ホワイトデーも戦争だ
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ホワイトデー当日。
「……ん、誰だ?」
携帯の着信音が響いてきたのでディスプレイを確認してみれば、それは同じ絢爛学院の生徒だった御堂からだった。ああ…めんどくさい。出たくない。でもここで出ないともっとめんどくさいんだろうな。
「……何の用だ」
『あっ、みつば!おはよう!』
「おはよう。で、何の用だ」
『もー、みつばはせっかちさんだなぁ。そんなにオレからのお返し待ちきれない?なーんて』
「じゃあな」
『待って!切らないで!ほら、今日ホワイトデーだろ?そのお返し受け取って欲しくてさ…。だから会えないかなと思って……』
ホワイトデー?ああ、確かに今日はホワイトデーだったな。忘れていた。しかし問題はそこではない。疑問なのは御堂の言葉だ。
「お返しも何も、私はバレンタインデーにお前に何かあげた覚えはないのだが」
『ああ…。それはいいんだよ。バレンタインは自分でチョコ買ってきて、それをみつばから貰ったものだと自己暗示かけて過ごしたからさ。オレの中ではみつばからチョコ貰ったことになってるから大丈夫』
何が大丈夫なんだ。
「そうか、気持ち悪いな。だったらそれも私にあげたことにして自分で処理してくれ。それじゃ」
『え!?ちょっ……』
返事も待たずに電話を切ると、私は携帯を片手にベッドへと倒れ込んだ。……さすがに酷かったか?いや、御堂のことだからきっと手作りだ。何故なら以前もそうだったことがあったから。悪いとは思うが、御堂からの手作りなんて怖くて食べられない。王馬の気持ちがちょっとわかった。
ピンポーンピンポンピンポンピンポン
「はいはいはい。今度は一体誰だ」
ベッドから下りて扉を開けると、ニコニコした王馬が私を見上げて立っていた。…あれ?手に何か持ってる?
「捜したよー六路木ちゃん。お昼なのに何で食堂に来ないのさ!」
「え?いや…一応これから向かうところではあったが。すまない、何か用事だったか?」
「んー、まぁいいや。部屋の方が邪魔も入らなそうだしね。お邪魔しまーす」
そう言って王馬はズカズカと部屋に入ってきた。…いつものことだからもういいけど。
部屋の真ん中辺りまで進んだところで、王馬が背を向けたままピタリと止まった。
「王馬?何かあったか?」
「用はあるけどその前にさぁ、なんかさっきお返しがどうとかの話し声が聞こえたんだけど。誰と喋ってたの?」
「あ…。き、聞こえてたのか…。いや、まぁ…ちょっと」
「誰だよ」
物凄い真顔で、物凄い勢いで背伸びしながら詰め寄ってきた。それを知るのはそんなに重要なことか?ていうか、なんか機嫌悪くないか?
「……御堂。バレンタインのお返し渡したいから会えないかって」
「はぁ?オレのお返しを差し置いて御堂ちゃんから貰うつもり?」
「いや、そもそもバレンタインは御堂に渡してないから断ったよ。……え?王馬、本当にお返し用意してくれたのか?」
「もっちろん!ちゃんと愛を込めて作ったからね。はい、どうぞ!」
そう言って王馬が差し出してきたのはマカロンだった。ま、マカロン…だと?作ったって…これを手作りで?まじまじと見つめてもマカロンで間違いないようだ。何これ、かわいい。
「キャラメル味のマカロンだよ。キャラメル味!ここ重要!ちゃんと味見もしたから、特に問題ないはずだけど」
「うん?あ、ありがとう。……お前のことだから何か罠があるんじゃないかと」
「えー。そんなにオレって信用ないわけ?まぁ、それも考えたけどさ。あ、1つだけ辛子入りマカロンだから気を付けてね!」
「……辛子」
「なんてね。嘘だから安心していいよ」
しかし…マカロンなんてよく作ったな。なかなか完成度が高い。初めてでここまで出来るものなのか?いや、もしかしたら作った経験があったのかもしれない。くっ……女子力。
「悪の総統じゃなくて パティシエにでもなればいいのに」
「それは駄目だよ。被る」
「は?」
「そんなことはいいから、それ食べてみてよ!ほらほら!」
ぐいぐいと私を押してベッドに座らせると、自分も隣に座りながら“ちょっと貸して”と言ってマカロンの袋を開け始めた。…あ、甘い匂い。そして1つ摘まむと私の目の前に向けてきた。
「はい、あーん」
「え?えっと、別に自分で……」
「いいから食えよ」
何でそこでキレるんだ!!?食べたくないわけじゃなくて、自分で食べるって意味なのに!!!
仕方なく口を開けると そこにぐっと押し込んできた。…あ、中に入ってるクリームもキャラメル味だ。
「お、美味しい…」
私が呟くと 王馬は満足そうに笑みを浮かべながらもう1つ取り出し、再び私の口元にまで持ってきた。早く食べろと言わんばかりにじっと見つめてくる。……あれ?冷静に考えると恥ずかしいぞ?
「六路木ちゃんがこのまま食べないなら、口移しって手段もあるんだけど」
「食べます」
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