バレンタインは戦争だ
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部屋に戻って冷蔵庫からプァンタを取り出すと、それを王馬に差し出した。嘘泣きだったとはいえ、先程まで泣き叫んでいたとは思えないほど 今は何事もなかったかのようにコンビニスイーツを食べている。とことんにまで面倒くさい奴だ。
「六路木ちゃん、これ美味しいね!」
「それはよかったな……」
ため息をつきながらベッドに腰を下ろすと、王馬がちょいちょいとフォークで手招きした。
「六路木ちゃんも食べようよ」
「私はいい。全部食べていいぞ。お前のために買ってきたんだからな」
「ふーん…。お前のためって言うならさ、やっぱり手作り欲しかったなぁ。あの程度の嘘も見破れないなんて……まったく、六路木ちゃんは男心がわかってないね!」
どうしろと?なんで私が悪いみたいになってるんだ。こうならないためにわざわざ本人に聞いたのに。聞いたのがそもそも間違っていたのか?何故なら相手が王馬だからだ。
「申し訳ございません次からは勉強しておきます」
「見事なまでに棒読みだね」
再び手元にあるチョコケーキを食べ始めた王馬だが…。気のせいか少しだけ、ほんのちょっぴり、寂しそうに見えなくも……ない?
「…………」
私は小さくため息をつきながら もう一度冷蔵庫を開けた。本人がさっきので満足すれば、これは本気で自分で食べてしまおうかと思っていたんだけど。
「……はい」
「ん?」
王馬の前に並べられていたコンビニスイーツを退かすと、冷蔵庫から取り出したものをテーブルの上に置いた。さっき最原たちに配ったものと同じ生チョコと、唯一成功したフォンダンショコラ。
「一応…お前の分だけど。どうせ同じ手作りなんだ。そこまで言うなら、そんなどこの誰が作ったかわからないもの食べてないで、私が作ったもの食べればいいだろ…」
王馬は目の前のチョコをポカンとしながら見つめていたが、やがて顔をあげると目を細めてニタリと笑った。
「へぇ……六路木ちゃん、オレに嘘つくなんていい度胸してるね。それとも最初からこういうつもりだったの?これなんてオレにしか作ってないんでしょ。ねぇねぇ、これって本命?六路木ちゃんはオレのこと好きなの?」
「う、うるさいな!好きは好きで友人としてだろ‼後から欲しかったと言われても面倒だからな…。念のために作っておいただけだ。そして自分用に作っていたのも本当だ!」
「照れ隠しにしても、そこまで力強く言わなくてもいいじゃん…。なんか悲しくなってくるよ」
ああくそ…。言わなくてもいいこと言ってるのは私もわかってるんだ。
「ん〜……うん!美味しいよ!ありがとう六路木ちゃん。あ、嘘じゃないからね?」
「そ、そうか……。それなら良かった」
「六路木ちゃんも食べてみなよ。そのつもりで作ったんでしょ?」
まだ言うか。もういい、認めよう。それは王馬のために作ったものだ。後からタイミングを見計らってちゃんと渡そうと思っていたんだ。どうだ、これで満足か!
「……ねぇ六路木ちゃん。こっち見て」
身を乗り出してきた王馬の顔が近づいたかと思ったら 柔らかいものが唇に触れた。わけがわからずに固まっていると、今度は唇の間に少しだけ舌が入ってきてペロリと舐められた。肩が跳ねるのと同時に何をされたのか理解し、ようやく我に返った。
「ほら……甘いね」
「なっ…なに、して……!」
驚きのあまり無意識に後ずさろうとしたが、伸びてきた王馬の手はガッシリと私の腕を掴んでいた。
「逃げるなよ」
時々思う。王馬が怖い。普段はニコニコ笑っているけど、ふとした時に見せる表情だとか…。あと真顔。何考えてるかわからないし、じっと見つめられるとものすごい居心地が悪い。その場から逃げたくなる。
「あ、あの…何かお気に召しませんでしたでしょうか……」
「満足してるけど?ちゃんと手作り貰えたし、チョコも美味しかったしね」
それなら今のこの状況は一体何のつもりなんだ…。い、いつもの悪ふざけか?からかってるだけか?
「オレも好きだよ、六路木ちゃん」
「……は?」
オレも?私は王馬に好きだと告白した覚えはないのだが。友人として、は言ったけど。それに対してか?い、いや…。キスをしてくる友人なんて、酔っ払い以外聞いたことはないぞ。
「なーんてね!びっくりした?」
「なっ…!」
「六路木ちゃん、自分で気づいてる?顔真っ赤だよ!いやー六路木ちゃんにも恥じらいがあったようで良かったよ。これでも無表情だったら、オレもさすがに気まずかったしね!」
そう言って笑いながら、王馬は残りのチョコを食べ始めた。……最悪だ。完全にやられた。相手は王馬なんだぞ⁉どう考えたってからかわれただけに決まってるじゃないか‼
「来年も楽しみにしてるね!あ、その前にホワイトデーがあったね。オレからのお返し期待してていいよ!」
散々な思いをしたというのに、この男は何を言ってるんだ。バレンタインなんてもう うんざりだ‼
「(……やられたとか思ってるのかな〜。ま、さっき言った事もした事も、それに対して嘘だとは言ってないんだけどね!)」
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