キミを笑わせたい
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続いて食堂。
今は昼食の時間なのでみんな食堂に集まっている。王馬くんは席に座る六路木さんの様子を、少し離れたところからプァンタを飲みつつじっと窺っている。もういいだろと思ったけど、王馬くんは「まだだよ!」なんて言って諦めようとしない。六路木さんも驚きも怒りもしないし…。もうクールな人だな、でいいんじゃないかな。王馬くんもつまらなければ他に行きそうなのに、六路木さんに執着しているのも珍しい。
「最原くんと王馬くん、今日はずっと一緒にいるんだね」
「あ。赤松さん」
「赤松ちゃんさぁ、ここに来てから六路木ちゃんの違う顔見たことある?無表情以外のさ」
王馬くんに聞かれて、赤松さんはうーんと首を傾げた。
「六路木さんかぁ。確かに普段は無表情だけど…。時折違う顔するときはあるよ」
「もっとこう、オレのすることに爆笑して欲しいんだよね!怒りもしないし…。そりゃ、よっぽどのことをすれば怒ったりもするんだろうけど」
「あっ!好きなものをプレゼントされたら、六路木さんも笑いながら喜ぶんじゃないかな?」
やっぱりそうかな。六路木さんの好きなものか…。綺麗なもの、とか…カフスボタンなんて喜ぶかな? 意外とかわいいものも好きだったりするかもしれない。
「ねぇ最原ちゃん。今思いついたけど、一番手っ取り早く表情を変えさせる方法に“にらめっこ”はどう!?」
「にらめっこ!!?」
あ、あの六路木さんが…にらめっこ?変顔とかするんだぞ?彼女が変顔するっていうのか!?
「ってことで、さっそくやってみようよ!お相手は真宮寺ちゃんね!」
「やァ」
「なんでそこで真宮寺くんなんだ…!!!」
もっと他にいただろ!ていうか、にらめっこなら王馬くんこそ適任じゃないか!!これは勝負になるのか!?マスク邪魔だよ…!
「六路木ちゃん六路木ちゃん!ちょっとこっち来て!」
「…ん?今度は一体なんだ」
「東条ちゃんのご飯できるまで遊ばない?真宮寺ちゃんとにらめっこ!」
「にらめっこ…。別に構わないが、真宮寺が相手なのか?」
「そうみたいだネ。僕も構わないヨ。この勝負に、一体どんな結末が待っているのかな」
そんなこんなでにらめっこすることになった六路木さんと真宮寺くん。向かい合うように椅子に座ると、王馬くんの掛け声でスタートした。
真宮寺くんはいつも通り。マスクをつけているので表情がよくわからない。そして六路木さんも…いつも通り。腕を組んで、じっと目の前の真宮寺くんを見つめている。
「………………」
「………………」
しばらくして東条さんが料理を運んできてくれたけど、こちらの様子は依然として変わることはない。 というよりも…。
「これただの睨み合いだよね!?」
お互いにピクリともしない。これじゃあずっとこのままだ。王馬くんなんて、笑いながら六路木さんや真宮寺くんの頬をつまんでぐにぐにと遊んでいる。外野が爆笑していても仕方がない。その時、六路木さんがスッと真宮寺くんから視線を逸らした。
「…僕の勝ちだネ」
「えっ?」
唐突についてしまった決着に、僕と王馬くんは目を見開いた。お互いに笑った様子はなかったけど、どういうことだろう。六路木さんは「私の負けだな」と言って、元の席に戻っていった。
「にらめっこは本来、勝負として“睨み合って先に目を逸らした方が負け”というものがあるんだヨ。彼女はそのつもりだったんじゃないかな。さっきのはわざと退いたみたいだけどネ」
「あ…そうだったんだ」
テーブルにはすでにみんなの分の昼食が並べられていた。いつまで経ってもつかない決着にわざと退いたのは、彼女の優しさだったのかもしれない。
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