バレンタインは戦争だ
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「チョコを作るのに、こんなにたくさんの材料が必要だとは……」
学園近くのスーパーで買い出しを済ませ、今は調理室を借りてテーブルの上に材料を並べているところだ。楓はみんなに切り分けて配れるよう、大きなガトーショコラを作るようだ。春川はブラウニーだとか。帰り際にスーパーの店員から、“バレンタインは戦争ですよ。頑張って!”というコメントを頂いた。
「みつばちゃんって前の学校ではどうだったの?誰かに作ったりとかしなかった?」
「私は…貰う側だった…」
「あ。納得…」
東条のレシピを見ると自分の好きなものが作れるように、色々な種類のレシピが非常にわかりやすくまとめられている。これなら誰でも簡単に、本格的なチョコが作れるというわけだ。しかし私は料理などほとんどと言っていいほどしない。ましてやお菓子作りなど……!レシピを見たところでこの通りに作れるか?
「あんた…。経験ないくせにフォンダンショコラとか、よく選べたね」
「美味しそうだったから、つい」
「いや、わかるけど」
「よーし!頑張って作ろうね!」
そしてチョコ作りが始まった。お互いに手順を確認しながら、楓と春川は手際良く進めていく。……お、女の子って感じだな。女の子だけど。それに比べて私は何だ!父の職場にいる女性警察官から、こんな話を聞いたことがある…。
“バレンタインだからと、チョコ作りを決心したのが間違いでした。慣れないことはするものじゃありませんね。犯罪者相手の方がまだ楽です”
……一体彼女に何があったのかまではわからないが、とにかくチョコ作りの方が難易度は高かったらしい。私も何を言ってるんだと思ったが、今納得した。その通りだ。
「うぅ…もう無理だ。私はリタイアする。皆…すまない。王馬のみならず、全員に十円チョコを配ることになるとは……」
「ま、待ってみつばちゃん!まだ大丈夫だよ!私たちも手伝うからさ。ね?」
「ここまで出来たんなら何とかなるでしょ。それとも材料ならまだあるし、生チョコでも作ったら?こっちのほうが簡単だし」
「うむ…生チョコか。そうだな、そうしよう。しかしここまで来たからにはフォンダンショコラも1つくらい成功させたい…。そして自分で食べる」
「自分で食べるんだ……」
*
あー、いいなあれ。美味しそう。見てたら何かお腹すいてきちゃった。後で東条ちゃんにガトーショコラでも作ってもらおうかな。
「……何してるんだよ、王馬くん」
後ろから声をかけられたと思ったら、そこには怪訝そうな顔でオレを見下ろす最原ちゃんがいた。
「やっほー最原ちゃん!何って、見ての通りだけど?赤松ちゃんたちがお菓子作りしてるところ覗いてるんだよ」
「やめなよ…何かいやらしいから」
「確かに。チョコ作りなんて、いかにも転んでチョコ被ってベタベタになっちゃうようなハプニングが起きそうだもんね。それ想像するといやらしいね‼」
「僕はキミが覗きをしてることに対して言ったんだけど…」
そう言いつつも、最原ちゃんは顔を赤くしながら視線を外すように下に落とした。絶対今想像したな。たはー!やっぱり最原ちゃんは変態だね‼
「……ま、別にオレには関係ないけどさ。どーせ今だって最原ちゃんたちに渡すチョコ作ってるんだろうし」
「それは…。別に六路木さんだって本気じゃないと思うけど」
「六路木ちゃんがバカ正直なのは最原ちゃんも知ってるでしょ。このままだと オレだけコンビニチョコなのは目に見えてるね」
「王馬くん…。あ!でも、コンビニのスイーツも美味しいよ?」
「慰めになってねーよ!くそっ!どいつもこいつもオレを馬鹿にしやがって‼チョコ貰えたら勝ち組だと思うなよ!オレは高級チョコ買い占めて1人バイキングしてやるからな‼」
そう吐き捨てると、オレは大量の涙をこぼしながらその場を走り去った。
「お、王馬くん!!?」
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