけないんだよ」
「……あっそう」
王馬がそう言うなら別にどっちでもいい。そういえば…楓たちからいろいろ聞いたけど、ホワイトデーのお返しにはそれぞれ意味があるらしい。まぁ、そんなものに意味はない、気にしないと言ってしまえばそれまでだけど。確かマカロンは“特別な人”なんだとか。さっきやたらとキャラメルであることも強調していたが、キャラメルは“一緒にいると安心する”という意味のようで。何故そんな意味になるのかはともかく、王馬が私をそういう居場所だと思ってくれているのかと思うと悪くない気分ではあるが……。
…………。いや待て。王馬だぞ?もしかしたらそれは嘘で、嫌がらせのつもりでこれを作ってきたのかもしれない。それぞれが嘘だとして逆の意味で考えると…。
“お前は一緒にいると不愉快だ。このド底辺のゴミ虫野郎が!”
……ということか!!?
「おっ…うま……」
隣の王馬にバッと顔を向けると、彼は顔を反らしながらもちょっとずつ移動してこちらに近づいてきているところだった。最初にあった距離がなくなり、ピトリと私の横にくっついた後、チラッと見上げてきたのだが。
表情こそ真顔だったが、王馬の耳は恥ずかしそうに赤く染まっていた。これってつまり…そういうこと?で、いいのか?
「な、なんだよ…何か言えよ…」
何を言ったらいいのかわからなかったのでとりあえず王馬の頭を撫でてみると、いつもは撫でさせてくれたとしても「子供扱いするな!」と怒るくせに、今は怒るどころか何も言わずに頭を倒してぽすっと寄りかかってきた。そしてスリ、と頭を擦り付けてくる。……大変だ。王馬がかわいい。
「ふっ……ふふ、そうかそうか。私も王馬から貰えて嬉しいよ。ありがとう」
「……嘘じゃない?オレのが一番?」
「ああ。これで満足だ」
そう言うと王馬は にへらと笑いながらさらにすり寄ってきた。
「にしし…。ま、当然だよね。なんたってこのオレの手作りなんだからさ!それだけで価値があるってもんだよ。それじゃあ来年からは、オレのお返しさえあれば他の奴からは何もいらないよね?まぁ友達だし、最原ちゃんたちからのお返しは大目に見てあげるよ」
「意外と寛大な総統様だな」
「そうでしょ?あ、お返しと言えば確認したいことあるんだった。ちょっと電話かけるから、六路木ちゃんは残りのマカロンでも食べててよ」
王馬は私に残りのマカロンを押し付けると、自分は携帯を取り出してどこかに電話をかけ始めた。……電話だから、学園の外にいる人にかけるんだよな。学園内なら直接会いに行けばいいんだし。まぁ、会うと言っても希望ヶ峰もだいぶ広いんだけど。
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